Billboard JAPAN 2024上半期ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20総括

BillboardJAPAN 2024上半期 ニコニコ VOCALOID SONGSチャート

 2023年11月27日(月)〜2024年 5月26日(日)までを集計期間とし、12月6日公開週〜5月29日公開週までの、合計26週のチャートが対象となる、Billboard JAPAN 2024上半期 ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20。
 同チャートは、ニコニコ動画に投稿された、VOCALOIDやUTAU、Ce:VIOなどの、合成音声ソフトウェアを使用したオリジナル楽曲が対象となり、ニコニコ動画内でのオリジナル動画や二次創作動画などの動画再生数や動画総数、コメント数、いいね数などのデータにBillboard JAPANが独自開発した係数に乗じて、毎週上位20位までのチャートが生成される。
 同記事内では、同チャートのTop10圏内にチャートインを果たした10曲を取り上げる。また、同チャートで記載する結果は、2024年度上半期の集計期間である5月29日公開週までを対象とする。

1位・吉田夜世「オーバーライド」

 Billboard JAPAN 2024上半期 ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20の首位は、2023年11月29日(水)に投稿された楽曲、吉田夜世「オーバーライド」が獲得した。ボカロPグループの"ボカ学"のメンバーとして、コアなボカロリスナーやボカロPの中で評価を集めていた吉田夜世。2024年1月頃から音MADなどの二次創作を中心に徐々に人気を集め始め、次第にオリジナル動画でも大きく支持を獲得した。同チャートにおいては、1月10日公開週で6位に初登場した後、1月24日公開週で初の首位を獲得。その後、通算9週首位を獲得した他、チャートイン2週目以降では、ボカコレ2024冬開催期間に該当する2月28日公開週を除いては上半期終了までの全ての週、合計19週2位以内にチャートインする驚異的なロングヒットを見せた。オリジナル動画による人気はもちろん、音MADや歌ってみたなどによる二次創作人気も幅広く獲得し、二次創作・オリジナルともに1位で上半期1位を獲得することとなった。なお、同楽曲の9週の首位獲得は、2024年度上半期集計期間内においては最も多い週間首位獲得記録である。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は318万回再生、マイリスト数は17,900回を記録している。また、YouTubeの総再生回数は、集計期間終了時点で2,200万回再生を突破している。なお、ニコニコ動画では2024年3月06日(水)に投稿から97日ほどで100万回再生を突破し、その後さらに再生回数の勢いを加速させ、4月09日(火)に200万回再生を、5月19日(日)に300万回再生を記録した。また、YouTubeでは4月08日(月)に1,000万回再生を記録し、自身初のマイルストーンとなった。

 上半期でニコニコ動画で300万回再生以上再生回数を伸ばしたボカロ楽曲は同曲のみであり、オリジナルの再生回数・二次創作の盛り上がりの双方が合わさり上半期の首位を獲得した。また、同楽曲はストリーミングでも人気を獲得し、Hot 100には4月27日公開週に98位に初登場を果たし、同楽曲は5月29日公開週までにHot 100に通算5週チャートインを果たし、最高位89位を記録している。特にYouTubeの再生回数からなる動画再生指標では最高位10位にチャートインを果たした他、ストリーミングでもポイントを獲得しており、ニコニコ動画のみに留まらない人気を獲得しており、下半期の伸びにも期待したいところである。

2位・原口沙輔「人マニア」

 2位は、2023年8月に投稿された楽曲、原口沙輔「人マニア」が獲得した。トラックメイカー・シンガーソングライターなどとして活動する原口沙輔の自身初となる広義ボカロ楽曲である同楽曲。ボカコレ2023夏に投稿され話題を集め、Top100ランキングでは11位を獲得しコアなボカロファンを中心に人気を獲得したが、その後二次創作などで人気に更なる火が付き、2023年度集計期間内では9月20日公開週から11週連続で首位を獲得し、2023年間同チャートでは20位にチャートインを果たした同楽曲。その後も前年度の人気を引き継ぐ形で人気を着実に集め、1月17日公開週まで合計18週(2024年度集計期間内では7週)連続で首位を獲得した。その後も4月24日公開週までは、ボカコレ2024冬開催期間に該当する2月28日公開週を除いてはTop10圏内にチャートインし、合計20週Top10圏内へのチャートインを果たした。その後も上半期終了までTop11〜20圏内に登場し続け、上半期集計期間の26週中25週でチャートインするロングヒットを見せることとなり、同上半期チャートでも2位を獲得した。なお、18週連続となる首位獲得は、同チャートにおける連続首位獲得記録・通算首位獲得記録の双方において、歴代1位となる記録である。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は245万回再生、マイリスト数は8,500回を記録し、ニコニコ動画の総再生回数は474万回再生を記録している。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で2,800万回再生を記録している。

