ハロプロの世代交代について

 最近ふと思ったことだが、2021年夏のハロコン時のハロプロのメンバー構成は、2015年夏のハロコンに少し似ている部分がある。2015年夏のハロコン時のハロプロのメンバー数は51人で、その内、ハロプロ歴10年以上(エッグ歴を含む)のメンバーが8人いた(℃-uteのメンバー5人、カントリー・ガールズの嗣永、アンジュルムの和田、福田)。今のハロプロメンバーは新ユニットを除くと58人、そこから2021年7月に加入した新メンバーを除くと51人、ちょうど2015年夏のハロコン時と同じ人数である。その内、つんく♂が総合プロデューサーをしていた時代にデビューした人たち(つまり、デビュー以降7年以上経っているメンバー)が8人いる(モーニング娘。の9・10・11期メンバー5人、アンジュルムの竹内、Juice=Juiceの金澤、植村)。

 2015年夏のハロコンは、2014年後半から2015年前半にかけての新メンバー加入・新グループ結成ラッシュをうけて、全ハロプロメンバーの中に占める新人の割合が非常に高かった。ハロコンの時点でハロプロ加入から1年経っていなかったメンバーは実に25人にのぼり(カントリー・ガールズの島村は2015年6月で脱退したので算入しない)、全ハロプロメンバーのほぼ半分を占めていた。

 2021年夏のハロコンは、そんなに極端なことはないが、それでも新世代のメンバーが占める割合が大きいという点では共通するものがある。7月にJuice=Juice・つばきファクトリーに加入した新メンバーを除いたハロプロメンバー51人の内、デビューから3年未満のメンバーの数は22人である(モーニング娘。15期メンバー3人、アンジュルム7・8・9期メンバー5人、Juice=Juiceの松永、工藤、Beyooooondsのメンバー12人)。これにJuice=Juice・つばきファクトリーの新メンバー7人を足すと29人になり、全ハロプロメンバー58人のちょうど半分がデビュー3年未満のいわゆる「新世代」となる。

 このように、2021年現在のハロプロは、世代交代にさしかかっている感が強いが、この感覚は、6年前の2015年夏のハロコンの時に感じられたものと若干似ている気が個人的にするのである。そして、その6年前の2009年夏のハロコンも、「革命元年」というタイトルからもうかがえるように、新世代の幕開けを意識的に打ち出したハロコンであった。「革命元年」ハロコンはまた、その前のハロコンでエルダークラブが卒業し、その直後に結成されたスマイレージが初出演したハロコンでもあった。さらにその6年前の2003年冬のハロコンは、Berryz工房と℃-uteの母体となったハロー!プロジェクト・キッズが初出演したハロコンであった。このように定期的にハロプロは世代交代を繰り返しているが、具体的にどのように世代交代をしているんだろう、そもそもどのように世代を分けることができるのだろうか、と思ったので、このnoteを書いてみた。

 ハロプロの第一世代は、1990年代の終わりから、2000年代初頭にかけてのモーニング娘。ブームの頃に活躍した人たちだが、このnoteは世代交代が主題なのでここでは扱わない。

 第二世代は、モーニング娘。5・6期、ハロー!プロジェクト・キッズ(後のBerryz工房と℃-ute)が中心の世代である。この内、モーニング娘。5期はこの世代に入るか少し微妙であるが、「それゆけ!ゴロッキーズ」という番組が作られるなど、6期とペアでモーニング娘。の新世代として売り出されることが多かったので、本稿ではこの世代に入れることにしたい。逆にモーニング娘。5期とともに2002年冬のハロコンが初参加となった藤本美貴と里田まいは両者とも、合格者が4期メンバーとなったモーニング娘。第3次追加オーディションの落選者であったことなどから第一世代の人たちと結びつきが強く、本稿ではこの世代に入れない。さらに同じハロコンで同様の初参加であった石井リカは、外部からの移籍組でハロプロにも短期間しか在籍しなかったことから、ここでは考慮しないこととしたい。

