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七里ガ浜、腰越

湘南なので朝ご飯はコンビニの「湘南しらすと菜飯」のおにぎりにした。

夏なので海沿いは混雑するのは当然として、それを避けての散策。大船から湘南モノレール西鎌倉駅に出て、鎌倉広町緑地という緑地公園を抜ける事にした。鎌倉広町緑地は鎌倉市の西に広がる約48haの公園で「都市林」と謳っているが、かつての谷戸、谷筋がいくつも入り込む森林公園だ。平地エリアはボランティアが田や畑を復元しているが、山筋に関しては森林の様相。谷の崖からは水が出ている。整備された道は泥濘もあるが、春の落葉が覆いかぶさってるおかげで歩きやすい。つまりちょっとしたトレッキングです。

ホトトギス、ウグイス、アオバト、キビタキの声。けたたましいのは外来種のガビチョウ。あと鎌倉といえばタイワンリスの縄張り警戒音もよく聞こえる。7月上旬だからかセミはあまり多くなくニイニイゼミの声、あとヒグラシも少々。ヤブはそれほどでもなく、下草も多くない。手つかずの自然はまあそうなんだが、結果的に常緑樹だけが優勢になる極相化が進んでいて多様性は失われている感じ。都市林における自然の多様性は人の手による撹乱が入っていないと成立しないということも多いのだが、現代の、特に都市において、ヒロイズムに偏った(もしくは反行政施策に偏った)感情的な人が多いのには閉口している。そんな事を考えて不快になっても仕方ないので森歩きを楽しみながら歩くのだが、この森も常緑照葉樹林が優勢になっており林床に日が差さないので花も少なく、ツユクサが咲きだしているくらいか。時々獣の匂いがするのでハクビシンとか狸もしくは猫、あるいはタイワンリスだろう。藪蚊はまだそれもど多くないのだが、立ち止まると刺されそうなので歩みを止めないでおく。公園の外周はすぐ隣が住宅地、車の走行音や住宅の2階から聞こえてくるピアノの音、子どものはしゃぐ声生活音がする。坂を登りきりった先の尾根を少々歩いて富士山の眺望ポイントまで到達した。富士山の方向だけ枝葉が取り除かれフレームのようになっているのは管理のお陰だろう。ただしこの時は真夏ということもあり、昨夜の熱波のせいでモヤがかかっている。それでも少し休憩をしているとモヤが流れ始め、うっすらと富士山が見えて来た。これも日頃の行いであると自画自賛する。

休憩した場所は行き止まりなので来た道を少し戻った分かれ道を逆側に、海側に向かうと公園の七里ヶ浜出口に出た。林内は風が通らないのでとにかく暑かったのだが、公園を出て七里ヶ浜の住宅地に入った途端、風が通って気持ちいい。流れるにまかせていた汗も少し引く、潮の香りがする風である。公園の南側は海食崖の上に住宅地が広がっている。住宅街は各家に高級車が止まっているのだが、時折原付バイクがありそのほとんどはサーフボード搭載仕様になっているのを見かける。住宅街の下は七里ヶ浜になるのだが、浜に向かう道はどれも急峻な坂道、もしくは階段になる。車道よりも人や自転車専用の道が多い。住人の若い女性は急坂をものともしないで下っていく。坂を降ると波の音と共にR134の車の喧騒も聞こえてくる。遠くで踏切の音が聞こえ、しばらくすると江ノ電がモーターの音を唸りながら通り過ぎていった。線路際、間近で見る江ノ電は迫力がある。

少し歩いて鎌倉高校前の踏切に出た。ここはピンポイントで人が多い。江ノ電の駅からは電車が到着するとどっと人が降りてくる。ほとんどが外国の方、それもアジア圏の観光客なのだが、周囲にコンビニすら無くインバウンド特需を回収できていない。交通指導員の方が独り、車と人を捌いているが時折通る車にクラクションを鳴らされている観光客もいる。

駅から続く細い階段を上がれば再び住宅地になる。住宅地をすぎれば腰越に近づく。腰越の海に突き出した半島にある神社が小動(こゆるぎ)神社である。ちょうど本日(7/7)が祭礼の日だったのか、参道には提灯の飾りつけが行われ、境内では神輿が引き出されていた。午後からは本格的に祭礼が始まるらしい。参道を戻った先の沿道では各エリアで準備が行われていた。この腰越の天王祭というお祭りでは人形山車というのが引き出されるそうで、各地区で展示されている人形が山車にのせられ巡航するとのことだ。

腰越の先が龍ノ口。鎌倉幕府の処刑場跡としても知られている。崖の前が刑場だったようで、これは江戸幕府の初期の刑場、例えば札の辻の刑場が崖の前だったことを考えると、パフォーマンスとしての場、つまり正面が必要だったからではないかと思う。(京都では五条河原や六条河原などの河原だったのは川を背景にできるからだろう。)

鎌倉時代に派生した日蓮宗の宗祖日蓮が幕府や諸宗を批判したとして捕縛され斬首されようようとした時、江ノ島の方向から光の玉が現れて執行人の振り下ろした刀を折り、日蓮の首を刎ねることができなかったという伝説(このためこの龍の口には日蓮宗の龍口寺がある)、また元寇の前に来日した元の使者一行の処刑や、鎌倉時代末期に足利尊氏らと対立し「中先代の乱」で各地転戦を重ねた鎌倉幕府最後の得宗の子 北条時行が足利方に捕縛され処刑されたのも、この龍の口である。

龍の口からは湘南モノレール「湘南江の島駅」、江ノ電「江ノ島駅」は目と鼻の先で、目抜き通りである「すばな通り」を進んだ先は江の島である。メディアの映像でもよく取り上げられる東浜などは海の家が立ち並ぶ。それ故に水着で歩き回る人が多いのも夏の景色だ。ならばこちらも冷えたビールを頂こうか。



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