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ウィッチ専2pickerの俺は来期ウィッチBAN濃厚だからチームを追われたので異世界に転生してウィッチの強さとは何か見せ付けてやることにしました~一切合切凡庸なお前はウィッチの順位上げてももう遅い~

第1話 異世界転生は2pickと共に

「あ、ルシさんこんにちはー」
「ルシやほやほ!今日もルムマする~?」

通話に入った俺を歓迎する声が聞こえた。
「あーいいぜ3先でもするかー」
「やたやた!今日こそ勝つからね!」
「ルム番教えて下さーい神視点見たいですー!」
いや、気だるげに返事した俺とこいつ等の温度差凄いな。

紹介が遅れたな。俺の名前は干名柊史(ほしなしゅうじ)。ネット上だと「†漆黒の堕天使・ルシファー†」というHNで生活している。仲間からはよく「ルシ」とか「ルシさん」と呼ばれている。自他共に認める強豪2pickプレイヤーだ。
そしてこれはゲーマーの間で流行っている通話やチャットその他諸々用アプリDiscard。シャドバプレイヤー御用達のツールだ。
今俺が通話に入ったサーバーは「STB」という2pickチームで、リーダーの「スタ」を中心に10数人のチームで構成されている。最近新しくできたチームなだけあって通話も活発だ。
俺はこのチームで、環境上位のウィッチを主に練習している。今期のウィッチなら誰にも負けない自信がある。新弾で強いフォリアと博学を何枚も取れれば、まだ落ちてないマーシャルやビジョンなんかと合わせて全然ビショップにも戦える強いリーダーだ。そんなウィッチを使いこなし、今期のJGG予選Tは優勝3回準優勝1回という好成績を出すことが出来た。来期もこのチームでウィッチを頑張っていこう…………

と思っていたのだが───



「ルシ、お前今日で除名な笑」
リーダーのスタに除名を告げられたのは新弾評価通話の終わり際だった。
「な、なんで急に除名されなきゃいけないんだよ」
「あたりめーだろ?来期のウィッチはアブソーブスペルと氷雪が落ちて確定除去が全然ないし、境界も落ちて土シナジーも弱い。こんなのBANリーダーなんだよ。そんでもって、BANリーダーを練習しようとする奴なんてウチにはいらねーんだよ笑 お前、お荷物なんだよ。」
来期のウィッチはBANと判断され、それに伴いウィッチ専の俺もお役御免となった……


除名という事実を受け入れられない俺はコンビニにでも散歩して気を紛らわせようと思った。でも俺の精神状態は俺が思っていたより重症だったようで、横断歩道が赤信号なのに気付かないまま横断しようとしてしまい、トラックに衝突して────────









「私の声が聞こえますか?」
次に目が覚めた時には、何故か俺は昼下がりの森の中で、女の子に顔を覗き込まれていた────






「え、ここは……?」
思わず上体を起こして辺りを確認する。
木、木、木。一面木だらけだ。本当に森の中にいるらしい。
「良かった!ケガも無いみたいですね!」
そう言われてハッとなった。確かに体に痛みは一切無いし、血も出ていなければ傷も全く無い。
一体どうなってるんだ…?たまらず女の子に尋ねた。
「ここは一体…?」
「ここはピクトピアの東にある森ですね!ふだん人はあまり来ませんけど空気が美味しくて私はよく散歩に来るんです!木漏れ日が暗すぎず眩しすぎず丁度良くって、ここの芝生に寝っ転がってリプレイを見返すのが私大好きなんです!あとここで採れるキノコがとっても美味しくって、よくシチューに入れたりクラムチャウダーに入れたり冬にはお鍋にしちゃったりして…」
「あ、あの、君は誰?」
このまま聞いてると日が暮れる勢いだったので無理矢理割って入った。
「あぁごめんなさい!私はトウ=モイ、魔女見習いです!皆からはよく「モイちゃん」って呼ばれてます!」
トウモイ……それ日本人の名前か?
それに魔女見習い………?
どういうことだ………?
それにピクトピアって………どこだ?
そんな名前の都市は聞いたことがない……
頭を抱えていると、少女は勢いよく俺の手を引いてきた。
「まぁまぁ、とりあえずこんな所じゃ何ですしひとまず街に戻りましょう!お腹も空かせてる事でしょうしお昼ご飯をご馳走しますよ!」
「え?あ、あぁ…」
「さぁ早く!膳と処理の多いターンの動き出しは急げですよ~!」
俺はいくつもの疑問を抱えたまま森を出た。
あと、急ぐのは膳じゃなくて善じゃないか……?

森を出た俺の目の前に広がっていたのは、かなり栄えた、いかにもって感じの街の風景だった。人通りも東京の渋谷くらい多い。道は石畳で、建物は全部木造でヨーロッパ風な建築だ。ビルやマンションなんかは一切合切見当たらない。
「この街は……?」
「ここはピクトピア。ここらじゃ一番栄えている街です。まだまだ外れのほうですけどね。中央に行くとお城があったりするんですよ!」
確かに遠目に城らしきものが見える。どうやら彼女の言っていることは本当らしい。
俺がトラックに轢かれた後、一体何があったっていうんだ……?

