ボートネックとピアスの青年【音声と文章】
山田ゆり
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1279
※昨日から、noteを投稿する際の「カバー画像」が読み取れなくなっております。申し訳ございません。
※note毎日連続投稿1357日コミット中。1279日目
※音声・文章、どちらでも楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
ボートネックとピアスの青年
ということをお伝えいたします。
「よろしくお願いしま～す！」
のり子はいつもより元気に挨拶をした。
「いやー、のり子さんの為に飛んできましたよー。」
ひょうきんなＡさんは冗談っぽく言った。
会社では特に理由がない限り
インフルエンザの予防接種を受けなければいけないことになっている。
代金は全額会社負担だ。
会社で契約している医院には
事前に予防接種の期間予約をしている。
今日、のり子はインフルエンザの予防接種の日だ。
製造部門の男性２名が工場から車で本社に来て
のり子とＢさんを拾って医院に向かうことになっている。
見るとＡさんの後ろにタケルが小さくなって立っていた。
４０代のＡさんは上下の作業着を着ていた。
２１歳のタケルは作業着の上を脱いでそれを腰に巻いていた。
真ん中わけの前髪の奥から見える澄んだ目が印象的だ。
のり子はタケルの親と同年代だが
いつ見てもドキドキする。
２１歳のタケル
４０代のＡさん
５０代のＢさん
のり子
４人は車に乗り医院へと向かった。
運転は一番年下のタケルがした。
のり子は助手席のうしろに座った。
斜め前にタケルの後ろ姿が見える。
きれいに髪が切りそろえられている首回り。
左耳にはプラチナのピアスがさりげなく光る。
茶髪のショートヘア。
タケルはＡさんと静かに会話をしていた。
どうやら作業工程や仕上がりのことなど
仕事の話をしているようだった。
一見、今風の感じなのに
周りのことを気遣って
小さい声で会話をするところが意外だった。
若いのに気配りができている子だとのり子は感心した。
以前、会社でバーベキューをした時
タケルは焼けた肉や野菜を各テーブルに配っていた。
のり子のテーブルにもやってきて
食べたいものはないですかと
はにかみながら聞いてきた。
なかなか気の利く子だとその時も思った。
タケルの上の作業着は相変わらず腰に巻いていた。
上に着ている凸凹の素材のカットソーは
首回りが横に少し広い「ボートネック」だと思う。
その広がりはデコルテの露出が控えめで
上品さと若さを感じる。
タケルの左手につかんだギアがＲに入り
そしてＰで止まった。
医院につき玄関で手の消毒と検温をし
待合室に入った。
待合室は思っていたより混んでいた。
そして待っているのはほぼ、お年寄りだった。
のり子は事前に記入してある問診票を持ちながら４番目に並んだ。
すると腰の曲がった女性がのり子に話しかけてきた。
「これ、持ってきたんだけどどうすればいいの？」
その方は問診票を手にのり子に聞いてきた。
その方を見て、数年前に亡くなった母を思い出した。
その方は受付からボールペンをお借りしてきて、
のり子のところへ戻ってきて
近くにあった革製のソファを机替わりにして問診票を書き始めた。
のり子はその方に書き方を教えた。
名前、電話番号、年齢・・・。
のり子はしゃがんで一つずつ、教えていった。
７５歳と記入された時に
「７５歳ですか。お若く見えますね。」とのり子は自然に伝えた。
次の各項目にチェックを入れる段階になった時に
「のり子さん、問診票をあそこに出してくださいって。」
Ａさんに言われた。
のり子はすぐに問診票を出しにゆき
お年寄りのところへ戻った。
見ると、
タケルがしゃがんでそのお年寄りの女性に教えていた。
タケルのしぐさはとても自然だった。
孫がおばあちゃんと一緒に居る、そんな感じだった。
タケルは最後までずっと
その女性のそばで書き方を教えていた。
作業着の上着を腰に巻いて
ボートネックのカットソー
左の耳にピアスが光る若者が
７５歳の腰の曲がった女性の隣にしゃがみながらいる光景。
「その青年はウチの会社の人なんです。」
のり子は心の中でひとり、自慢していた。
ずっと見ていたい光景だった。
忘れないようにと
のり子は心のシャッターを切った。
今回は
ボートネックとピアスの青年
