見出し画像

カラマツがスキ

いま読んでいる本に、カラマツのことが書いてあった。私はカラマツがスキだ。


今年は紅葉の当たり年なのだそう。
少し前に行った山の中ではカラマツの紅葉がとても綺麗だった。


父の実家があった軽井沢はカラマツ林がとても多い。
軽井沢では、カラマツの紅葉で冬を迎え、カラマツの芽吹きで春を迎える。
子供の頃は、秋になると栗拾いやキノコとりに散々行ったものだ。

栗やキノコを求めて森に分入っていくと、一面カラマツに覆われた地面を歩くことになる。
カラマツって普通の落ち葉と違って、とても気持ちがいい。ふかふかの布団の上を歩くみたい。
靴も汚れないし、その上香りがとてもイイ。

そんな布団の上の感触を楽しみながら、カラマツの落ち葉の膨らんでいるところを探す。
その下にはキノコが隠れているのだ。

子供の私にとっては宝探しだった。
山で採れるキノコを、おいしいと思ったことはなかったけれども。

カラマツって、針葉樹なのに落葉するのが珍しい。
そして「先駆樹」と言って、山火事な土で消滅した森に最初に生える樹なのだそう。
そんなこと、この本を読むまで知らなかった。

軽井沢は浅間山の噴火で森が消えてしまったので、そこに成長の早いカラマツを人工的に植えたものが、今の軽井沢の風景を作っている。

環境が整うと、やがてモミなどに取って代わられてしまうカラマツ林。
いつか軽井沢からも、カラマツがなくなってしまうのかもしれない。

カラマツは「唐松」とも書くけれど「落葉松」とも書く。
実家にはこの北原白秋の詩が書かれた色紙が飾ってあった。
母が気に入って買ったものだった。


からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。


からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細く道はつづけり。


からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨のかかる道なり。
山風のかよふ道なり。


からまつの林の道は、
われのみか、ひともかよひぬ。
ほそぼそと通ふ道なり。
さびさびといそぐ道なり。


からまつの林を過ぎて、
ゆゑしらず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり、
からまつとささやきにけり。


からまつの林を出でて、
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。


からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡るるのみなる。


世の中よ、あはれなりけり。
常なれどうれしかりけり。
山川に山がはの音、
からまつにからまつのかぜ。

北原白秋「落葉松」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?