 また、同曲は、YouTube・YouTube Shortともに歌ってみたや踊ってみた、音MADなどによるUGCの人気も非常に高く、"Top User Generated Songs"チャートでは2024年度集計期間内で6週首位を獲得し、上半期UGCチャートでは2位へのチャートインを果たしている。

3位・jon-YAKITORY「混沌ブギ」

 3位は、2023年8月に投稿された楽曲、jon-YAKITORY「混沌ブギ」が獲得した。2020年にリリースされた、メジャーデビュー前のAdoをフィーチャリングした楽曲「シカバネーゼ feat. Ado」で注目を集め、Adoや新しい学校のリーダーズ、『初音ミク JAPAN TOUR 2023 〜THUNDERBOLT〜』のテーマソングなど、楽曲提供や書き下ろしなどでも支持を集めてきた、jon-YAKITORY。いちまるを映像として迎えた同楽曲は、2023年8月に投稿されたあとジワジワと人気を集めていき、2024年1月にTikTokなどで話題を集めたことをきっかけに本格的に再生回数が急増傾向となった。同チャートでは、1月24日公開週で3位に初登場し、その後1月31日公開週から3週連続で2位を獲得した。2月21日公開週でオリジナル動画の盛り上がりがピークに達し、同曲初の首位を獲得した。また、首位を獲得したことは該当の1週のみであるが、その後もボカコレ2024冬開催期間に該当する2月28日公開週を除いてTop10圏内へのチャートインを継続させ、週間チャートでは合計18週Top10圏内へのチャートインを獲得し、上半期3位にチャートインすることとなった。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は244万回再生、マイリスト数は13,300回を記録し、ニコニコ動画の総再生回数は250万回再生を記録している。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で2,800万回再生を記録している。なお、同楽曲はニコニコ動画では2月22日(木)にニコニコ動画での100万回再生を突破し、自身初のマイルストーンとなった。また、YouTubeでは、3月03日(日)に1,000万回再生を突破している。2023年末時点でのYouTubeの再生回数は160万回再生ほどであり、再生回数のほとんどが2024年に入ってから増加したものである。

4位・原口沙輔「イガク」

 4位は、2024年2月23日に投稿された楽曲、原口沙輔「イガク」が獲得した。「人マニア」などのこれまでの投稿作品で原口沙輔のファンを大きく獲得した中、ボカコレ2024冬に投稿され、投稿された当初から大きく注目を集め再生回数を伸ばし、Top100ランキングで1位を獲得した同楽曲。同チャートにおいては、ボカコレ2024冬該当週である2月28日公開週で2位に初登場した後、翌週の3月06日公開週では1位を獲得した。首位を獲得したことは該当の1週のみであるが、その後も様々な二次創作などの影響もあり人気が継続し、初登場から4月17日公開週まで8週連続で3位以上にチャートイン、上半期終了まで14週連続でTop10圏内にチャートインし続けるロングヒットを見せることとなり、上半期4位にチャートインを果たすこととなった。なお、原口沙輔は上半期チャートで2位に「人マニア」、4位に「イガク」を登場させているが、同上半期・年間チャートにおいて、Top10圏内に2曲以上をチャートインさせたアーティストは初となる。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は226万回再生、マイリスト数は11,000回を記録している。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で1,300万回再生を記録している。なお、同楽曲はニコニコ動画では3月20日(水)に100万回再生を達成した。26日での100万回再生突破は、ボカロ楽曲では当時歴代9位(現在10位)のスピードであり、バルーン「パメラ」以来の1ヶ月以内でのミリオン達成である。また、YouTubeでは、5月04日(土)に1,000万回再生を達成した。

