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かわいそうじゃない。

高校のとき。
英語の先生で、30-40代独身女性がいた。

ちょっとしゃれた感じの人で、わりと話が通じやすく、女子生徒に人気だった。

何かのときに、うちのおかんが「あの人は気の毒だよね」と言った。
地元の人だった。

「なに?」
「親の犠牲になって」
「は?」
「親の面倒見るために犠牲になったんだよ」

何かあったかと思ったら、一人っ子で親のために、独身のまま、家から独立はしなかったから、とおかんは言う。
親が当時としては、比較的高齢でもあったらしい。

「それ何で知ってんの」
「そういう噂」
そもそも、その噂、なんで知ってんだよ。

おかんと世代が近い人だったから、そういうこともあったのかもしれん。
昔のことだし。
女一人っ子では入り婿は難しかったのかもしれん。
まだまだ田舎だ、地域独自の事情もあったかも。

でも、すごく言い方がいやだった。

せんせいは、かわいそうなんか、ではない。

と思った。
けど、自分はあまり喋ったことなくて、先生のことをよく知らない。
授業以外の時間に、他の女生徒たちと笑ってるとこしか見てない。
「何それ」って不満を伝えるくらいしかできなかった。

「先生はかわいそうなんかじゃない。それって、無礼だよ」

言ってやればよかった。
今でもちょっとしたときに思い出す。

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