ピアノ

魔法が使えるのってずるいなあと思っている話

なんだそれ、って言われそうだけど。
でも絶対魔法使いはいるし、ステージには魔物と神様がいる(突然どうした)。

私はこの世には魔法があると思っている。

その魔法は時に誰かを癒やし、
時に誰かを傷つけ、
時に誰かの人生を変えるほどの影響力を持つ。

例えば彼のように。

宮下奈都さん「羊と鋼の森」

ピアノの調律師を目指す青年・外村を主人公とした物語である。
外村君が調律師を目指した理由は高校生のときに聞いた音が理由だった。
高校の体育館のピアノ。
何の変哲もないただのピアノだが調律師の手にかかると全く違う音に変わる。
その音で彼の人生は間違いなく変わった。

「自分もこんな音が出せるようになりたい」

魔法のようだと思う。
だって「すごいなあ」で終わらずに「自分も出来るようになりたい」って思わせるんだから。魔法か、それか悪魔との契約って感じ。

魔法が使える人

魔法が使える人というか、誰かの人生を変えちゃうくらいの武器を持ってる人、といった方が正しい。
その武器は音かもしれないし、行動かもしれないし、演技かもしれないし、言葉かもしれないし、もっと私には想像のつかないものかもしれない。

ずるいと思う。

ずるい、と思うのは私だけかもしれない。でも、ずるい。

変えられちゃった方はたまったもんじゃない、ふざけんなそれまで通りの人生を歩ませろ、と言いたくなる。それまでそれなりに楽しく生きてきたわけで、選んだ道の方が苦しくて辛いことがたくさんあるかもしれない。

でも変えられちゃうときは不可抗力で、抵抗なんて出来ない。
戸村くんは音で人生を変えられた。
私は言葉で人生を変えられた。

音はすごい。
聞くだけで元気が出たり、悲しくなったりする。
感情を揺さぶり想像させて、新しい世界を見せる。

言葉の力は偉大だ。
実際には行けない場所にも行けるし、会えない人にも会わせてくれる。
時々「絵や動画には敵わない…」って落ち込むけど、それでも言葉の方が自由で、誰にでも使えると思っている。

言葉は誰かを癒やし、誰かを傷つけ、誰かの人生を変える。
そんな言葉の力を私は信じたい。
その言葉のせいで私自身がどんなに傷ついても、それだけは手放したくない。
それは私がたくさんの言葉をもらった代償だし、恩返しだと思うから。

いつか私の言葉が誰かの心に届きますように。

それくらいの武器になっていたらいい。

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