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架空レポ+「Traveling to the MIYAZA-WORLD~ようこそ宮沢の世界へ」 (2019年11月)
2019年11月3日、宮沢和史「Traveling to the MIYAZA-WORLD」の3日目。「子供らに花束を」を歌い終わり、場内に少しシリアスな空気が漂った余韻の中で、突然の言葉だった。「実は今日、ゲストをお呼びしてるんです」。大切な告白をするような口調でMIYAが言った。
誰だろう。スカやレゲエ期のTHE BOOMに関係あるミュージシャンだろうか。そんな思いに客席がざわついた。そこに舞台上手から、白いハットをかぶり、トランペットを右手にしたこだまさんが登場した。「憧れていたダブバンド、MUTE BEATのこだま和文さんです!」とMIYAが紹介する。遅れて拍手が会場を包む。2004年のTHE BOOM「僕にできるすべて」レコーディング以来の共演だ! こだまさんはまずは増井さん(増井さんもMUTE BEATのメンバーだ)と握手、そしてMIYAと抱擁する。左手にも何か持っている。写真立て? MIYAに見せると、鍵盤の上に客席に向けてそれを置いた。
誰の写真か想像できた。そしてその名をマイクスタンドの前に戻ったMIYAが叫んだ。「キーボード、朝本浩文!」。キーボードに近づき写真を掲げる。ロシア帽をかぶった朝本さんの笑顔が見える。さっきよりさらに大きな、熱い拍手が沸き起こり、止まらない。朝本さんもこだまさん、増井さんと同じくMUTE BEATの一員だった。そして朝本さんはMIYAの音楽的盟友だった。「月さえも眠る夜」「帰ろうかな」「18時」など、MIYAとの共作曲や朝本さんがプロデュースした曲はたくさんある。MIYAのデビュー30周年を祝うこの日に、それもスカ、レゲエ、ロックステディーの日に朝本さんがいないなんてやっぱり考えられない。「今日は天国からの参加ですが、朝本さんとは一時期、ツアーに参加してもらったり、ジャマイカにも一緒に行ったり、僕の音楽人生には欠かせないミュージシャンでした」。「キングストンの空港で犬に吠えられていた姿が思い出されます」。しんみりした気分も束の間、オチの言葉でみんな笑顔になる。こだまさんも笑ってる。
そのとき、スタッフがステージに現れ、MIYAの右横にマイクスタンドを運び込んだ。ん? こだまさん用以外にももう1本、ということは誰かがゲストボーカル? 怪訝そうな顔をするMIYAにこだまさんが何やら耳打ちしている。驚く顔。何が起こったんだろう? MIYAも知らない段取り? ハプニング? 会場もざわざわし続ける中、曲のイントロが始まった。そして、ステージ袖からひとりの長身の男が現れた。
スポットライトが当たってないので客席からは彼が何者なのかわからない。MIYAが信じられないといった表情をして、舞台真ん中へとゆっくり進むその歩みを凝視している。と、次の瞬間、駆け寄ってその男を抱きしめた。もうこのイントロで誰もが理解した。歌い出した声で謎が解けた。YAMIだ。YAMI BOLOだ。こだまさんがMIYAに内緒で、このコンサートのためにYAMIをジャマイカから呼んでいたのだ。MIYAは泣いている。MIYAは歌い出せない。MIYAの代わりに客席みんなとYAMIで「神様の宝石でできた島」を歌う。朝本さん、こだまさん、MIYA & YAMI、そしてデビュー30周年を祝うために集まったみんなで歌う「神様の宝石でできた島」。
※ 以上は架空レポートです。この日のステージにこだまさんも朝本さんの写真もYAMIも登場していません。本来のコンサート(2日目と3日目)の感想は以下に続きます。2019年11月3日の本来の演奏曲目はこちらのプレイリストで。
宮沢和史デビュー30周年の2019年、11月1日〜4日に東京・よみうり大手町ホールで開催された日替わりテーマのコンサート。初日は「沖縄」、2日目は「ブラジル」、3日目は「スカ・レゲエ・ロックステディー」がテーマ。最終日は「GANGA ZUMBA」のメンバーが集結しました。その中から僕が行けた2日目「ブラジル」と3日目「スカ・レゲエ」日のツイートまとめ。
Traveling to the MIYAZA-WORLD~ようこそ宮沢の世界へ
— miya38_info (@miya38_info) November 1, 2019
DAY2:AMOR BRASIL
よみうり大手町ホール
11月2日(土) 開場 15:30 / 開演 16:00
▼バンドメンバー
服部正美 Dr./Per.
