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「申立書」その2【音声と文章】

山田ゆり
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※note毎日連続投稿1357日コミット中。1293日目
※音声・文章、どちらでも楽しめます。



おはようございます。
山田ゆりです。



今回は
「申立書」その2
ということをお伝えいたします。


のり子はある許可の更新の為に
申請窓口にいた。

書類をその場ですべてチェックされる。
担当のA氏は黙々とシャープペンシルで
チェックを入れ、加筆していった。

透明な衝立を間に挟んでのり子は
シャープペンシルの動きを目で追っていた。

チェックが始まって50分が過ぎていた。

A氏がチェック済みの書類を左側に積み
右側の書類はあと数枚になった。



相手は最後の「申立書」を手にした。

のり子はドキリとした。
今回の申請でこの「申立書」だけが
一番きがかりだったからである。


実はこの申請で添付しないといけない書類の内、
どうしても期限までに間に合わないものがあった。

それは特定の有資格者がその資格の更新を
していなければいけないことになっていたが
その方は更新の手続きを忘れていた。

それに気づいたのはつい最近で
慌てて更新の講習会に申し込んだが
その方の資格更新の証明書が発行されるのは
今回の申請期限のずっと後なのだ。

それはのり子が頑張ってどうこうできるもではなかった。

他の人が絡む問題なのだ。
本来、今見ていただいている書類の添付資料には必須の書類だった。

各種納税証明や登記簿謄本など
添付書類は全て揃えてきたが
その方の書類だけがないのだ。


提出すべき書類が揃っていなければ
この申請自体受け付けてもらえるはずはない。

この申請事務は他の仕事とは比べ物にならないくらい面倒なものだ。
それでも日常の仕事の中から時間を見つけて少しずつ作成してきた。


面倒でもコツコツ進めたらできない仕事はない
とのり子は思っている。
だからこれまでかなりの時間を費やして頑張ってきた案件だった。

しかしそれがとん挫する可能性があると分かった時点でのり子はとても失望した。


自分のやっている仕事が
意味の無いことだと感じかなり落ち込んだ。

そう思いながらも
とりあえず最後まで書類を作ることを続けていった。

そして書類が出来上がり、申請の第一面談の前日に、
あと1枚足りないその書類のことに思いを巡らしていた。



この申請は1回の面談で申請が通るものではないことは
前回の申請の時に経験済みだ。

必ず初回は「直し」の箇所をたくさん指摘される。
つまり、初回は「肝試し」のようなものだ。

何が駄目で何がOKなのかは出してみないと分からない。


提出すべき書類を100%揃えてから申請に向かうのが常識だと
のり子はこれまで思ってきた。
でも、どうしても1枚だけそれがない。
たった1枚の書類がないために
今回の更新ができないのは悔しいことだった。



それでは、その書類が間に合わなかった理由を簡単に書き、
その書類が発行され次第提出いたしますので
今回の更新をどうかお願いしたい旨の「申立書」を
作って提出してみてはどうだろうかと思いついた。

それはこれまでののり子の常識ではなかったことだった。

提出すべきものは100%揃っていないと申請することはできない、
それが当たり前だと思っていたから。



「でも、やってみよう。」


のり子は気持ちの熱いうちに
「申立書」を心を込めて作成した。
理由は明快に、卑屈にならず、
前向きな文章で簡潔になるよう心がけた。

そしてその「申立書」を書類の一番最後に綴った。

のり子としては王手をかけたつもりだった。




しかし、実際に面談をしてみて
これまでのA氏の態度から
たぶん「申立書」は蹴られるだろうと感じた。

相手の意を配慮することはなく
とにかくきまり通りにしてくださいという雰囲気が漂っていたから。




A氏がその申立書に目を通した。


のり子の心臓がぎゅっと握られたような思いだった。
その僅か数秒がとても長い時間に思われた。


耳のあたりで心臓のドクドクが響いた。


のり子は心の中で祈っていた。
A氏は申立書に数文字、シャープペンシルで加筆した。




「うん、これでいいですよ。」


「えっ?」のり子は心の中で思った。


その方はその申立書が何でもないような感じで
書類の最後に持ってきた。


そして色とりどりの付箋が貼られた書類を
大きめのダブルクリップでひとまとめにして
それをのり子に向けた。




「大体、できてます。
あともうちょっとで完成です。
この通りに文言を直したら次回の時は申請が受付されるでしょう。
よくできています。」


のり子は驚き、その方の眼鏡の奥の目を見たが
やはり冷静な目だった。




「申立書」はもしかして珍しいことではないのか?
のり子が知らないだけなのか。



のり子はまだ「申立書」が受け入れられたことが信じられなかった。

駄目でもともと
最後まで希望を捨てずにやってみるものだと感じた。




駄目でもともと

やってみるもんだ。



その事務所を背に車に向かう間中
その言葉がのり子の体の中心から湧き出していた。




歩くたびに
背中からキラキラ光がはじけるような
そんな気がして
のり子は自分が誇らしかった。






今回は
「申立書」その2
ということをお伝えいたしました。

本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。 

ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。

山田ゆりでした。



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