第95回 史跡整備も意識改革が必要

1、史跡の中でプール?

秋田県横手市の市民プールが再開できないのは文化財のせい?

というニュースが飛び込んできました。

実はこのプール、大鳥井山遺跡という国の史跡の中に作られたものだったのです。

この遺跡は今から1000年ほど前の地方豪族の城跡で、巨大な二重の堀と土塁という高い防御性を持った城がこれほど古くから存在していた、ということで注目されています。

壊れた排水管を直すには地下を掘らなくてはいけません。しかし国の史跡であれば、保存に影響を及ぼす行為は認められません。

もはや直すのではなく、新たな場所にプールを作るしかないのでしょう。あとは政治家が決断するだけ。

2、文化財の位置付け

文化財は国民共有の財産であり、保存を図るべきことは反論の余地はないでしょう。

それでも現に生きている人のことを考えなくてはいけません。文化財だから直せないのであればその場所を選定した方のセンスがなかったのでしょうね。

戦後が遠くなり、組織で決定権を持つ人ももういい大人です。当時の正解が現代の不正解になることだってあります。

わが町の史跡公園も、縄文時代の貝塚の雰囲気を出すために、民地との境界に樹木を植えて目隠しをしていました。

その趣旨は分からなくはないのですが、整備から30年が経過して、樹木は繁茂し、

落葉が迷惑だとか、眺望が悪いとか、虫がついているとかの苦情が多くなっています。

国の史跡なので簡単に伐採することはできませんので

剪定をしながら調整していくしかありません。

維持管理費が毎年高くなってきています。

本当にこれでいいのかと疑問に思いながら業務に当たっています。

文化財担当ですら疑問に思うのですから関心がない人からみると、文化財はお金ばかりかかる、と思われて迷惑がられてしまいます。

3、今できることは

私たちのできることは、維持管理費用に見合った活用が図られるよう、努力していくしかないのでしょう。

幸か不幸か国の流れも

文化財は保存から活用へ

と強い圧力をかけてきていますので、それにうまく乗った自治体は生き残り、そうでない自治体は見捨てられていくのでしょう。

一時期話題になった某官僚が

座右の銘は面従腹背

とおっしゃっていましたが
文化財を守りつつ、活用を図って、その重要性をアピールするというサイクルを回していくためには、時としてそのような態度も必要だと本当に思います。

といいつつ私はどうかというと、頭が固くて、すぐ反発してしまうことばかりですので、なかなか実践できない日々です。


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