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帝国の闇を斬り裂く一刀たれ!!リィン・シュバルツァーの数奇な運命         

 軌跡シリーズ人気キャラ投票において堂々の1位。我らが主人公リィン・シュバルツァー。
なぜ閃の軌跡シリーズは面白いのか?それは何と言っても彼の魅力と、彼と共にプレイヤー自身も成長していく、そんな物語への没入感が成せる技。
今回はそんなリィンという男に絞ってお話してきます。

“灰色”の男

 まずはリィンの性格についてのおさらい。
黒髪、刀、真面目、朴念仁、愛が深い・広い、面倒事に巻き込まれるタイプ、謎の力を持つ…
リィンを一言で表すなら「王道の主人公」。見ていて安心するといいますか、まさに「人格者」という言葉がピッタリでしょう。
それに加え、シスコン、自己肯定感や自尊心が低い、自分を犠牲にしてまで仲間を助ける、などの弱点…いや「愛嬌」も備えています。
完璧に見えてそうではない。達観しているように見えて危うさも感じる。人格者なのに自尊心が低い。そんな「表裏一体」「陰と陽」の要素が彼の魅力の正体なのです。

彼の中に眠る“闇”との対峙

 幼き頃から自分の中にあった得体の知れないチカラ。リィンはずっとそのチカラに悩み、畏れ、そのチカラを抑えようと足掻いていました。
もしかしたら大切な人たちを傷つけてしまうかもしれない。自分を制御できないかもしれない。その“チカラへの畏れ”“後ろめたさ”こそが自尊心の低さを生み、無意識に能力を抑えてしまうことで剣にもそれが伝わり、鍛えた技もどこか本領を発揮できないのでした。

言い換えれば彼は「痛みを知っている」
更に言い換えれば「他人の痛みも分かる」ということでもあります。

そんな「自尊心の低さ」「痛みに気付いてしまう優しさ」「自分を犠牲にしてまで誰かを助けようとする」
そんな“いびつ”な形として表れているわけです。
身を挺して誰かを助けようとする。それは本来褒められて然るべき行為なのかもしれません。親が子を守るように、反射的にそのような行動に移ることもあるでしょう。
しかしリィンはまだ若いですし、親でもありません。咄嗟的に、まるで自分がどうなっても良いかのように、何の躊躇もなく行動に移すのです。

「自分の身も守れずに何が人助けじゃ」

剣の師からも言われたこの言葉は他の誰でもない、リィン自身が一番理解していることでした。

「兄様は大切な人たちのことをそんなにも想っているのに…どうしてそれと同じくらい兄様を想ってくれる人たちがいると分からないんですか…?」

妹から言われたこの言葉は、リィンの心に浸透したことでしょう。

やがて彼は気付きます。「自分は想われているんだ」「自分なんかが想われても良いんだ」「この“暖かいもの”を素直に受け取って良いんだ」「自分は沢山の人たちに支えられていたんだ」
その瞬間、彼の中に眠る“闇”は光を纏い、融和され、そのチカラを制御するまでに至ります。

日本ファルコム/閃の軌跡2より

無明の闇を斬り裂く刹那の一閃

 彼の凄いところは闇を抱えながらも光を諦めないこと。そして“縁”を大切にすることでしょう。
本来なら過酷な運命を前に投げやりになったり、心身を壊したり、最悪その一生を終わらせたりするかもしれません。
しかし彼は「ただ、ひたすらに前へ」と進み続け、足掻き、僅かな可能性を手繰り寄せることを決して諦めませんでした。
そうして彼は自分自身と向き合い、そして乗り越え、一つの到達点へと辿り着きます。
つまり剣聖リィン・シュバルツァーの誕生。
彼が修める八葉一刀流における、栄誉にして称号。皆伝者に与えられるその称号を得たものは弟子を取ることも可能となります。
物事の本質を見抜き、更にそれを実行する「理」(ことわり)に至ると言われている一つの高み…。
こうして鍛えられてきた、そして彼が紡いできたが、ついに闇を斬り裂いたのです。