「私のお家はこっちですよ~、ってちょっとどこ行くんですか~!?」
初めての風景と経験に驚いていた自分はモイの声も聞こえず、辺りをぐるぐると見回しながらまっすぐに道を進み始めた。すると肩に衝撃が走った。

「うわっ!!いってーなてめぇ何するんだよ!俺の一張羅が汚れちまったじゃねぇか!」
どうやら通行人のヤンキーと肩をぶつけてしまったようだ。しかも因縁を付けられてしまった。これは厄介だ。
「おいてめぇ、俺の服のクリーニング代払えよ。でなきゃ分かってんだろうな……?」
どこの街にもいるんだな。こういうタイプ。
「払うわけないだろ。全然汚れてないじゃないか。ほら帰った帰った。」
なだめて大人しくさせようと思ったが…
「うるっせぇな俺が汚れてると思ったら汚れてるんだよ!」
やれやれ。どうやら逆効果だったみたいだ。どうやって追い払おうか悩んでいるとヤンキーがまた喋りだした。
「あ?まさかお前……俺にあれで挑もうってんじゃねぇだろうな?」
「あれ?あれってなんだ?」
「あれっつったら2pickに決まってんだろ!」
2pick?
「あ~~お前あれか。他所の街から来たのか。じゃあ俺が身をもって教えてやるよ。この街じゃ2pickが全てだってことをなぁ!!」
2pickが全て?
「ちょ、ちょっと待ってください!この人はさっきまで気を失ってたんですよ!今回は見逃してくd「2pickが全てってどういうことだ?」
仲裁に入ってくれたモイを抑えて、俺はヤンキーに聞いた。
「言葉のまんまだよ。この街じゃ2pickに負けた奴は勝った奴の言うことに従わなきゃならねぇ。お前は俺に負けて、土下座してすいませんでしたって謝るんだよ!」
ほう。この街でもシャドバが流行ってるらしい。しかも2pick。しかも勝ったら相手に命令出来るとは。俺のカードゲーマーとしての血が騒ぎだした瞬間だった。
「いいぜ。乗ってやる。俺が勝ったらお前が土下座だ。」
「ハッ!いいぜ乗ってやるよ。ま、土下座するのはお前になるんだけどな!ガハハハ!」
かくして戦いの火蓋が切って落とされることになった。

騒ぎを聞き付けたのか、いつの間にか野次馬も集まりだした。モイは心配そうに俺を見つめている。
ヤンキーが部屋を立て、俺がルームナンバーを入力する。今までに何度もやってきたことだ。
この街でも2pickができるなんて。心配そうなモイとは裏腹に、俺は内心この状況を楽しんでいた。配信択と同じような感覚を味わった。

お互いにデッキ作成ボタンを押す。すると────


なんと俺の画面に表れた3つのリーダーは全てウィッチ。ウィッチ以外に選べるリーダーは無かった。



「お、おい見ろよ!あの男、リーダー提示全部ウィッチだぞ!」
「ホントだ!一体どうなってるんだ!」
「バグだ!早く運営に報告するんだ!」
俺の画面を見た野次馬達がどよめきだす。
それとは裏腹に、俺の心は落ち着いていた。
どういうバグかは知らないが、ウィッチなら俺の管轄内だ。今期のウィッチがどれだけやれるか見せてもらおうじゃないか。
俺は迷わずウィッチを選択した。
「おお、ウィッチを取ったぞ!」
「でもよ、あのリーダーって今期BANじゃなかったのか?」
「あぁ、事前評価じゃウィッチとネクロがBANって噂だ。こんな環境初期にウィッチを練習してる奴なんてどこにもいねぇよ…」
あーもうBANBANうるせーな。今からお前らにウィッチの強さとは何か見せ付けてやるよ。
と意気込んでいると、対面のヤンキーが野次馬の騒ぎ声を聞き付けたのか喋ってきた。
「おいおいウィッチを取るとは余程ナメてるらしいな!w ま、せいぜいフォリアでもフュンフでも取れるようお祈りしとくんだな!」
こいつプレイヤーリスペクト宣言に反してるだろ。心の中でそう思いながらpickを進めた。



お互いのデッキが組み上がり、ついに試合が始まった。ヤンキーの使うリーダーはネメシス。事前評価では1位にする人が多いリーダーだ。
(ネメシスか…少しは本気が出せそうだ………)
俺はこれからの戦いに心を踊らせた。

相手の序盤は先2機械化歩兵、3ビームヨーヨーガール、4ウィングメッセンジャー。カードは強くないが、テンポは悪くないムーブだ。うかうかしていると顔が無くなっちまう。
負けじと後1知恵の光、2マジカルリス、3魔導書の書き手、4マジカルシューター進化+知恵の光で盤面を捌いていく。

