第146回 半鐘が鳴るとき

1、機能を失ったものの末路は

唐突ですが火の見櫓って言われてピンときますか?

木造建築が主流の日本では火災に対する恐れが強く、早期発見や消火に対する指示などのために高いところからの視点が必要とされました。

江戸時代から用いられ、最上部には半鐘というカネで周囲に緊急事態を知らせることができるようになっていました。

昭和初期には広く全国に整備され、やがて行政無線のスピーカーに取って代わられ、電話による緊急通報も一般化したため急速に役目を終え取り壊されて行くことになります。

2、これまで見てきた風景の中で

地域の歴史的景観の一つとして守り伝えてために、登録文化財としている地域もあるようですが

わが町では確認できたものは大小合わせて3基に止まります。

これは県内の他地域と比べて多いのか少ないのかはまだリサーチ不足ですが、

私が生まれ育った仙台の新興住宅地には見られないものだったのですごく気になります。

そういえば学生時代を過ごした茨城県の筑波山の麓の古い集落、小田や北条という地域でも見かけたような記憶があります。

私の中には歴史ある地域の景観にはよくマッチするものとして印象づけられています。

我が町では、地域でもあまり重要視されているわけでもなく、逆に老朽化のため取り壊しを求める声が聞こえてくる程です。

もちろん住民の生命・財産の安全は最優先でありますが、取り壊されるのであればしっかりと記録するとともに、地域の方々に価値を知ってもらってからお別れしたいところです。

3、未来の景観を考える

火の見櫓の価値を知ってもらうために参考になるのが専門家の方の研究成果。

例えば、常葉大学の伊達剛氏の論文では、静岡県内の火の見櫓996基を紹介する展示を行ったことや、

日本ユネスコ協会連盟もまたその価値を認め、2016 年末に地域の豊かな自然や文化を 100 年後の子どもた ちに残すための活動に対して贈る『プロジェクト未来 遺産』に、「火の見櫓」に関する活動を登録していることなどが紹介されています。

さらには形態分類から地域性を見出すなどまさに考古学的手法で研究もなされており、他地域での調査の参考になるものです。

活用といった点からもまちづくりにどう活かせるかと実践的な取り組みを行なっておられます。

失われていくものをただ惜しむのではなく、なにか波風を起こすのも地域の学芸員の仕事なのでしょうか。

#火の見櫓 #歴史的景観 #昭和の文化財 #機能 #文化財を活かしたまちづくり



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