日記 4日目
日記を書き始めてはや3日、気づいたことがある。正直言うと始める前からわかってた。
書くことがない。
そりゃそうだ。ずっと家に引きこもってて生活環境、生活リズム、やってること、全てが昨日と同じだからね。
その日に観た映画や読んだ本の感想は書けなくもないけど、そういう日が続くと自分が飽きてきそうだから、日記と感想はなるべく分けて書きたい。なに書こうかなぁ…
ここまで書いてあまりにも思いつかなさ過ぎて一旦書くのをやめた。確か夕方の5時くらい。
19時頃、いつも通りベッドの柵にもたれかかってうだうだしていると、非通知で電話がかかってきた。
多分アイツかな、という小さな確信があった。アイツはいつも非通知で電話をかける。アイツの境遇を考えたら一般人に自分の電話番号で電話するのは勇気がいるよな、と思う。アイツは一言だけ、「7時15分、(最寄り駅の名前)で。」と告げて電話を切った。
いきなり電話をかけてきたのにも関わらず15分後に集合。いかにもせっかちなアイツらしい。俺は急いで身支度を始めた。着替える時間がもったいないし、めんどくさかったのでパジャマのままで行った。
5分遅れで集合場所に到着すると、すでにアイツは駅前のベンチで俺を待ち構えていた。
「遅せーぞ。集合場所ちゃんと伝えただろ。」
「いや~せっかちすぎ。ハレルソンくん。」
「ハレルソン君呼びやめろ笑笑、ウディでいい。」
「オッケー、ウディ。」ニカッ
「この駅の近くに美味しい赤飯を出す店がオープンしたんだ。今日はそこにお前と行きたいと思ってな。」
「お、いいじゃん!いこいこ。案内よろしく~。」
「まぁ俺もgoogle earth見ながらじゃないと道わかんないんだけどな笑」
歩き始めて5分くらいたったとき、ウディが呟いた。
「…………飽きたか。」
「?」
地面が大きく揺れ始めた。地震なんてレベルじゃない。道路は縄跳びのようにうねり、車が宙を舞った。
「終焉の時だ、この世界のな。全ては天の導きのままに。」
「どういうこと?」
世界に亀裂が入っていく。森羅万象を無に帰すために。
「いいかよく聞け、俺たちは天が文字稼ぎのためだけに作った存在なんだ。人形なんだよ。てゆーかそもそもこの世界自体が虚構なわけ。そもそもいち日本人と超絶ハリウッドスターであるオイラが一緒にメシ食いに行くって意味わかんないっしょ。マジで。おわかり?エナリ君。」
「……………………知ってたよ、最初から。でも...自分が誰かのために作られた存在だなんて意識しながら生きていくなんてできないよ!!そんなこといったって…!そんなこといったって...しょうがないじゃないか!!!!!!」
ピシューーーーーーーーーーーーーーーーーーン
俺は七色に煌めきながら天高く昇っていく。
「なん・・・だと・・・」
状況をうまく呑み込めないウディの前に白衣を着た金髪の女が現れた。
「…始まったようね」
「誰だお前は!?」
「赤木リツコよ。」
「説明になってねぇよ!マジで誰だよお前!てかなんだこの力は!この宇宙は破滅へ向かっているんだぞ…まさか…渡る世間は鬼ばかリンパクトがねらいか!」
「ふふ、ご名答。」
「あぁ…」
ウディはその場にへたり込み、二度と起き上がらなかった。
俺は上昇し続けて大気圏を抜け、宇宙空間に飛び出した。
そして渾身の力で叫びながら、自分の存在を願った。
「そんなこといったって…!しょうがないじゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その瞬間、俺の体は光に包まれた。いや、この世界、宇宙全体が燦然と光り輝いた。
虚構が真実へと反転していく…………………………
世界は再び形を取り戻した。あれは人類史が始まって以来の大事件だったが、何故かあの出来事を覚えているのは俺以外誰もいなかった。
まぁいい。人は忘れることによって成長する生き物だ。今はこの手で取り戻したささやかな幸せに祝杯をあげようと思う。
俺の名はえなりかずき、ポケモントレーナーだ。
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