『三体』を読んで

遅ればせながら三体(三部作+X)を読みました。とても面白かった。
思えばwebに載っていた冒頭部分を読んでから何年たったんだろう
電子書籍を積ん読(?)していたのですが別のSF(アンディ・ウィアーさんの作品)をいくつか読み終わって次何読もうかと思っていたら、なにやらドラマも始まったらしいし、と、読み始めて、読むのが遅い自分でも1か月で読んでしまいました

言わずと知れた中国のSFで、すごいらしいのは知ってたけど2015年にヒューゴー賞を取ったというのは読み初めて知りました。
というか、最初読んだときは何やら科学者の人がいなくなるところから始まってたのでいきなり文化大革命の話で始まって面喰ったり。

とりあえず読んでみて気になったことをメモしておきます。
既に答えが出てることも有ったりするかもしれませんが、その時は優しく教えてください。

どこの国の人?

中国の小説なので、中国人が多く出てくるのは当然で、サイエンスフィクションなので科学技術が進んでいる国の人が多くなるのもまあ妥当性はあると思うのですが、それにしても偏ってるなあと思いました。
一番思ったのがインド人と思しき人が出てこない。執筆されてた2000年くらいでもインド人は中国人と同じくらいの人口だったと思うし、今年は世界一位の人口になったのも皆が知ってる。先進的な科学技術の発展は遅れているかもしれないけれどIT産業を支える人材はいるし、出てこないのは不自然さを感じる。場面として良く出てくるアジア艦隊にはインド人はいないのだろうか?
人口の比率からすると現在の世界人口80億に対して中国人は10億人、インド人も同じくらい。ちなみに日本人は1億人と少しなので60〜70人に一人くらいの割合になるけど、ちょっと登場は多いような気がします。
https://ecodb.net/ranking/imf_lp.html

素粒子物理学

サイエンスフィクションの物語なので今の科学の延長で物事が進むのですが、今思っている物理法則や倫理観が成り立たないというところも大きなテーマとなっている気がします。
社会的な抑圧で事実が捻じ曲げられる、だけでなく根本的な法則まで捻じ曲げられるし、黄金律である「他人にして欲しい/欲しくないことを自分からせよ/するな」という人が培ってきた倫理観が宇宙ではどうなるのかということも語っているように思います。
しかし科学者は実験結果が物理法則に反するだけで姿を消すのか?というところはいまいち納得できない所でした(最後の方にその言及もほんの少しありましたが)
自分が素粒子物理学をよく知らないことも有って、中国の素粒子物理学はどれだけ進んでいるのかもよく知らないのですが、数学とか他の分野では外国籍ではあれ有名な方が何人もいるように思いますが、素粒子物理学方面で有名な人を良く知りません。ちょっと検索すると下記のような記事も出てきて何か素粒子物理学に対して思うところがあるのかなと勘ぐったりもしました。

三体人について

三体人の生態について、本文中で語られている主なことは、環境が厳しい状態になると脱水という工程を行って乾燥体になり耐え忍ぶこと、意思伝達がそのまま伝わること、雌雄の別は存在して生殖は合体することで分裂すること、次世代にも合体前の個体の記憶が残ること、と言ったことで、これらの特徴は作品中の地球人にも知られるようになります。
中でも特徴的なのが脱水の生態です。この生態で自分が真っ先に思いついたのはクマムシ。意思伝達がそのまま伝わることで思うのはフェロモンでの意思疎通。生殖は合体後の分裂。ここら辺から三体人は環境に耐えられるアメーバのような不定形の生き物を想像していました。
不定形の生き物はそんなに脳の容量は大きくできないから小さい個体がいくつも集まって大きな頭脳になること位までは推論できたのではないかと思うのですが、そういった言及がないのも不思議に思いました。
だからと言って地球人がそれに対抗する手段は思いつかないので書いてないだけかもしれませんが。
また、友好的な三体人がいたことは、地の文章で語られてもいたので事実ではあると思うのですが、それに愛しての伏線回収がなされなかったように思います。
個々人での意思を持つ三体人は一定数いることは分かっているので、彼らがどのような社会的、種族的、な影響が有るのか。進化にどんな影響が有るのか、ちょっと知りたいなあとも思いましたが、生態も違う者同士は分かり合うことができない、という物語でもあるので過ぎた思いですね。
「X」で少し語られていたのは面白かったです。

曲率推進について

曲率推進を三体人は知っていたのか。旅の途中で地球人の文化の影響もあって開発できたのか?というのも三体人に対する興味の一つです。
実は地球人からの文化的影響などはなく、元々知っていて、一度三体星系近くで実験してしまったのが外から見つかってしまうことに気づいて、見つからないために十分離れてから発動を始めたとも考えられる気がします。

水滴について

水滴の非物理的な動きについての説明がなかったように思います。
曲率推進で動いていた、のだとすると空間に痕跡が残るはず?
形状の比喩はIphoneなどのアップル社製の工業デザインの比喩にも思えたり。

言葉のニュアンス

とても細かい事なのですが、「虫けら」は中国語ではどのような意味なのだろう?
そういった意味感や地球人にどのような意味感で伝わるかを三体人は理解できるのだろうか?といったことも気になりました
中国語-英語-日本語-三体人の感覚 といういくつもの壁がどのように意味を伝えているのか、変質させているのではないか等々考えることが少し面白かったです。
意味合いとしては、カウントダウンが写真に映し出された意味がどのように理解されていたのかも、後から気になりました。
物語的にはサスペンス要素として効果が高かったと思いますが。

智子について

智子によって秘密が無くなった世界はscpー3125を思い起こさせるなと思ったりしました。
アンドロイドの姿が日本的なのは、三体人が地球文化の模倣をすること=日本の文化が中国の模倣だと思っていることを暗に語っているのかもしれません。「X」での記述はさらにそれを裏付ける気がしたり。

繰り返し

物語の最後では繰り返す宇宙もテーマになっている気がします。
自分は『火の鳥』を思い浮かべましたが。
ちなみに「三体X」で言及されるエンドレスエイトは2006年でしょうか?作中の登場人物は見れるチャンスはあるのかどうか調べてみても面白いかも
ちなみにエンドレスエイトは同じ時間を繰り返す中にも、ほんの少しずつ違いがあって、それを観測し続ける存在がいるのが良いと思ってます
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%82%82%E3%81%AE


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