久保田真弘 Ba.
笹子重治 Gt.
フェルナンド・モウラ Pf./Key.
今福健司 Per.
倉富義隆 Sax/Flute#宮沢和史#宮沢和史30th
宮沢和史のブラジル。素晴らしかったです。全17曲、内カバーは6曲。スタンダード曲以外ではパウリーニョ・モスカの曲を。
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 2, 2019
「『僕とブラジル』というシンポジウムみたいになってますが」と途中で言ってたけど、ブラジルとの関わり、敬愛、影響を一曲ごとに語りながらのコンサートでした。続きはあとで。 pic.twitter.com/hjmzcbOGE8
宮沢和史のブラジル。ステージに現れ、椅子に腰掛け、ギターを弾きながら歌い出したのは「Poeta 」。20年以上も前の曲なのに、そんな昔の曲だからこそ、歌詞の中の「音の合わないギターを奏で まだ詩を書き続けてる」というフレーズにぐっとくる。
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 2, 2019
宮沢和史、2曲目は「『GETZ/GILBERTO』を聴き、胸をぎゅっとつかまれて歌ってみたいと思い、初めて歌ったボサノヴァ」という「Para Machucar Meu Coração」。
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 2, 2019
1995年に開いたブラジル音楽イベントがその最初だったかも。今日はこうして一曲ずつエピソードを語って歌った。 pic.twitter.com/qp6rcl1kND
「街はいつも満席」がニューヨーク録音だったこと、今日のMCで聞くまで忘れてた。帰宅してアルバム・クレジットをチェックしたらギターがトニーニョ・オルタで、ピアノが矢野顕子さんなんですね。あと、「今日はブラジルに特化した内容なので聴いていて遠い国に行ってしまっても(眠落ちすること)→
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 2, 2019
→ 全然かまいません」と言ってたけど、歌詞の「のぞき込めば君は 遠い夢の中」というフレーズにかけてる(そんなことないか)。最後までもちろん全然眠くなんてならなかったけど。
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 2, 2019
『極東サンバ』(94年)と『トロピカリズム』(96年)という2枚のアルバムについての話もたっぷりとあった。→
→ 「1994年に初めてブラジル・リオに行ったこと。歌で聴いてきた景色がそのまま目の前にあった。リオでの1週間の滞在中に『極東サンバ』の元になるいくつかの曲をスケッチした。だからその1週間がなかったらこんなにブラジルにのめり込んでいなかったかもしれない。」→
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 2, 2019
→ 「『極東サンバ』でブラジルとラテンを取り入れ、次の『トロピカリズム』(96年)ではもっと掘り下げようとバイーアのリズムもあり、僕としては深いところまで行けたけど、『極東サンバ』のほうがポップだった。最初の印象、ファーストインプレッションで曲を書くのは大事」という話は含蓄ある。
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 2, 2019
→ ジョアン・ジルベルトのサンパウロでのライヴを観て呪縛が解けた話なんて当時はもちろん知らなかったし、カエターノ・ヴェローゾを観たリオの「カネコン」(劇場)のステージに立つのが夢であり、それを2008年に実現させたという話も鳥肌だった。1996年 ↓https://t.co/YuvoVNRgB7
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 2, 2019
あと20ツイートぐらいしたかったけど眠い……。明日は朝本さんが来るはず。
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 2, 2019
「日本からブラジルへの移民が始まって100周年の2008年にブラジルツアー、横浜での記念イベント、それが目標で到達点だった」という、今ならではの吐露もあった。そこからは体調のこともありブラジルへは足が遠ざかったという話。「でも、」と話は続く。旅は終わらない。 pic.twitter.com/7Sjr7n3sid
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 3, 2019
2017年、久しぶりのブラジル。リオでカエターノ・ヴェローゾによる「土地なし農民」を支援するイベントを観た。御大カエターノと、若いラッパーたちのステージ。世代を越えて共有される歌がある。このときのことはライヴ終了後に買ったパンフレット『あれからのこと』にも書かれてた。 pic.twitter.com/q4q2nBI9dc
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 3, 2019
去年、今年もブラジルで歌い、これまでブラジルを訪れた回数は25回以上という。「地球を25周分ですから」と。これからもブラジルから影響を受け取り、音楽を創っていく。なんて恵まれた音楽家人生なんだろう、と。
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 3, 2019
その音楽家をずっと好きでいて本当によかったですよ。
今日の宮沢和史コンサートは
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 3, 2019
SKA・REGGAE ROCKSTEADY PARTY!!
