第65回文化財指定の話

1、導入

昨日世界遺産登録の話をしたので

今日は文化財の指定について思うところを整理してみたいと思います。

我が国では文化財保護法により、特に価値の高いものを国宝、重要文化財として指定することによって、保護を図っています。

例えば国宝だけでも1000件以上、重要文化財を含めると1万件以上あります。

これに各都道府県の指定、市町村の指定を含めれば途方もない数になります。

2、指定されるには

国宝、重要文化財の場合には国が設置する諮問機関、文化審議会にはかって価値が判断されます。

地方自治体も同様に専門家からなる審議会が設置されてそこで認められれば指定、ということになります。

国宝重要文化財に指定されるには普遍的な高い価値が必要になるでしょう。

重要文化財には及ばないけれども価値の高いものは県指定に、そこから漏れたものが町指定に、というのが一般的な理解になるでしょうか。

3、課題

ただし、この理解には問題もあると思います。

一つには指定されないものは価値がない、と判断されてしまうことです。

お寺の御本尊様が秘仏で学術的な調査が及んでいなければ、古くて貴重なものであっても指定されていませんし、

皇室関係のものはあえて指定されていません。教科書に写真が載っている正倉院宝物であっても皇室の財産であるために未指定になっているのです。

時代が変わったことで理解が進み、新たな枠組みとして価値を見出せることもあるでしょう。無形文化財や文化的景観がその例です。

それ以外にももっと根本な問題だと思うのは価値のあるなしを誰が決めるのか、ということです。

古いかどうかだけが基準にもなりません。

お寺関係で説明すると建造物や梵鐘などは江戸時代のものでも指定を受けることが多いですが、仏像は古いものがよく残っているからか、江戸時代のものでも未指定はかなり多いです。

また、現在でも地域で大事にされているとか、他の地域に持っていっても価値はなくとも、この地域の歴史を語る上では大事な資料だったりすることは多いにあります。

地方の文化財保護条例に付随する文化財指定基準は国の基準をそのまま引き写していることが多いですが、本来は地域の特性にあった取扱いが不可欠だと思うのです。

芥川龍之介の初版本はもちろん価値がありますが、芥川本人と縁がある土地だったり、芥川と深い交流があった文化人が土地に住んでいた、

そういうストーリーがないと町の歴史にとっては価値のない資料となり、指定を受けるに値しないと思うのです。

この辺りの考え方は反対意見もあると思いますがいかがでしょうか?

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