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こっそり すこし ひっそり ふしぎ

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対旋律の心臓 第2話

お焼香の列も昼のかき入れ時を過ぎたかの様に減っていた。疲れと緊張の緩みの中、僕は気を取り直してお焼香をあげる人に目をやる。 また違った意味で普通では交わる事のなさそうな人が。庶民の匂いを一切持たず整った顔立ちの色白な女性が、なんの感情も見せずお焼香をあげている。 その光景は、黒と白の幕の背景に溶け込み、水墨画で描かれたアオサギ。 僕がこの女性をここまでしっかりと見ていたのは、何よりスカートが短かったからだと言う、男性らしい理由だ。男の性だ仕方ないと気にも留めなかった。

    • 対旋律の心臓

      影はない。 どっちが西でどっちが東かわからない。 ネズミ色の世界に、 黒い傘と透明な傘の 色を失くした紫陽花の群れが、 次々と吸い込まれていく。 何日続くのか。風もないままに。 窒息しそうだ。 じいちゃんは、よく「死んだ時の天気は、その人の生前の人柄を表す天気になる」と言っていた。 そんな言葉を思い出したのは、隣に座る親父がぼそっと言った言葉でだった。 「親父が言ってたことハズレたな」 あの人には雨なんて似合わない、 聡明でいつも穏やかな表情。 そんなじいちゃんには秋

      • social distortion

        • 眠れない夜にぼくはシニカルドライブ

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