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王子

治水対策により近年では石神井川が氾濫したと言う話は聞かない。本流は水害対策として飛鳥山の地下を貫通しているバイパストンネルを通り隅田川に注いでいるが、かつての複雑な流れは公園として、また飛鳥山下では音無親水公園として今もその姿を残している。音無親水公園の細々とした流れはJR王子駅の下をぬけて南にカーブし、都電荒川線のホームにそって流れ、トンネルの下を流れてきた本流と合流する。

音無親水公園の辺りは盛り場として賑わっていた時期もあったそうだが、風光明媚の残り香を感じるものの、かつての料亭街は姿を消している。(飛鳥山側には「さくら新道」という飲み屋街もあったのだが、近年の火事により消失している。)

音無川の北側には東京十社の一つ、鎮守であり東京十社の一つとして格式のある王子神社がある。そしてその北側には王子稲荷神社がある。王子稲荷神社は関東の稲荷の総元締ということで江戸時代から尊崇を集めた社だ。王子稲荷は台地の際の崖中腹にあり、歌川広重の「名所江戸百景」にも遠景に筑波山を配した構図の「王子稲荷の社」として描かれている。本殿の裏側には願掛け石の社、そして崖を少し登った先には狐穴という社もある。また少し離れた所には大晦日に各地から集まった狐が装束を整えて王子稲荷神社に詣でたという伝承のある装束稲荷神社という小さな社がある。

その王子稲荷神社の宝物に「額面著色鬼女図」がある。江戸時代中期に当時の元売商組合が寄進した、平安時代の鬼である酒呑童子の家来茨城童子が化けた鬼女の姿が描かれている板絵で、江戸時代の絵師柴田是真の傑作だ。現在は元旦と初午の日だけに公開されている。

石神井川を少し上流に登っていくと近くに大きな公園がある。自衛隊駐屯地に隣接する北区立中央公園だが、その南の端に北区中央公園文化センターという名前の古い建物が有る。これは戦前の旧東京第一陸軍造兵廠本部ということで、昭和レトロの外観を今でも保っている。

スッと流れる青い閃光。カワセミがこの石神井川でも生息するようになった。

(撮影 2022/3)

model;玉井ゆき(X)


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