よし、これで山札20枚以下だ。5ターン目、俺は満を持して新カード、「魔法による模倣」をプレイ。増やすのはもちろん「この」カードだ。お前に賭けるぜ。
「ん?今ドローしたか?なんか挙動が違ったような…」
野次馬の1人が違和感を感じたようだ。
まったく…魔法による模倣の効果も知らないのか?と思っていたら─
「新弾でウィッチに追加された新カード、魔法による模倣はデッキのランダムなカードを2枚消滅させるのを共通効果として、発動時にデッキの枚数が20枚以上であればデッキから1枚ドロー。20枚以下であれば好きなカードをコピーすることが出来ます。今彼のデッキ枚数は19枚なので好きなカードをコピーする効果が発動できた訳ですね」クイクイ
「おぉメガネ!良かったらこの試合の解説を頼むよ。」
「任せてください僕が神視点から彼らのプレイを冷静かつ的確に解説してあげますよ」クイクイ
なんだあのメガネ…

「しかし魔法による模倣のあんな長ったらしい効果を僕以外に覚えている人がいるなんて……彼はとんでもないプレイヤーかもしれませんよ」クイクイ
「それにこんな早いターンで20枚以下の効果を発動させたとは一体どうやって……そうか!」クイクイ
「どうした、ガネ!」
「2pickは構築と違って山札が30枚の状態で試合が始まるから比較的デッキ枚数が20枚になりやすいんです!」クイクイ
「なるほど!あ、それに、もしかして序盤からあんなにドローをしていたのも山札を減らすためだったのか……!?」
「そうに違いありません。これは、僕達はとんでもないプレイヤーに出会ったのかもしれませんよ……!」クイクイ
おいおい、山札を20枚以下にするのはウィッチ専の間じゃ当然のテクニックなんだが?笑

9ターン目。満を持して俺は素引きしたマナリアクイーンアン2枚と魔法による模倣で増やしたアン1枚、計3枚のアンを投げ、大英霊でプライムアーティファクトに当たり、進化権まで使って相手の盤面を更地にした。よし、山札の枚数も…
と勝利を確信していると、ヤンキーがまた騒いできた。
「おいおいおいおい!w 大事な金虹枠をそんな3/2/3ごときに使っちまって大丈夫なのかい?w」
駄目だ。笑うな。まだ堪えるんだ笑
ヤンキーはアーティファクトシップを出しターンエンド。俺の大英霊が消滅する。
「あーあw せっかくの5/5も消えちゃいまちたね~~w」
駄目だ。もう堪えきれない笑
「あっはっはっはっはっは!!」
俺は大声を上げて笑った。今思うと悪役みたいな笑い方だな笑
「あ?ついに気が狂ったか?」
「ヤンキー。お前の負けだよ。」
「wwwwwwww おいおい良く見ろ!w 俺の体力は20でお前の場には何もいない。俺の盤面にはアーティファクトシップとレディアントアーティファクト2体、アーティファクトシップにはなんと守護が付いてるんだぜ?こんな状態でどうやって負けるっていうんだよ!ww 寝言は寝て言えよ~~???」
「見せ付けてやる……イクシードブラスト!」
ズキュン!アーティファクトシップと相手のリーダーに8点ダメージ!
「な、なんだこのカード!3コストで8点だと!」
「もう一発!」
ドキュン!レディアントアーティファクトと相手のリーダーに8ダメージ!
「そ、そうか!前のターンに出したアンの効果で手札に加えた専用スペルです!しかも今彼の山札の枚数は3枚で、イクシードブラストは最大火力が出せる!」クイクイ
「これで最後だ!うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「うぎゃああああああああああああ!!!」
バキュン!レディアントアーティファクトと相手のリーダーに8ダダメージ、計24点を相手のリーダーに与え、俺の勝利となった。
「なんだこいつのウィッチ……おかしい、おかしいぞ!」
「おいおい…俺のウィッチがおかしいって、弱すぎるって意味だよな?」
「くそ!覚えてろー!」ブキューン
捨て台詞を吐いてヤンキーは逃げていった。
俺は見事ヤンキーを撃退した。


「わーっ!すごいすごい、すごいです!あのヤンキーくんを倒しちゃうなんて!」
試合が終わった瞬間モイが抱きついてきた。
「まさかBANと言われたウィッチで暫定1位のネメシスに勝つとは……僕もリーダー順位を修正する必要がありそうですね…」クイクイ
メガネはブツブツ独り言を言いながら帰路に向かっていった。
と、いつの間にか俺(とモイ)は大勢の街の人達に囲まれてしまった。
「すげぇな兄ちゃん!今度2pick教えてくれよ!」
「まさかヤンキーに勝つとはねぇ!」
「ウィッチ教えてー!」
「ボクもボクもー!」
ここで暮らしていくのも悪くないかもな…そう思いながら、俺は熱狂した街の人々の対処に追われるのだった。



To be (not) continued………

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