みのりの秋 その2

実りの秋 その2
帰宅の車中、ピシッと車体を叩く石礫の音。それは道沿いの樹木から落下するどんぐりの音だ。
どんぐりコロコロなんて長閑な音ではない。狙いすました狙撃手の一撃のような、鋭く硬い音だ。

幾千ものどんぐりが地に投げられ、根を下ろす場所を目指すのだけれど、実は親である大樹の株元に落ち着くどんぐりよりも、川の流れや動物たちに運ばれて遠く旅立つどんぐりのほうが、成長に適した日の当たる場所に根付く可能性が高くなるのだという話を聞いた。

我が家にも、親元をぽんと離れ、遠くの土地で枝葉を広げているどんぐりがいる。
どんな仕事をしているのか、どんな人と笑い合っているのか、どんな未来を思い描いているのか。
たまの帰省の数日と、時々思い出したように送ってくる謎の食べ物の画像での生存確認。 
そのわずかな情報から思い描く息子の樹影はいつも朧げだ。

親木はただ健やかにあれと若木を思う。
どの木もみな健やかに。

#秋のみのり
#どんぐり

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