5位・DECO*27「ラビットホール」

 5位は、2023年5月に投稿された楽曲、DECO*27「ラビットホール」が獲得した。投稿直後から大きな人気を獲得しており、2023年度では21週Top10圏内にチャートインした同楽曲。2024年度開始当初では前年の人気が継続するような形で11〜20位圏内へのチャートインを重ねていたが、2024年2月にchannelによって投稿された同楽曲を用いた二次創作アニメ『Pure Pure』が投稿され、大きく拡散されたことや、同楽曲をモチーフとした二次創作ファンアートも多く登場したことをきっかけに、同楽曲の人気は一気に再上昇傾向となった。同チャートにおいては、3月13日公開週で6位にチャートイン、Top10圏内に再上昇した後、3月20日公開週では4位に上昇、その後上半期が終わるまで12週連続でTop10圏内へのチャートインを維持し続けるロングヒットを果たした。なお、同楽曲が上半期・年間チャートにチャートインを果たすことは初である。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は182万回再生、マイリスト数は8,700回を記録し、ニコニコ動画の総再生回数は385万回再生を記録している。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で4,600万回再生を記録している。なお、YouTubeでは、2023年末時点での再生回数が1,600万回再生ほどであり、2024年間上半期で再生回数を3,000万回再生近く伸ばしている。

 なお、同楽曲は、日本の楽曲の日本国外での人気を測るチャート“Global Japan Songs excl. Japan”では3月21日公開週で9位に初登場し、翌週の3月28日公開週では同曲最高位である5位を獲得した。特に、同週ではアメリカ・イギリスで2位にチャートインを果たしており、二次創作アニメの影響もあり、投稿からおよそ10ヶ月ほどでグローバルな人気を獲得した。

6位・サツキ「メズマライザー」

 6位は、2024年4月27日に投稿された楽曲、サツキ「メズマライザー」が獲得した。"第16回プロセカNext"で採用され、プロセカ内に収録された「CIRCUS PANIC!!!」などを代表曲とし、人気を集めつつあったサツキ。『Pure Pure』で大きく人気を獲得したchannelを映像として迎えた同楽曲は、投稿と同時に大きな話題性を獲得した他、同楽曲のファンアートが多数描かれたことや、楽曲や映像に仕込まれた考察要素なども相まって、更なる拡散が広がり、非常に強力な勢いで再生回数を伸ばすこととなった。上半期集計期間内における同チャートにおいては、5月01日公開週で8位に初登場し、その翌週には1位に浮上、その後4週連続で首位を獲得している。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は186万回再生、マイリスト数は10,800回を記録している。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で2,400万回再生を記録している。同楽曲は、ニコニコ動画では2024年5月12日(日)にニコニコ動画における100万回再生を突破した。投稿からおよそ14日での突破となり、ボカロ楽曲では歴代3位のスピードとなる。また、YouTubeでは5月11日(土)に1,000万回再生を突破した。こちらは、ボカロ楽曲では歴代最速のスピードとなる。

 また、同楽曲は、5月17日(金)からデジタル配信がスタートした影響もあり、Hot 100では5月29日公開週に69位に初登場を果たし、特に動画再生指標では5月29日公開週では3位にチャートインを果たした。また、“Global Japan Songs excl. Japan”では、上半期集計期間内では5月30日公開週で13位にチャートインを果たし、特にアメリカでは8位を記録している。ニコニコ動画内だけではなく、YouTube・ストリーミングともに国内外で再生回数を大きく増やしており、下半期の動向にも期待したいところだ。

7位・ンバヂ(nbaji)「好きな惣菜発表ドラゴン」

 7位は、2023年8月に投稿された楽曲、ンバヂ(nbaji)「好きな惣菜発表ドラゴン」が獲得した。ボカコレ2023夏のネタ曲投稿祭部門で投稿され、コアなボカロファンの間でジワジワと人気を集めていった同楽曲。ボカコレ2024冬では、同曲をリミックスした作品が多数登場するなど、二次創作による人気を見せていたが、2024年3月後半に入り多数のパロディ漫画・イラスト・投稿などが増加し、SNS上でトレンド入りするなどの盛り上がりを見せ、ボカロファン以外にも同曲が大きく拡散され、再生回数が急増することとなった。また、同楽曲をリミックス・パロディした動画も更に急増し、二次創作でも大きな人気を得ることとなった。同チャートにおいては、4月03日公開週で首位に初登場した後、3週連続で首位を獲得している。その後も数多くの同楽曲の二次創作が投稿され、上半期集計期間内は9週連続でTop10圏内へのチャートインを維持し、強力な二次創作が投稿されるたびにポイントを伸ばしていた。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は69万回再生、マイリスト数は3,200回を記録し、ニコニコ動画の総再生回数は73万回再生を記録している。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で199万回再生を記録している。ニコニコ動画におけるオリジナル動画の再生回数は上半期9・10位の楽曲と比較すると少ないものの、数多くの二次創作の投稿による二次創作ポイントを獲得した影響もあり、上半期7位へのチャートインを果たした。