なのでスペシャルズを聴いてるよ!
ルーディーたちへメッセージです。開演は16時です。
大手町駅C3出口が会場直結ですが、東京駅丸の内出口からも地下で繋がってます。徒歩で15分ぐらい。 pic.twitter.com/Aqc5Y3jbtg
Traveling to the MIYAZA-WORLD~ようこそ宮沢の世界へ
— miya38_info (@miya38_info) November 2, 2019
DAY3:SKA・REGGAE ROCKSTEADY PARTY!!
よみうり大手町ホール
11月3日(日・祝) 開場 15:30 / 開演 16:00
▼バンドメンバー
伊藤直樹 Dr.
tatsu Ba.
町田昌弘 Gt.
米田直之 Key.
多田暁 Trp.
増井朗人 Trb.#宮沢和史 #宮沢和史30th
宮沢和史、本日の一曲目はスペシャルズでした!https://t.co/9koflqtX5Z
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 3, 2019
一曲目の「A Message to You Rudy」から胸アツ。昨夜のブラジル編とは全く違う(アンコールのあの曲だけ、アレンジ違いで)選曲と、ステージ上の運動量(跳躍を含む)。自分の年齢を「初老」を過ぎた「中老」と何度もネタにしてたけど、こんな四日間に挑む音楽家、他にいる?https://t.co/VGkSp48EQr
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 3, 2019
「ミ・ソ・ラSKA」と「Fish Dance」、終盤の「Monkey Man」と「都市バス」での、僕らの熱狂ぶりもヤバかった。ジャマイカでのエピソードも面白かったなー。あれだけ話しておいて、キングストンのことを歌にした「神様の宝石でできた島」を歌わないとか。たくさん踊って、たくさん笑った。最高でした。
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 3, 2019
(1991年、THE BOOMファンクラブ季刊誌での「サカナ・サンスプラッシュ」まとめ記事) pic.twitter.com/aOjWqginck
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 3, 2019
宮沢和史と「No Woman, No Cry」で大好きなエピソードは2005年2月、ロンドンのバスの中で歌われたというもの。MIYAZAWA-SICK(後のGANGA ZUMBA)のヨーロッパツアー、最終公演が終わったその夜の出来事です。長い旅をしてきた仲間。今日、GANGA ZUMBAに行かれる人もどうぞ。https://t.co/ouGtZjmcu5 pic.twitter.com/MQu3ASIc1m
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 4, 2019
続)これ、なぜバスの中でMIYAとバンドのみんなが三好さんというスタッフに「No Woman, No Cry」を歌ったかというと、三好さんはボブ・マーリィ来日時(1978年)の日本ディレクターなんです。その人が宮沢の海外ツアーではプロデューサーとして苦労を重ねていた。https://t.co/RrvrGj9Vma
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 4, 2019
GANGA ZUMBA観たかったー。
— 杉山敦 (@tuktukcafe) November 4, 2019
いろんな旅をしてきました。これは2003年、メンバーにではなく映像ディレクターへのインタビューですけど、凄いっす。いまだに読むと痺れます。https://t.co/01wEuPDyRc pic.twitter.com/zwjc6US7Jx