ということをお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
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おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
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ということをお伝えいたします。
「よろしくお願いしま～す！」
のり子はいつもより元気に挨拶をした。
「いやー、のり子さんの為に飛んできましたよー。」
ひょうきんなＡさんは冗談っぽく言った。
会社では特に理由がない限り
インフルエンザの予防接種を受けなければいけないことになっている。
代金は全額会社負担だ。
会社で契約している医院には
事前に予防接種の期間予約をしている。
今日、のり子はインフルエンザの予防接種の日だ。
製造部門の男性２名が工場から車で本社に来て
のり子とＢさんを拾って医院に向かうことになっている。
見るとＡさんの後ろにタケルが小さくなって立っていた。
４０代のＡさんは上下の作業着を着ていた。
２１歳のタケルは作業着の上を脱いでそれを腰に巻いていた。
真ん中わけの前髪の奥から見える澄んだ目が印象的だ。
のり子はタケルの親と同年代だが
いつ見てもドキドキする。
２１歳のタケル
４０代のＡさん
５０代のＢさん
のり子
４人は車に乗り医院へと向かった。
運転は一番年下のタケルがした。
のり子は助手席のうしろに座った。
斜め前にタケルの後ろ姿が見える。
きれいに髪が切りそろえられている首回り。
左耳にはプラチナのピアスがさりげなく光る。
茶髪のショートヘア。
タケルはＡさんと静かに会話をしていた。
どうやら作業工程や仕上がりのことなど
仕事の話をしているようだった。
一見、今風の感じなのに
周りのことを気遣って
小さい声で会話をするところが意外だった。
若いのに気配りができている子だとのり子は感心した。
以前、会社でバーベキューをした時
タケルは焼けた肉や野菜を各テーブルに配っていた。
のり子のテーブルにもやってきて
食べたいものはないですかと
はにかみながら聞いてきた。
なかなか気の利く子だとその時も思った。
タケルの上の作業着は相変わらず腰に巻いていた。
上に着ている凸凹の素材のカットソーは
首回りが横に少し広い「ボートネック」だと思う。
その広がりはデコルテの露出が控えめで
上品さと若さを感じる。
タケルの左手につかんだギアがＲに入り
そしてＰで止まった。
医院につき玄関で手の消毒と検温をし
待合室に入った。
待合室は思っていたより混んでいた。
そして待っているのはほぼ、お年寄りだった。
のり子は事前に記入してある問診票を持ちながら４番目に並んだ。
すると腰の曲がった女性がのり子に話しかけてきた。
「これ、持ってきたんだけどどうすればいいの？」
その方は問診票を手にのり子に聞いてきた。
その方を見て、数年前に亡くなった母を思い出した。
その方は受付からボールペンをお借りしてきて、
のり子のところへ戻ってきて
近くにあった革製のソファを机替わりにして問診票を書き始めた。
のり子はその方に書き方を教えた。
名前、電話番号、年齢・・・。
のり子はしゃがんで一つずつ、教えていった。
７５歳と記入された時に
「７５歳ですか。お若く見えますね。」とのり子は自然に伝えた。
次の各項目にチェックを入れる段階になった時に
「のり子さん、問診票をあそこに出してくださいって。」
Ａさんに言われた。
のり子はすぐに問診票を出しにゆき
お年寄りのところへ戻った。
見ると、
タケルがしゃがんでそのお年寄りの女性に教えていた。
タケルのしぐさはとても自然だった。
孫がおばあちゃんと一緒に居る、そんな感じだった。
タケルは最後までずっと
その女性のそばで書き方を教えていた。
作業着の上着を腰に巻いて
ボートネックのカットソー
左の耳にピアスが光る若者が
７５歳の腰の曲がった女性の隣にしゃがみながらいる光景。
「その青年はウチの会社の人なんです。」
のり子は心の中でひとり、自慢していた。
ずっと見ていたい光景だった。
忘れないようにと
のり子は心のシャッターを切った。
今回は
ボートネックとピアスの青年
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