<第37回>コロナ禍でのリモートワークでクローズアップされる「社員の幸福感」 ~ 日立の新会社「ハピネスプラネット」に触発されて
「社員が『幸せ』になったら、業績もアップ 「幸福度」を測る、日立の野望」という7/17付けのIT mediaビジネスオンラインの記事(https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2007/17/news015.html )を見つけ、「そうなんだよね」と我が意を得た気がしたものです。
この記事によると、日立製作所では、これまで研究・開発を進めてきた、社員の「幸福度」を定量化する仕組みを使って、企業にスマートフォンアプリとSaaSを提供する「ハピネスプラネット」という新会社を設立して事業展開を行っていくということです。
幸福度の定量化については、「無意識下で起きる身体の動きをウエアラブルセンサーで記録。その身体の動きと、別途実施する被験者へのアンケート形式の心理検査を組み合わせること」によって得られるということのようなので、日立が今後進もうとしている分野の一つである、ビックデータ+IOT+AIといった事業展開にも合致したものなのでしょう。
このサービスが実効性のあるものかは定かではありませんが、日立のような日本を代表する大企業が、「社員の幸せ」に対して真剣に取り組み、それを拡げていくという動きは注目に値するように思います。
15年研究してきた成果に基づくとのことであり、日立ほどの会社が提供するものなので、一体どのような考えに基づくものなのか、興味が惹かれますね。
定量化のベースになる「人間の幸福というものを客観的に捉える研究」の成果については、日立のHPに、「ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式 」、「劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか 」など今をときめくベストセラー作家である山口周氏のインタビューという形で、開発者の矢野和男氏が語っています(https://www.foresight.ext.hitachi.co.jp/_ct/17360713)。
以下、内容を要約すると、幸福で生産的な組織の特徴は
①人と人とのつながりを線で表す「ソーシャルグラフ」の中に三角形が多い。
⇨ 自分とつながりのある人同士もまたつながりがあるという関係が多いほど、組織における人間関係が密で、幸福度が高い傾向にある。
②5~15分程度の短い会話の頻度が高い。
⇨ 組織のメンバーが気軽に会話できる関係にあり、その会話が双方向であり、会議でも全員が均等に発言しているなど、つながりが平等である。
③会話する相手と体の動きが同調している。
⇨ コミュニケーションが言葉によるものだけでなく、特に体の動きがコミュニケーションの相手と同調している。
の3つであり、集団での協力が上手くいっているほど幸福である、と記述しています。
こうした分析結果は、手前味噌ですが、前回のこのコラム、「<第36回>『働き方改革』+『ウイズコロナ』の下で社員間の『交流』はどうやったら良いのか? ~ フィンランドの『リトリート』に学ぶリモートワークだけでは得られない、社員間の信頼感をベースにした仕事、職場」」(https://note.com/turnaroundlabsk)という内容と合致しています。
もちろん、上記矢野氏、山口氏の対談で指摘がなされている通り、「リアルでなくてリモートでも、リアル並みのコミュニケーションが出来るようになっていくのではないか」とは思いますが・・・・。
大事なことは、こうした社員の幸福感について、企業の側が意識して確保、設定しようと心掛けることが必要な時代になってきているということです。
昭和の時代のように「アメとムチ」での管理とか、終身雇用の幻想の下での家族主義とか、ではなく、労働市場の流動性、働き方の多様化といった時代の変化の中で、企業自体が、常に社員が働きやすい環境を作ろうと努力していくことの必要性、そしてそれがひいては企業内の効率性や生産性、業績向上に結び付くのだというコンセンサスが社会全体で広がっていくことを望みます。
ただ、こうした試みがスンナリ成功するとも思えません。
職場には、職場のルールがあり、会社の文化があり、新たな考え方に、社員が皆ついていけるわけでもありません。そもそも頭の固い昭和のオジサンが発言力を持っている大企業はなおさらです。
それが証拠に、例えば、上記サービスを提供する日立製作所という会社ですら、社員のクチコミだけで評価する「働きやすい会社」という評点では、平均よりは良いが傑出して良いという評価ではありません(OpenWorkの評点では、平均の3.0 のところ、3.46に留まっています https://www.vorkers.com/company.php?m_id=a0910000000FrN0)。
ターンアラウンド研究所の創業の趣旨は、社員と会社がパートナーとして互いに幸せであり、そのことで共に成長していける、そんな企業社会を創っていきたいということです。
今回コラムの冒頭に、「我が意を得た」と書きましたが、コロナ禍のリモートワーク、生き方、働き方の見直し、そんな変革期こそ、私たちの主張が受け入れられる時代なのではないか、そんな風に感じているのですが・・・・。
※今回もお約束のように、我田引水で終わることになってしまいました。
<ターンアラウンド研究所https://www.turnaround.tokyo/ 小寺昇二>
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