 上記の、藤本を除くモーニング娘。5・6期、ハロプロキッズに、2003年にカントリー・ガールズに加入したみうな、2004年に美勇伝の結成メンバーとなった三好絵梨香、岡田唯を加えた25人を、このnoteではハロプロの第二世代として扱う。この世代を象徴する出来事の一つは、2004年12月にリリースされた「ALL FOR ONE & ONE FOR ALL!」だと個人的に思う。第一世代に属する21人と一緒に総勢46人の「H.P.オールスターズ」として活動することで、第二世代はハロプロのメインストリームの一角を担っていることが示された。その後、2006年1月に第二世代を主力とするワンダフルハーツが、第一世代で構成されたエルダークラブ(カントリー娘。のみうなだけはこのnoteでいう第二世代であったが)と切り離されることで、半ば強引に世代交代が図られた。

 この世代の最大の特徴は25人中約6割の16人(モーニング娘。5期の高橋、新垣、6期の道重、田中、Berryz工房の7人、℃-uteの5人)が10年以上ハロプロメンバーとして活動したことであると思う。これには色々な要因があると思うが、いずれにせよこれだけ多くのメンバーが長く活動したことは、ハロプロの継続性において大きな意味があったことは間違いない。

 第三世代は2004年8月にハロプロエッグオーディションに合格した人たちが主体となる。この世代の人は後述するように、ハロプロのメンバーになった人が少なく、誰がこの世代に属するのか難しいところであるが、それを決めるにあたって、2007年5月に開催された第一回ハロー!プロジェクト新人公演が参考になると思う。この公演には、上記のオーディション合格者の他、公演までにエッグに加入していた真野恵里菜や吉川友、モーニング娘。の8期メンバー(光井、ジュンジュン、リンリン)や同オーディションの合格者で℃-uteメンバーとなっていた有原栞菜も参加していた(美勇伝の岡田唯も同オーディションの合格者であるが、エッグとしての活動歴はなく、公演には参加していない)。「新人公演」と銘打たれたことから(後にこれは定期化され現在の研修生発表会につながっていくわけであるが)、この公演に参加した人たちが次の世代を担うことを期待されていたことが読み取れる。この中でハロプロのメンバーになった人たちに、2005年加入のモーニング娘。7期メンバー久住小春を加えた面々が第三世代の中核だと思うが、これには多少の注釈がいる。というのも、通常のハロプロの枠外でデビューした人たちが、第一回ハロー!プロジェクト新人公演の出演者に結構いるのである。ハロプロエッグ在籍時にインディーズデビューをした後にハロプロを離れ、NICE GIRL プロジェクト!で2008年にメジャーデビューしたTHE ポッシボーの6人(諸塚、大瀬、橋本、秋山、ロビン、後藤)、ハロプロエッグ在籍のまま音楽ガッタスに参加し、2007年にメジャーデビューをした6人(是永、能登、真野、仙石、澤田、武藤)、MilkyWayに参加し、2008年にポニーキャニオンからCDデビューした2人(吉川、北原)、High-Kingのメンバーとして2008年にデビューし、後にスマイレージメンバーとなった前田憂佳、しゅごキャラエッグ!の結成メンバーとして、後にスマイレージメンバーとなった3人(和田、前田(憂)、福田)とともに2008年にポニーキャニオンでCDデビューした佐保明梨、新生しゅごキャラエッグ!のメンバーとして2009年にCDデビューした前田彩里である。これらの人たちと、後にアップアップガールズ(仮)のメンバーとなった4人(古川、森、関根、新井)も、第三世代を構成するメンバーとして数えていいように思う。

