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団地の魅力に取り憑かれて

一人暮らしを始めて7年。
団地に住み始め4年の時が経つ。
二十歳の時に東京都中野区落合のアパートに引っ越し、翌年に墨田区両国、翌々年には世田谷区経堂、そして二十代半ばで田舎の団地で暮らし、
現在の住まいに移り変わった。

以前から飽き性だと公言しているが、
7年で5回引越しを繰り返していることから顕著に出ている。

学生から社会人になる時に、東京で一人暮らしをすると決めていたので職場近辺の不動産屋に足を運ばせた。
最初は乃木坂辺りに住もうとしたのだが、家賃6万5千円の賃貸は独房のようで深夜には心霊現象が起きそうなオーラだ。
いや、あれは必ず出る!!!
首がない女が必ずだ!!!!!!

早々に社会の厳しさを見せつけられた私は、中野坂上にあるお洒落なコンクリート調の半地下を選んだ。
両親に承諾を得ようとすると
「あんた半地下なんて陽が当たらない場所で暮らしたら死ぬわよ!」と母親は死の宣告を告げた。
面倒になった私は物件探しを親に押し付け、
勝手に選ばれた場所は中野区落合の築30年、1Kユニットバス、南向きに面しており陽が顔面に照りつけすぎる様な部屋だった。
両親が初期費用を払ってくれたという事もあり文句を言えず渋々2年間住んだが、おかげ様で光合成が足りたので死なずには済んだ。

社会経験も豊富になってきたのでそれ以降は自分で物件を探し、必須条件で風呂トイレ別と独立洗面所を選択した。
なぜなら、ユニットバスに張り付く髪を掃除するのが面倒だったのと、寝癖を整えられる独立洗面所に憧れ若者にしては贅沢すぎる築浅物件にした。
家賃は以前より1.5倍増しになったが、
大多数の男が大金を払う趣味(酒、女性、ギャンブル)に興味が無かったので割高な家賃には目を瞑ることにした。

それからほどなく東京の生活にも飽きてしまい漠然と田舎暮らしに憧れた。
広大な自然がある田舎で、大きな家に住み、天気が良い日には縁側でお昼寝しながら近所を気にせずウクレレを演奏する。
というベタな理想を思い描き田舎に移り住んだ。

だが、家を決める段階で早々にキラキラ理想は打ち砕かれた。
まともに住める家がほぼ無いという事実に!!!』

空き家の数はそれなりに多いのだが、
「トイレが無い」「お湯が出ない」「白アリが沸いている」「雨漏りがある」「蛇の死体がある」「家主の荷物が大量に置いてある」
などなど、物件サイトの条件欄に一つでも入っていたら絶対に選ばない賃貸が平然と並べられており、「綺麗な家に住んでいる人はお金持ちなんだな」と私の夢は儚く散った。

だだそこで潔く諦められる男じゃない。
仕事は決まっていたので泣く泣く社宅の団地に引越し、生活しながらお宝物件を探すというシフトに切り替えた。
現在でこそ団地への愛は強いが当初はというと、
「こんなオンボロ団地ぃ!!すぐに抜け出しぃ!!新たな家住みぃ!!」と闘志剥き出しのラッパーの様だった。

私が始めて住んだ団地は築50年以上の2DKユニットバス。
もちろん追い焚きや浴室乾燥機能も無くなった。
一つの団地に四つしか部屋が無いのに【〇〇団地】と名付けられていて
「それ団地じゃなくてアパートじゃね?」という疑問はさておき、生活する上で日常茶飯事ぼやきはあった。
上階の笑い声は聞こえるし、プロパンガスだからあり得ないガス代請求されるし、真冬にお湯が出なくなるし、毎日玄関にデッカい蜘蛛の巣が作られててムカつく。
蜘蛛の巣に違う虫が引っかかってるのもムカつく。
その蜘蛛が家に入ってくるのもムカつく。

とりあえず手のひらサイズの蜘蛛がきもい!!
ムカつく!!!!!!

だが半年経ったある日、この団地暮らしが嫌でないことに気がつく。

昭和チックな作りではあるが生活しやすく、インテリアも妙に馴染み心が落ち着くのだ。
この感覚はあれに近い。
お婆ちゃん家だ。

お婆ちゃんの家はなぜあんなにも居心地が良いのか。
自動的にお茶と煎餅が出てくるからか?
コタツが標準装備であるからなのか?
それとも、α波でも流れているのか?
α波が流れているのなら宇多田ヒカルが常に歌唱していくれてる様なもんだ。
宇多田ヒカルの声はα波という自然音や母親のお腹の中などそのetc.…
まあそれはそうとして、団地は家賃も安く部屋も無駄に広い。
YouTubeで部屋紹介動画を撮った時に「良い部屋住んでますね!」というコメントが多数寄せられ更に愛着が増した。
単純な野郎だぜ。

私はいつの間にか、田舎で理想の大きな家を探すことを辞めてしまい
「バストイレ別」「独立洗面所がある」「トイレにウォシュレットが取り付けられる」というグレードアップした"レベル2団地"を目指し、より一層個人での活動に身が入った。

そして、2022年1月。
その夢は叶い現在の住まいに移った。

1964年の日本は東京オリンピックが開催され経済成長が著しく、家賃の高騰が激しかったとされている。
公団団地は家賃を値上げされない、堅牢な作り、近代的な設備が人気を呼び入居時期には注文が殺到し抽選なども行われていたらしい。
そんな高貴な団地に抽選する訳でもなく東京の家賃の半分で居住している。
しかも住んでいる方は、お年寄りばかりなので穏やかな気持ちだ。

田舎の大きな家の縁側は手に入らなかったが、毎朝ベランダのリクライニングベンチで天を仰ぎ、太陽に額を見せつけ挽きたてのコーヒーを飲んでいる。
これ以上の幸せはない。

いや、、、、、、、
あることにはある。

「柴犬と暮らしたい」

次なる目標は、ペット可の団地に移り住み柴犬と暮らす。
これが”レベル3団地”だ。
それか、α波が流れているお婆ちゃん家みたいな
一軒家を見つける。

いつになるかは皆さんの応援次第です。



いや自分の頑張り次第か。


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