見出し画像

渓流釣りにおける虫との付き合い方

夏、特に8月にもなると東北であろうが暑い。あの札幌でさえ、去年はついに35℃を突破したそうで、年々暑くなっているのは間違いない。東北でも、ここ数年でやはり気温上昇の勢いを感じる。

 ただ、その原因が二酸化炭素の増加であるかについては未だ議論の余地があるそうだ。

 こちらは民間シンクタンクの記事で、二酸化炭素が槍玉に挙げられるのは政治的な意味合いも強いとのこと。確かにEVが主産業化してきている中国としては、ガソリン車廃止の流れにブーストをかける意味で二酸化炭素を悪玉と認定したいのだろう。とはいえ筆者からはかなり右っぽい香りが漂っており、結論ありきの可能性もある。

 逆に、国立の研究所からは、二酸化炭素をはじめとした人間活動が温暖化の主な原因だとする記事が出ている。

 ただこちらも、国の研究所に所属している研究者の立場がフラットかと言えば首をかしげる所ではある。研究というのは個人の興味・好奇心が端緒とはなっているが、なかなかそれだけで出来るものではない。選択と集中を進めるわが国では、「何か問題が発生しており、それを解決する方法を探している」という題目がなければ、そう簡単に研究資金もポスト得られないのである。というわけで国として温暖化に対処するというベクトルを決めた以上、「温暖化は大したことではないし、人間にやれることはないのだ」と主張する研究者が生き残るのは難しいという選択圧も多少なりとも考慮する必要があるだろう。

・・・とまあ、いつもどおり前置きが長くなってしまったが、温暖化の話はさておき、今回は暑い季節につきものの渓流釣りにおける虫対策についてである。ちょっと時期は早いけど、実践中のものを紹介。

Designerで精製した「渓流釣り人、周囲にハチやアブ」の画像。
こういったAI画像では大抵、リールはぶっ壊れている。

※注意!本記事は虫の写真が多めとなっております。

まずは選手入場

 実は結構、虫は好きな方だ。渓流でトンボや蝶を見かけるとテンションが上がる。トビケラ・蛾やクモなども実害がないし、基本的に人間とは積極的に関わろうとしない。むしろクモに関して言うなら、意図せずたびたび巣を壊してしまってこちらの方が申し訳ないくらいである。

かわいい
かわいい

 だが私だって、中には嫌な奴らもいる。というかほとんどの人が嫌っているであろう虫たちのことだ。

 まずはアブ。渓流域にもよく出没し、駐車した瞬間に車の排気ガスに含まれる二酸化炭素に引き寄せられてどこからともなく寄ってくる。吸血性で、嚙まれたら相当痛いらしい(今のところまだ被害にあったことはない)。大きな羽音は耳障りだし、大群で襲って来ることも多い。

特にやっかいなのが、アカウシアブである。下の写真を見てもらえば分かる通り、アカウシアブは黄色と黒の縞々をしている。この見た目がスズメバチに似ているのがやっかいなのである。アブの中でもとりわけ巨大で5センチくらいの大きさがあり、「ブーン!」とデカい羽音もオオスズメバチにそっくり。アカウシアブが体に止まったら、出来るだけ速やかに叩き落さなければならない。すぐに血を吸い始めるからだ。なお言うまでもないが、スズメバチを刺激するのは逆に大変危険である。そう、この虫は図体がでかいくせに姑息な手段で我々を惑わせるのだ。

アカウシアブhttp://www.ha.shotoku.ac.jp/~kawa/KYO/SEIBUTSU/DOUBUTSU/07hae/akaushi/index.html
オオスズメバチhttp://www.ha.shotoku.ac.jp/~kawa/KYO/SEIBUTSU/DOUBUTSU/08hachi/suzume/04.html

 ちなみに飛び方で両種を判別することはいちおう可能ではある。アカウシアブは空中で止まることが出来ない。一方、スズメバチは人の周りをホバリングすることが多いので、そのあたりで区別はつく。とはいえ一瞬躊躇するので心臓に良くない虫だ。

 次にブヨ。こいつらも悪質だ。体長3-4 mm程度と非常に小さく、噛まれた時もまったく気づかない。恐ろしいのはその後で、異常に強い痒みが出る。さらに噛まれた部分を中心として滅茶苦茶に腫れるのが特徴。足を嚙まれた時は、腫れすぎて歩くのが痛かったほどである。足が破裂すると思ったほどだ。悪化するとアレルギー症状まで出るというのも悪質である。

ブヨ
http://www.ha.shotoku.ac.jp/~kawa/KYO/SEIBUTSU/DOUBUTSU/07hae/type157/index.html

 もちろんスズメバチ類もなかなか嫌な奴らだ。基本的には攻撃してくることはないのだが、「ワシの庭で何しとんねん」といった感じで付きまといメンチを切ってくる。ここで下手に刺激すれば刺されるし、運が悪いと死ぬ。巣に近づくのはもちろん危険なので避けたいところだが、オオスズメバチは土中にも巣を作る。とんだトラップである。