 以上の考えをもとに第三世代に属する人たちの名前を挙げると、モーニング娘。7・8期メンバー(久住、光井、ジュンジュン、リンリン)、℃-uteの有原、ソロの真野恵里菜、スマイレージ初期メンバーの4人(和田、前田(憂)、福田、小川、以上の10人がハロプロでデビュー)、ハロプロエッグ初期メンバーの内の18人(諸塚、大瀬、橋本、秋山、ロビン、後藤、是永、能登、仙石、澤田、武藤、北原、古川、森、佐保、関根、新井、前田(彩))と吉川友の計29人である。

 第三世代の特徴としては、概してハロプロでの活動期間が短かったことが挙げられる。人数的には第二世代と変わらず、むしろ多かったが、正式にハロプロのメンバーになった人が少なく(10人)、その中に怪我のあった光井、有原、中国人のジュンジュン、リンリン、若くして辞めた久住、前田(憂)、小川もいたので、ハロプロで10年以上活動したメンバーは和田のみであった(エッグ歴を含めれば福田も)。これは、10年選手が16人もいた第二世代とは好対照である。そういう意味で第三世代は「失われた世代」といっていいのかもしれない。

 第三世代は第二世代と年齢構成的に重なるところも多く、活動期間の長かった第二世代にいわば上を塞がれたという側面もあったように思う。また、THE ポッシボーがNICE GIRL プロジェクト!に移籍したり、音楽ガッタスが早くに終了したり、2010-2011年にハロプロエッグの改編があったりといった事情も無視できない。さらに、第一世代から第二世代への世代交代の際のエルダークラブ分離というような、世代交代を促すドラスティックな手法が、第二世代から第三世代のときに行われたわけでもない。いずれにしても、第二世代から第三世代への世代交代は、結果的に見ればうまくいかなかったと言えるように思う。

 第四世代は、2011年からつんく♂が再び積極的にハロプロに関わるようになって以降、つんくがハロプロの総合プロデューサーを離れるまでにハロプロに加入した人たちのことだと、このnoteでは定義したい。具体的にはモーニング娘。9・10・11期メンバーの9人、スマイレージ2期メンバーの4人、Juice=Juiceメジャーデビュー時のメンバー5人の計18人である。ただ、この中にスマイレージのサブメンバーとして選ばれた後に離脱した小数賀芙由香、デビューこそしなかったもののJuice=Juiceの結成メンバーであった大塚愛菜を加えてもいいように思う。さらに、しゅごキャラエッグ!のメンバーとして2010年にCDデビューをしていた田辺奈菜美もこの世代に入れていいのかもしれない。そうすると第四世代に数えられる人たちは21人になる。

 2011年頃のつんく♂(及びアップフロント上層部)は、オーディション発表時のコメントからもうかがえるように、ハロプロに新メンバーを増やすことに積極的であった。これには早く世代交代を進めたいという意図があったのかもしれない。実際のところ、第二世代からの世代交代は、つんく♂がハロプロの総合プロデューサーを退いた後、Berryz工房の無期限活動停止、℃-uteの解散という形で達成される。これは第一世代から第二世代からの世代交代を推し進めたエルダークラブの分離・卒業と比較できるかもしれない。ハロー!プロジェクト・キッズ15人の初パフォーマンスが2003年冬のハロコン、モーニング娘。9・10期、スマイレージ2期の計12人をフィーチャーしたのが2012年冬のハロコン。3年後の2006年初頭に片やワンダフルハーツとエルダークラブの分割、片や2015年3月のBerryz工房無期限活動停止があった。少し時間的には合わないが、2006年から3年たった2009年3月にエルダークラブが卒業、Berryz工房活動停止から2年後に℃-uteは解散。どれだけ意図的であったか定かでないが、第一世代から第二世代への世代交代と比較できるようなタイムスパンで第二世代からの世代交代は行われた。