8位・すりぃ「テレキャスタービーボーイ(long ver.)」

 8位は、2020年に投稿された楽曲、すりぃ「テレキャスタービーボーイ(long ver.)」が獲得した。2024年度上半期集計期間内では、2月にすりぃ本人が執筆した同楽曲の小説版が発売されたことや、4月に開催された"歌コレ2024春"では湯毛による同楽曲の歌ってみたが1位を獲得したことでも話題を集めた他、同チャートの上半期1位となった吉田夜世「オーバーライド」では、2コーラス目の映像で同楽曲の二次創作の映像の背景が引用されており、同楽曲がコンテンツツリーの親作品として登録されているなど、二次創作としての人気も高い楽曲である。同チャートにおいては、1月17日公開週で8位に登場、同曲初のTop10圏内へのチャートインを果たした後、翌週では4位に上昇。その後、Top10圏内へのチャートインを積み重ね、上半期集計期間内で14週Top10圏内へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は60万回再生、マイリスト数は3,400回を記録し、ニコニコ動画の総再生回数は546万回再生を記録している。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で4,900万回再生を記録している。こちらも、ニコニコ動画におけるオリジナル動画の再生回数は上半期9・10位の楽曲と比較すると少ないものの、二次創作による根強い人気もあり、Top10圏内へのチャートインを大きく増やしていき、上半期8位へのチャートインを果たした。

9位・john「春嵐」

 9位は、2019年に投稿された楽曲、john「春嵐」が獲得した。2023年11月にプロセカ内に収録された影響もあり人気が再上昇していた同楽曲。同チャートにおいては2023年11月01日公開週からTop10圏内へのチャートインを維持し、年間チャートでは15位にチャートインをしていた。本年度も、前年度の人気を引き継ぐ形で、2月07日公開週まで13週(2024年度上半期集計期間内では10週)連続でTop10圏内へのチャートインを果たし、特に12月20日公開週では同曲最高位となる3位を獲得した。その後はTop10圏内へのチャートインは減るものの、Top20圏内へのチャートインを重ね、上半期の集計期間内の26週中25週、ボカコレ2024冬開催期間に該当する2月28日公開週以外全ての週でTop20圏内へのチャートインを果たすロングヒットを見せた。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は169万回再生、マイリスト数は6,800回を記録し、ニコニコ動画の総再生回数は471万回再生を記録している。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で3,400万回再生を記録している。

10位・いよわ「きゅうくらりん」

 10位は、2021年に投稿された楽曲、いよわ「きゅうくらりん」が獲得した。2023年以前からいよわの代表曲として人気を得ていたが、いよわのボカコレやプロセカへの楽曲提供などによる人気上昇や、2023年7月にはプロセカに同曲が収録されたことなどをきっかけに2023年に人気が更に大きく上昇傾向となり、2023年間同チャートでは3位にチャートインした同楽曲。本年度も、前年度の人気を継続する形で、ボカコレ2024冬開催前の2月21日公開週までTop10圏内へのチャートインを15週(2024年度上半期集計期間内では12週)連続で続けており、特に12月20日公開週・12月27日公開週では2週連続で2位を獲得していた。ボカコレ2024冬以後はTop10圏内にチャートインする回数は減ったものの、Top20圏内へのチャートインを積み重ね、2024年度集計期間内ではTop10圏内に15週、Top20圏内には25週のチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は169万回再生、マイリスト数は6,700回を記録し、ニコニコ動画の総再生回数は887万回再生を記録している。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で5,800万回再生を記録している。このペースで再生回数が増加すれば、2024年度終了時点でのニコニコ動画における累計再生回数1,000万回再生突破も射程圏内である。

 以上、2024年度上半期ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20のTop10の楽曲をチャート面で解説した。なお、6月08日(土)の早朝より、ニコニコ動画は大規模なサイバー攻撃を受けており、影響を最小限に留めるべく、サービスを一時的に停止している。そのため、同チャートは、6月12日公開週より一時的に停止状態となっており、ニコニコ動画が復旧し次第同チャートも再開の目処が立つと思われる。
 まずはニコニコ動画が復旧し、同チャートが再開することを楽しみにしつつ、下半期もどのようなぎヒット楽曲が産まれ、どのようなチャート動向を辿るか、楽しみにしたい。

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