詩画集 【深い森】
深い 深い 森の淵
暗闇から目を覚ませば
混沌という深い森
自分が誰かも定かでなく、大地を踏む足さえも頼りなく
只
両の手に収まる髑髏だけが
確かな存在であるように
苔むしたその双眸で
私を見つめ語るのだ
ヒトデナシ
人であったヒトデナシ
思い人はソコニナシ
此処にいるのは
人をやめた
自分迷子の
ヒトデナシ
逢魔が刻
白髪の幼女
ケラケラと笑う
窪んだ双眸
歪な微笑
魂喰いつくす蟲の群れ
戯れ
新月
弔いの道行を
木霊
上げた腕は 何処へ
掴んだ希望は何処へ
見上げた空は
今はなく
明日を夢見る頭蓋は何処へ
嗚呼
この声は何処へ
この虚しさは この憤りよ何処へ
声も枯れ果て
喉も裂け
ただ虚しく
ツラツラと歪にねじれ虚空へと
果てなく
高く枯れて逝く
滴り落ちる
魂
腐敗の情熱
闇の中
身体は溶けて苔へと変わり
形残るは 黒い髪
蛇のように艶やかに
ひそひそ
囁き
執着を編み上げる
ぽたりと呟く
その微笑
眼を亡くした
少女の憂い
深い森
常世の淵に
弔いの花を引き連れて
てふてふと 揺らぐ
魂の休息を
柔らかな肌に 抉れる幹に
寄生するは 慕情か執着か
波打つ髪に 漂う視線
虚空を仰ぎ 涙なく
明日を亡くし
命を落とす
夢想回廊
終わらない
夢を見ましょう
傷つかぬように 醒めぬよに
真実なんて嘘になる
ただ楽しく 幸せを
歪曲した過去に 狂う視界を織り上げて
終われない
夢を見ましょう
覚めれば凄惨な色彩
語る髑髏の口を塞いで
独り
語り
あなたと二人
永劫
隠せばいい
永劫に
見なければいい
囚われて
思考の網で籠を作り
永久に
互いに全て
藪の中へ
明けの明星
天を夢見た 女が独り
翼は落ちて 足は繋がれ
縛られ羽ばたく
混沌の朝日
宵の明星
満月の波紋
堕ちる 陶酔
白い肢体 黒い思慕
深い淵に
飛天の夢
ゆく春
季節は廻り 思いもめぐる
欠けて逝くは
人肌 花びら
溜息 ヒトヒラ
終焉の兆し
春眠
思い出を咲かせて
姿を追って
不要な身体は 溶け戻り
色とりどりの私を咲かせて
溢れ出す恋情と引き換えに
終わりを繰り返し
季節は巡る
かえりのみち
そっと手を寄せ
温めて
誰もいない森の中
ただ朽ち果てた可哀そうな貴女
愛に捨てられ夢に憧れ
夢に落ちて命をなくし
彼岸に至る
かえりみち
女神
大鴉
明けの明星
冥府へ誘う
空虚へ響く
声一つ
あとがき
2017年に初個展を迎え 勢いだけで制作を走り抜けた事を今でもよく思い出します。稚拙な事もありましたが、ただ自分の場所で自分の作品を見てもらう喜びに溢れただその気持ちだけで制作に打ち込めました。
絵を独学で始める前は、小説や詩を制作していて何かを表現し形にする事の楽しさが制作の原点。
思考錯誤して脚本の基礎も勉強しましたが、言葉にこだわりすぎ言葉の難しさに行き止まり。
制作迷子の末に絵を描く事に辿り着きました。
身体を壊し、制作から離れ数年
今ある自分の表現手段をすべて出そう
「全てを失い、天に還り、生まれ変わる」
三年かけて三部作として制作して見ようと密かに思い制作。
最初の個展がこの「深い森」でした。
当時はまだ言葉の難しさに腰が引けて、文章としての表現が出来ませんでしたが数年経った今「詩と絵でまとめてみよう」
詩画集
という形はどうだろうかと思い立ち筆をとった次第です。
当時の制作を過去の画像から思い返し、今の自分と向き合い詩を添えました。
一本の短編のように見て頂ければ光栄です。
最後までお読みいただき、有難うございました。
2023年1月 卯月螢
【個人蔵作品】
「ヒトデナシ」
「木霊 肆」
「深い森」
「明けの明星」
「宵の明星」
過去作品掲載
https://instagram.com/uzuki20133/?hl=ja
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