キイロスズメバチ。オオスズメバチよりも好戦的らしい。
http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/kyo/seibutsu/doubutsu/08hachi/kiirosuzume/04.html

 最後にメマトイ。あまり聞いたことのない名前かもしれないが、その名の通り執拗に目にアタックしてくる習性がある。どうやら目の水分を舐めに来ているとのことだが、近くに大量に水があるのになんでわざわざ目を狙うのかは謎である。刺したり嚙んだりしないけど、非常にうざったらしい。ゴキブリやクモは不快害虫として知られるが、こいつもその類だ。

メマトイ
https://ameblo.jp/mariminemma/entry-12475308394.html

対策(実践しているもの)

 ここからはアブ・ハチ・ブヨ・メマトイを遠ざけるために実践しているものを紹介する。試してイマイチだったものもあるが、その旨も記載。

①渓流釣りをやめる(最終手段)

 そもそも虫のいる時期に山に行かなければ問題ないというハナシで・・・、というのは冗談。でも虫が出てきたら渓流釣りに行く頻度は落ちます。一番確実な方法だが、対策ではない。

②長袖長ズボン(全般)

 当然、暑いからと言って半袖半ズボンなどもっての他。できるだけ肌を露出しないようにする。長袖長ズボンは必須である。ただ、季節が季節なので暑いのが問題。ウェットウェーディングで解決できる部分もあるが、脱ぎ履きが面倒なのでドライウェーディングしかしていない。というわけで下半身は工夫しようがないのだが、上半身はやりようもある。

おすすめはこのような羽織れる薄手の化繊パーカー。風通しが良く、日焼け防止機能があるとなお良い。これは船で夏に着るようなピタピタのものでなく、ややルーズなタイプで、肌と生地に空間がある分だけ虫に刺されにくい。また白っぽい色の方がより一層虫が寄り付くなっている。この対策はかなり効果があり、腕の虫刺されは今のところ皆無である。

 また、パーカータイプでなくとも、サラサラした化繊のシャツなども良い。夏用のワイシャツを流用しても良いだろう。

③手袋(全般)

 長袖長ズボンで完全防備に加えて、手袋の着用もおすすめする。手袋をしていなかったがために、手の甲をブヨにこっぴどくやられてしまったことがある。指先まで覆う必要は無いので、指出しグローブが良いだろう。私はホームセンターで買った農作業用グローブの指先をハサミでカットして使っている。

ゴムの部分でカットすればほつれにくい。釣具店で専用品を買うと最低でも1500円程度はするが、農作業用グローブは100均でも買える。山で使っていればすぐにボロボロになるし、どうせ誰も見ていないのでこういう安いもので十分である。

④ゆっくり動く(スズメバチ向け)

 ススメバチが近づいてきた時には動くな、とよく言われる。ただ、個人的には完全に止まってしまうと逆にスズメバチの興味を引くような気がする。何かしらの匂いがするのか、止まっているとエサのように思うのかもしれない。むしろ刺激しない程度のスピードでゆっくり動くと、すぐに離れて行ってくれることが多いように思う。もちろん、近くに巣があるときはその限りではない。

⑤ミント(ブヨ・メマトイ)

 ミント味のタブレットを口に含む。ミントやハッカなどに含まれるメントールが虫よけになるかについては諸説あるが、ある程度の効果を実感している。顔面を狙われるブヨ・メマトイに有効。疲れてきた時の気分転換にもなるし、コストもあまりかからないので下のようなものをタックルボックスに忍ばせている。長持ちタイプでないとあまり効果はなさそうな感じはしている。

⑥サングラス・ゴーグルの着用(メマトイ向け)

私は視界が暗くなるのが嫌なので、上のような伊達メガネをかけている。百円均一で買ったものですこぶる見た目が悪いが、最終手段としているバッグに入れてある。もともと眼鏡をかけているのであれば必要のない装備ともいえよう。

おまけ

 フル装備のイメージ画像をAIに描かせてみた。割とそのへんにいそう、というかいつもの私。

なかなか幻想的な画像になった。

おわり

 まあここまでやってもこんな時期はなかなか釣れない。虫が多いってことは魚も虫を喰っているわけ。フライには絶好の季節だろうけど、ルアーに対する反応はイマイチなのだ。ということは、やっぱり「釣りに行かない」が最強かもしれん。

 虫に無視されるくらい自然に溶け込むことも大事なのだろう。気配を絶って川辺の木となり、木の葉を落とすがごとく静かなキャストを決める。そうすれば魚だって「自然に」釣れるかもしれない。

 嫌な虫であろうが彼らはただ必死に生きているに過ぎない。だからおよそ精巧な機械のように洗練された本能・反射のあるがままに勝手に生き、その上で、生態系という危ういバランスを保つ立派な役割を果たす彼らの行動をとやかく言う権利は我々には無いだろう。有害/無害のラインはあくまで人間側の都合である。自然に踏み入るとき、そのルールに従うほかない。

 ・・・などという考えは実に日本的で、征服・管理主義の欧米人から見たら理解し難いのだろうか。とはいえ私にはやはり前者の方が共感できるのである。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?