名前のある感情、ない感情

日常の中で、心の機微に触れる瞬間がある。
それはピンからキリまで様々で、
古いおもちゃが道端に落ちている時だったり、田舎で大きな伝送線を見た時だったりする。

その感情は、幼い時の感情と一瞬にしてシンクロするような感じで、暖かさや悲しさといった雰囲気のものだ。

自分の中でその感情には名前をつけずに
「不思議な感覚に陥る」と表現して
なんとなく大切なものとして扱っている。

世の中にはその感情に対応するような言葉がいくつかある。「エモい、切ない、ハッとする、心揺さぶられる」などなど。しかしそのどれも、なんとなくしっくりこない。

と、これまでは思っていた。
最近は少し考え方が変わった。

自分はこの感情に名前をつけないことで、少しでも特別な、オリジナルな自分でいたいだけだったのかもしれない。
周りの同じくらいの年齢の人は、感情に名前をつけて、ドライに表現していただけなのだろう。

それでもやっぱり、名前をつけることで、感情ごと失ってしまう、そんな気がしてしまう。形容詞には定義があって、その定義からはみ出る部分は無慈悲に削ぎ落とされてしまう気がする。

もうしばらく名前のない感情を大切にしたい。


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