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『歌うこと』はもっとも苦手(どうかすると嫌い)なことだ。
シンガーソングライターとして失格というか、あるまじきというか。
そもそも歌が好きではじめたわけではなかった、バンドが解散してその間の繋ぎとしてやっていくだけのつもりがいつの間にか今日を迎えた感じ。『歌う事が好き』とか、『そもそも歌がうまかった』とか死ぬほど憧れている。そうなりたかった。そんな理由で半端にこの世界に足を突っ込んでいるような気がしてずっと後ろめたさがあった。だから好きな事で広げていったつもりだった、そこで戦わなくていいように。戦っても毎度惨めな思いして負けてしまうしさ。ギターを弾くこととか、企画をだれよりもするとか、誰よりも遠くに行くとか、とにかく現場至上主義、現場のことわかっていようみたいな。それが今日までの僕を作っている。でもずっと自分の中での引っかかりが解消できなかった。苦手なことを抱えたまま逃れることなんてできないのだ、見向きもしないでそのままにしていくことなんてできない。それに意識をいつも持っていかれる、どれだけ満足するほどのライブを遂げても熱が収まったあとにくる靄、ひっかかり、違和感。

そして、いくつもの街、いくつものアーティストのライブを見てきた。自分たちの2ステージくらいのうえをいく人々のステージは本当の意味で時間をお金に換金できるくらい美しい。何度もその声に心を震わされ、その現場を掌握して魅了していく。自分のやっていることが世界観と銘打ったママゴトのように見えるほど鮮やかだ。そこに行きたい、行くためにはどうしたらいいんだろうって悩むこともなかった、気づいていたちゃんと。眼を逸らしていた部分と向き合わなければいけない。もう何度も逃げてきた、一度や二度立ち向かおうともしたけど逃げてきた。いま目の前に無限の時間が溢れている。次の旅に向かうためにはそれらを修得しないと切符をてにいれれないような気がしている。歌う事、好きってどんな気持ちなんだろうと自分なりにこのコロナ騒動期間中に調べたり、研究してみたり、偉人たちの音楽に触れてみたり。

驚くことに、調べた結果基礎がひとつもできないことが発覚した。自分は基礎という土台もなく芸を披露していたわけで気持ち一つで乗り切ろうとしていたのだ、現実を突きつけられた。みんなとよーいドンの時点で心を先に磨いていただけに過ぎず、音楽というより音楽に向き合う心構えみたいなプロローグであり、ガイダンスを今まで繰り返していたのだ。まわりのすべての人間が記憶する限り少なくともこの土台はすでにクリア(自然にできているかor練習して身につけたか)している。圧倒的な差に愕然とした、今回の壁はかなり高い。

できなかった指弾きも、握れなかった複雑なコードも、いつの間にかできていたように、歌うこともできるようになるのか。でも今回ばかりはもうわからない、迷い事かもしれないけど、自分が行き着いた事実とまずは向き合った。正直かなり凹んでいる。けどこれを書き綴っているのはただの痛み解説日記ではない。その途方のない壁への登頂への大一歩を踏み出している自分の現状の記録。正直くじけそう、禁煙できないのと似ていてこればっかりは毎度逃げてきたからちゃんと目標に辿り着けるのかわからない、ゲームみたいにこのスキルメーターが一杯たまったらレベルアップみたいな指標はない、たどり着くのがいつになるかもわからない。

でもあのメロディーの海を早く泳げるようになりたい。

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