 第四世代の特徴は、第二世代と同様、ハロプロでの活動期間が長いことである。上に挙げた中核となる18人のメンバーのうち、一番活動期間が短かったスマイレージ・アンジュルムの田村でも5年近く活動しており、それに次ぐモーニング娘。の鞘師でほぼ丸5年、それ以外のメンバーは皆5年以上活動している(モーニング娘。9期の2人は、2021年夏のハロコン時で、ハロプロでの活動が10年を超えている)。一方で、ハロプロエッグ・研修生を経て、ハロプロに加入したメンバー、オーディションから直接ハロプロに入ったメンバー、その他のルートからハロプロに入ったメンバー(Juice=Juiceの宮崎)と、第四世代はバックグラウンドが様々であり、比較的均質性の高かった第二世代・第三世代とはそこが異なる点である。モーニング娘。の譜久村の先輩・後輩はデビュー順で決まるとの発言は、エッグ・研修生歴は換算せず、デビューをもってフラットな関係になろうという、自身の世代に向けたものとも解釈できるが、実際の人間関係はエッグ・研修生歴の長さに大きく影響されているように見受けられる(例えば、デビューの早かったモーニング娘。の小田が、研修生加入時期が早かったJuice=Juiceの高木を先輩扱いしていたことなど)。ここらへんの複雑さが、第四世代の世代としてのまとまりを小さくしている印象は否めない。それは、2016年のアップアップガールズ(仮)の武道館公演にハロプロエッグOGが多数集まって、第三世代の求心力の強さが示されたこととは対照的である。

 第五世代に属する人たちとしてこのnoteが想定するのは、2013年から2014年にかけての、いわゆる「研修生黄金世代」である。当時、研修生は衛星放送で冠番組が放映されるなど活動が活発化を見せ、研修生ファンの間での盛り上がりはかなりのものであった。この盛り上がりが「研修生黄金世代」という言葉を生み、今でも一部のファンの記憶に残っている。

 2010年のモーニング娘。9期オーディションを皮切りに、2011年以降は、それまでと打って変わって年に2回、あるいはそれ以上の頻度でオーディションが開催されるようになった。それらのオーディションの合格者は上に述べた第4世代として次々とハロプロに加入していくが、落選者の中には研修生に加入する人たちがいた。また、研修生独自のオーディションも開かれ、そこから研修生に加入する人たちもいた(研修生オーディションは、2011年11月のハロー!プロジェクト☆フェスティバルで、つんく♂が直々にVTRでその開催を発表したことからも、アップフロントとして力を入れていたと思われる)。こうして2011年から2014年前半にかけて研修生に加入したメンバーは、モーニング娘。やJuice=Juiceに加入した人たち(小田、金澤、大塚、植村)を除けば、2014年の後半まで一緒に一つのグループのように活動し、このまま全員でデビューしたいという声がメンバーから上がるほどまでになる。その集大成となるのが、2015年2月にリリースされたアルバム「① Let's say "Hello!”」であるが、そのジャケット写真に写っている25人のうち、ハロプロメンバーとしてデビューした20人が、本稿でいう第五世代に属する。

 この世代の多くは、2014年後半から2015年前半にかけての、いわゆる大量昇格の時期にハロプロ加入を果たす。モーニング娘。12期メンバーとして牧野、羽賀、スマイレージ3期メンバーとして、室田、相川、佐々木、カントリー・ガールズ結成メンバーとして、山木、稲場、こぶしファクトリー結成メンバーとして藤井、野村、小川、浜浦、田口、和田、つばきファクトリー結成メンバーとして、山岸、新沼、岸本の計16人である。一岡、加賀、段原、船木の4人のハロプロ加入はそれより若干遅れ、2015年11月に船木、2016年12月に加賀、2017年5・6月に一岡、段原がそれぞれハロプロに加入している。