日本ファルコム/閃の軌跡4-THE END OF SAGA-より

まさに一閃!!「閃」の軌跡のタイトルの如く見事な太刀筋。
数多の想いと魂を乗せたその一閃が彼を「真の英雄」へと導きました。
そして闇を切り裂いた直後、父オズボーンとの最後の会話。

「己を捨てて他を活かすのではなく、己も他も活かすのを最後まで諦めるな。」

 この言葉は閃の軌跡シリーズだけではない、全ての軌跡シリーズに通ずる「答え」とも言えるセリフでした。
自分も周りも救われるそんな最大幸福。一人では無理でも同じ魂を共有した仲間とならそれが出来る。そしてそれを諦める道理も理由もない。
そんな日本ファルコムさんの強いメッセージだと感じています。

閃光の行方

 ここからは続編「創の軌跡」の内容です。
帝国、いや、ゼムリア大陸そのものを仲間たちと共に救い平和を勝ち取った英雄リィン。闇を切り裂いたことで彼の中にあった負のチカラはなくなりました。しかしそれは、負の要素が消えただけでチカラだけは残った状態。そのチカラを使いこなすために、あともう一段階乗り越える壁がありました。
それが「トラウマ」です。
この得体の知れない負のチカラに翻弄され続けてきたリィンにとって、この壁を越えることは決して容易ではありませんでした。
消えたはずの負の要素。しかし確かに感じる“それ”は新たな自分との戦いを予見していました。
そして、予想外の形で現れた自分自身。リィンは再び己と向き合うことを余儀なくされます。

「俺の中には畏れがある。俺は……この力に振り回されてきたのかもしれない。」
「だが俺は……この力を“否定できない”」
「何よりも彼らが紡ぎ、残してくれた力」
「一は全、全は一」
「そう、俺は全てと繋がっている……ならば……」
「いかなる時も自分を失うことなどない。どんな姿の俺も俺なのだから。」

 自分の中にある負の要素。物理的に無くなったとはいえ、リィンにトラウマという形で残ったそれすらも受け入れる
否定しても始まらない。負も己が糧としていく。
そんな決意と覚悟が、彼を更なる高みへと押し上げます。

「冥我 神気合一!!」(冥き我と共に)

およそゲームとは思えないほどの深い心理描写。彼はこうした自分自身と向き合う描写が非常に多く、それが結果的にこの作品を精神性の高いゲームへと昇華させているのです。

行き着く先

 彼は邂逅したもう一人の自分に言い放ちます。

以前の俺は……そうやって、ずっと一人で抱え込もうとしていた。
自分の身になにがあろうとも他のみんなを救えればそれでいいって。
でも、本当は救えてなかったんだ。
俺のことを想ってくれる……俺のために泣いてくれる人たちのことは。
あの《黄昏》の引金を引いた俺なんかが幸せになってはいけないと思っていた。
いや、今でもどこかでそう思っているもかもしれない。
でも、資格がどうこうの話じゃない。
俺は幸せにならなくちゃいけないんだ。
人は一人では幸せになれないから……
そして、一人だけ不幸でいることもできないから……
大切な人たちに幸せになってもらうためには、まず俺が、幸せにならなくちゃダメなんだ。
それが……今の俺にとっての一番の目標かな。
だからもう、一人で背負ったり、抱え込んだりしない。
自分と大切な人たちを__そしてまだ見ぬ仲間たちを信じて前へ進む。
たとえこれから先、再び強大な悪意が立ちはだかっても……
俺たち全員でなら、きっとより良い結果を勝ち取れるはずだって。

 これがリィンが行き着いた先。
「俺は幸せにならなくちゃいけないんだ」この言葉を聞くためだけに閃の軌跡をやってきたかのような、彼の成長を感じる最高の言葉でした。

 現実世界にも蔓延る負の感情。それを否定するのではなく受け入れ、成長の契機とする。軌跡シリーズから学べることは非常に多いです。
これからの軌跡にも、これからのリィンにも期待したいところです。





 







 











 

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