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「クラシックバレエにおける王子様はなんとなくクズ」

という説を押したい。

高校生までバレエを習っていた。およそ10年くらい。
趣味の範囲だったので大して上手でもなければ、コンクールに出たこともない。
でも身にはなっていたようで、前職(携帯ショップスタッフ)のときに「お辞儀が綺麗」と褒めてもらったり、バレエを見ることが好きでいたりと、良かったことが多い。
いつかイギリス・ロイヤルバレエ団の『眠れる森の美女』を見たい。

そして数年前、とても久しぶりにバレエを見に行った。
キーウ国立バレエ団、『白鳥の湖』。
3大バレエの1つで、誰もが名前は知っている作品。
私自身は習っている間に踊ることはなく、話の筋を知っているだけ。
入場待ちの列に並びながらあらすじを振り返っていた。

王子・ジークフリートの誕生日。
祝う人々に囲まれながらパーティーを楽しむ彼に母である女王はこう言う。
「そろそろ貴方も結婚相手を見つけなくては」
もっと独り身を楽しみたいのに……とちょっと落ち込むジークフリートを見かねた友人が狩りに誘う。
狩り場の湖にいた美しい白鳥の群れ。
弓で射ようとした瞬間、白鳥は人間の女性へと姿を変える。
女性の名前はオデット。
ある国の王女で、魔王のプロポーズを断ったこところ、周りにいた侍女とともに白鳥へ姿を変える呪いをかけられたのだ。
呪いを解くのは永遠の愛。
オデットに一目惚れしたジークフリートは数日後の舞踏会での再会を約束し、2人は別れる。

一方、その様子を見ていた魔王・ロットバルトとその娘・オディールはあることを思いつく。

舞踏会当日。
周辺国から結婚相手に、と招待された姫たちと踊りながらも、あの日出会ったオデットが頭から離れない。
そんな時、来客を告げるラッパが鳴る。
入ってきたのはオデットと瓜二つの姫。オディールと名乗ったが、王子はオデットであると思い込み、結婚の誓いを立てる。
その瞬間、オディールは正体を明かしロットバルトとともに去っていく。

で、なんやかんやあって湖に心中して死後永遠に結ばれました、なメリバエンドとちゃんとロットバルトを倒して現世で結ばれましたなハッピーエンドの2種類が存在する。

オデットとオディールは「白鳥」と「黒鳥」と言われる通り、対比的な役だけど、同じダンサーが一般的だ。
清純で清らかなオデットと欲しいものはどうやってでも手に入れるようなオディール。
「黒鳥のヴァリエーション」、32回転のグラン・フェッテ楽しみだなぁ(気になる方はYouTubeで検索してみて)なんて思っていたのたけど。

ふと、思い当たってしまった。

「顔が同じくらいで間違えるような男の永遠って信じられるか……?」

だって顔だけで「この間あった人だ!」ってなって結婚の誓いまで立てたのに「悪魔に騙されたんだ、本当は君だけだ」ってあまりにも言い訳が過ぎないか?物語はさておいても控えめに言っても最低では??少なくとも理想の王子ではないよな??

などと考えていると、もう1人「お前最低だな!?」と思うヒーローを思い出した。
『ジゼル』のアルブレヒト。
こいつは最低である(異論は認める)

『ジセル』のヒロインは村娘のジセル。体が少し弱いが踊ることの好きな優しい女性。
彼女と付き合っているのが、同じ村のロイス。
幸せな2人の時間はある日領主が狩りに訪れたことで終わる。
領主の娘・バティルダがロイスに声をかけた。
「何をしていらっしゃるの、アルブレヒト様」
「アルブレヒト?この人はロイスじゃないの?」
ジゼルが思う中、ロイス(アルブレヒト)は
「ちょっとした戯れですとも、バティルダ様」
「この方は私の婚約者ですの」

ま、要するに婚約者がいるにも関わらず、アルブレヒトは身分を偽りロイスと偽名を使い、ジゼルと付き合っていた、ということ。
ショックを受けたジゼルはそのまま亡くなる。

未婚のまま死んだ女性はウィリという精霊になる。
ウィリとなったジゼルの墓の前にアルブレヒトが訪れる。
ウィリの女王・ミルタは一晩中ここで踊るようにアルブレヒトに命じる。
そんなことをしては、アルブレヒトが死んでしまう。そう思ったジゼルは彼を助けるように共に踊る。
夜明け、ウィリであるジゼルは消え、アルブレヒトが1人残される。

という話なのだけど。
アルブレヒトがクズ過ぎませんか!?!?!?(うるさい)

どっちが本気だったとかはもうこの際些末な問題なんだけど、でもあのままジゼルと付き合ってても家を捨てるほどの覚悟はなかっただろうからどうせ愛人、愛妾止まりでしょ!?クズじゃん!!!!謝りにきて許してもらってんの聖母のようなジゼルのおかげだから!!!!ありがたく思えよ!!!!!

と初めてこの話を知った頃から思っている。
どうしてこうもクズなのか。ていうか女性に夢見すぎだろ。
オデットはもしかしたら白鳥のままのほうが幸せだったかもしれないし、ジゼルは助ける義理なんてないじゃないか。

ということで実はそんなに「ブラン・バレエ」(白いバレエ)と呼ばれる作品が好きではない。
それはそれとして踊りとか曲とかは好きなのだけどなぁ。どうせなら『ドン・キホーテ』とか見たい。楽しいので。

入場して、席に付く。
今日のプリマはどちら……とパンフレットを開く。

顔がいい。
綺麗、素敵、手足長い、顔小さい。
ここでジークフリートのことは一旦忘れる。

1幕が終わったところでやっぱり思う。
そんな永遠信じられるか?と。

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