 第五世代の特徴は、加入先のグループの多さであり、実に6つのグループにまたがっている。しかも、一つのグループに集中しているということもない、一番加入人数が多かったのはこぶしファクトリーの6人であったが、それでも大量昇格を果たした16人の内の6人で半分にも満たない。また、同時期に研修生として活動したものの、研修生に入った時期がバラバラであることもあり、世代としてのアイデンティティより、研修生に同時期に入ったメンバーとの繋がりが優先されている印象がある。さらに、第四世代の区切りもあいまいであり、いわゆる古参の研修生メンバーは第四世代と目される人たちとの繋がりの方が強い場合がある(例として、浜浦・小田、室田・植村など)。

 第五世代は第四世代と年齢構成がかなり重なっていることや、デビューの時期がそんなに離れていないこともおり、第四世代からの世代交代の対象ではないように思う。むしろ相互補完的であり、その意味で第二世代と第三世代との関係に似ているのかもしれない。ただ、第三世代の多くがハロプロでデビューすることができず、いわば飼い殺しにされたのに対し、第五世代はかなりの割合で研修生からハロプロのグループへの加入を果たした。さらに、「研修生黄金世代」の第五世代がハロプロエッグ主体の第三世代と大きく違うのは、ハロプロでの活動期間が概して長いことであり、2021年夏のハロコン時点で、20人中ちょうど半分の10人がまだハロプロに在籍している。

 第六世代は、2014年のモーニング娘。'14 <黄金(ゴールデン)>オーディションを経て、直接ハロプロのメンバーになった人、または研修生になった人及び同時期にナイスガールトレイニーからハロプロ研修生になった人たちで構成される。ただ、この世代と第五世代との切り分けは難しい。というのも、この世代のかなりの部分は、第五世代の多くがハロプロに加入した、いわゆる大量昇格の時代に、同時期にハロプロに加入しているからである。これに加えて、年齢構成が似通っていることもあいまって、世代を分けることに意味があるのかさえも疑問が湧く。ただ、つんく♂プロデュース時代のハロプロを知らないという意味では(ナイスガールトレイニー組はつんく♂プロデュースを受けていたという例外はあるものの)、やはり第五世代とは少し異なるアイドル・ハロプロ観を持った新しい世代に属しているものと考えられる。

 第六世代に属していると考えられるメンバーは、いわゆる大量昇格の時期にモーニング娘。に加入した尾形、野中、カントリー・ガールズの結成メンバーとなった森戸、島村、小関、こぶしファクトリーの結成メンバーとなった広瀬、井上、つばきファクトリーの結成メンバーとなった小片、谷本、浅倉の10人の他、以下の人たちである。ハロプロ研修生を経てカントリー・ガールズに2015年11月に加入した梁川、2016年7月にアンジュルムに加入した笠原、同年8月につばきファクトリーに加入した小野、小野田、秋山、後にビヨーンズの結成メンバーとなった高瀬(前田(こ)も黄金オーディションからの研修生加入組であるが、後述の理由でこの世代には算入しない)。さらに、2015アンジュルム新メンバーオーディションに合格してアンジュルムに加入した上國料萌衣も、黄金オーディションの合宿審査進出者であったので、この世代に数えたい。

 上に述べた計17人で構成される第六世代であるが、その特徴は第五世代と同様、加入先のグループが6グループにも及んでいることである(モーニング娘。2、アンジュルム2、カントリー・ガールズ4、こぶしファクトリー2、つばきファクトリー6、ビヨーンズ1)。偏りは少ないものの、その中でもつばきファクトリーが最大派閥を作っており、第六世代を象徴するグループといえる(それに対して、第五世代に属するメンバーが最も多かったこぶしファクトリーは第五世代を象徴するグループであった)。また、第五世代以上にハロプロ加入時期のばらつきが激しく、研修生の経験者・非経験者という差や、ナイスガールトレイニーというハロプロ・アップフロントとかなり複雑な関わりを持った組織の出身者もいることなどから、世代としての求心力は低い印象である。大量昇格時や、同時にカントリー・ガールズに加入した船木・梁川の例に見られるなど、第五世代のメンバーと一緒にハロプロのグループに加入したメンバーが多いことから世代が融合している側面もあるが、研修生時代の上下関係も残っているように見受けられることも多々あり、分裂した世代であるという感想を持つ。

