見出し画像

「ちっちゃなトゲ」

ことの葉を紡ぐ朗読家つきのです。
今日は「カクヨム」に掲載している詩をご紹介します。
心の中にいつの間にかトゲが刺さっていませんか?
自分では気づきにくい心のうちを書いたものです。
-------

「ちっちゃなトゲ」

小さな子供が泣いている

それは子供の頃の僕

大切なおもちゃが壊れて泣いている

そんな小さな僕にママは言った

「泣かないの。新しいおもちゃを買ってあげるから」

その言葉で、ますます大きな声で泣き出した

小さな僕には分からなかった

ママの言葉がどうしてショックだったのか

でもママの背よりも高くなった今なら分かる

「悲しいね」

って、ママと一緒に泣きたかったんだと


ママは困っていた

小さな僕がいつまでも泣き止まないから

ママは泣き止んで欲しくて

代わりのおもちゃを与えようとした

でも小さな僕は泣き止まなかった

ママはイラッとして言ってしまった

「いつまで泣いてるの!」

その声に小さな僕はビクッとしていた

ママ、ママ、大好きなママ

代わりのおもちゃなんていらない

ただ、分かって!

僕が悲しんでること

分かって欲しかったんだ

翌日、小さな僕は遊んでいた

買ってもらったおもちゃと一緒に

新しいおもちゃは刺激的で

小さな僕は夢中になっていた

心の中にちっちゃなトゲを残したまま

でも、おとなになった僕は知っている

そのトゲが抜けることを

僕は小さな僕のそばに行き抱きしめた

「大丈夫。分かっているよ。」

呟いたとたん

ちっちゃなトゲはポロッと抜け落ちた

-------
読んでくださり、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?