 第七世代は、2016年以降に研修生となり、2017年のいわゆる新体制以降にデビューしたメンバーで構成される。2016年は、研修生発表会からエッグ時代を連想させる「生タマゴShow!」という副題が消えたり、ハロプロ研修生北海道が設立されたりするなど、研修生システムに変化が起きた年であった。また、次のハロコンで撤回されたが、2016年冬のハロコンではそれまでの2パターン公演が廃止され1パターンのみとなり、席順価格が導入されるなど、何らかの変革を試みようとしていたことがうかがわれる。同じ時期には、ハロプロメンバーが所属するアップフロントプロモーションの社長が現在の社長に変わり、水面下では℃-uteの解散に向けてのメンバー間での話し合いが(おそらくアップフロント主導で)行われ、2017年のいわゆる新体制へとつながっていく。

 この世代の中心メンバーとなるのは、2018年7月にリリースされた研修生のアルバムのジャケット写真に写っている人たちのうち、後にハロプロメンバーになった9人である(その他、今後デビューが予定されているハロプロ新グループのメンバー3人もジャケット写真にはいる)。この9人に、ジャケット写真には写っていないが、同時期に研修生であり、後にハロプロメンバーとなったハロプロ研修生北海道の3人(その他に、ハロプロ新グループのメンバーが1人)を加え、更に2018年のハロー!プロジェクト”ONLY YOU”オーディション合格者4人、2019年のモーニング娘。'19 LOVEオーディション合格者2人、2020年のアンジュルムONLY ONEオーディション合格者2人を入れた計20人が第七世代の中核となる。

 少し難しいのは、2016年研修生加入のモーニング娘。の横山とアンジュルムの川村であるが、デビュー時期や年齢、グループ内での扱いなどを考慮すると前の世代に属していると考えたほうがよさそうである(したがって、第六世代は17人と先に書いたが、これからは横山・川村を加えて19人と考える)。逆にビヨーンズの清野は、この2人よりも研修生加入が早く、ハロプロ加入時期的にも前世代寄りであるが、年齢やデビュー時期を考えると、第七世代に入れるのが妥当だと思われる(したがって、本稿でいう第七世代は21人となる)。

 第七世代は、研修生アルバムに参加している人たちを中心としているという点では第五世代と似ている部分があるが、いくつか違いがある。大きな違いは、加入先のグループが、モーニング娘。に3人(北研から山﨑(愛)、オーディション組の北川、岡村(ほ))、ビヨーンズに10人(研修生から清野、前田(こ)、西田、山﨑(夢)、島倉、江口、岡村(美)、オーディション組の平井、小林、里吉)、アンジュルムに6人(北研から太田、ONLY YOUオーディションから伊勢、研修生から橋迫、為永、ONLY ONEオーディションから川名、松本)、Juice=Juiceに2人(北研から工藤、研修生から松永)と4グループで、前世代と比べて比較的少なく、しかもビヨーンズが21人中10人と約半分を占めている。また、グループを横断した活動が多くなった時期にハロプロに加入していることもあって、グループ間の交流も多く、前世代と比べて世代としてまとまっている印象がある。

 第7世代はハロプロデビューからまだ比較的日が浅いこともあり、21人中20人が残っている。2021年夏のハロコン時の世代構成は、したがって第四世代が8人、第五・六世代が23人、第7世代が20人となる。

 2015年夏のハロコンでは、第二・三世代が8人、第四世代が18人、第五・六世代が25人であった。それから4年後の2019年に第三世代の最後の1人であった和田が卒業して世代交代が完成するのであるが、同様な世代交代はこれから起こるのだろうか?

 結論から言うと、これから起こる世代交代は、あまりうまくいかないように思われる。第一の理由は、第四世代と次の世代の人気格差である。2015年夏のハロコン時では℃-uteメンバーを始めとした第二・三世代の人気はもちろん高かったものの、他を圧倒していたと言えるほどではなかった。むしろ、第四世代にも鞘師、譜久村、工藤といった人気メンバーがおり、世代間での人気は拮抗していた。つまり受け皿が2015年夏の時点である程度整っていたので、世代交代がスムーズにいったといえる。その時点での新人である第五・六世代はもちろんそれほど人気はなかったが、第四世代の人気地盤がしっかりしていたので、2年後の℃-uteの解散を受け止めることができた。第四世代の18人中、ちょうど半分の9人はモーニング娘。のメンバーであり、第二世代からの世代交代はハロプロ随一の人気グループであるモーニング娘。が担ったといっていい。

 翻って現在、2021年夏の世代構成をみると、当時の第二・三世代にあたる第四世代に佐藤、譜久村、石田、小田などの人気メンバーがそろっており、当時の第四世代に相当する第五・六世代には鞘師のような前世代を上回るほどの人気メンバーはいない。また、第五・六世代で最大勢力を占めるのは、あらゆる指標で人気が最下位のつばきファクトリーであるということもつけ加えなければならない。

 もちろん世代交代が、2015年のときのように漸次的に起こるのでなく、第四世代から第七世代に一気に移行することもありえる。第四世代と第五・六世代の年齢層が近いことからも、そうなる可能性は十分にある。ただ、そうなった場合、第七世代の約半分がビヨーンズメンバーであることから、ハロプロの看板グループがビヨーンズになる可能性が否定できない。そうなったときに、ハロプロファンの最大勢力であるモーニング娘。ファンがそのままハロプロファンを続けるかどうか、非常に難しいところだと思う。

 世代交代がうまくいかないんじゃないかと思う第二の理由は、世代間をつなげる、いわば連続性を担保するものの違い。第二世代から第四世代への世代交代が比較的スムーズにいったのは、どちらの世代ともつんく♂によるプロデュースを経験した世代だったことも一つの要因だったと思う。しかし、第四世代以降は、第五世代が少しつんく♂時代を経験しただけで、第六世代からはつんく♂とほとんど関係性がない。したがって、世代間の連続性は他のところに求められざるを得ないが、そのことと最近になって非常に目立つ研修生のプッシュは無関係でないと思う。ただ、研修生制度にハロプロの連続性を担保させるのは、かなり難しいと個人的に思う。それには、研修生を経ないでハロプロに加入したメンバーが数多くいるというのもあるし、さらに大きな理由としては、研修生制度自体が多くの人に興味を持たれるようなコンテンツではないということがある。地上派で1年間研修生に密着した番組を流しても、研修生実力診断テストを視聴する人は4000人前後と全く増えず、結局のところ研修生をエンターテイメントとして楽しむ人は極少数であることが判明した。第四世代からの世代交代は、これらの少数のファンを相手にした商売にシフトしていくことを意味するとも考えられるが、さすがに1万人以下の人たちから大金を巻き上げるという商売システムは、破綻が目に見えていると思う。

 以上、長々と書いてきたが、個人的な見解としては、これから起こる世代交代はあまりスムーズにいかないように思う。第一世代から第二・三世代への世代交代はBerryz工房・℃-uteを中心として、第二・三世代から第四世代へはモーニング娘。の9・10・11期を中心として達成されたが、現在、それに比較できるような世代グループはみあたらない。結局、2015年の大量昇格のときの人的配分のまずさが今になって仇になってきているような気がしてならない。

 また、そもそもの問題として、ハロプロがはたしていつまで存続できるのかというのがわからない。2015年以降の人気の落ち込み方を見ると、今のままの体制ではとうてい長くもつとは思えない。

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