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幸せの賞味期限

 「このフルーツタルトのケーキをホールでお願いします」
1年ぶり,2度目のセリフです.

 こんばんは,月待です.23歳になりました.
去年から,自分の誕生日にはフルーツタルトのケーキをホールで購入して1人で全部食べるという贅沢をしています.
色とりどりの宝石を詰め合わせたような煌めくフルーツタルトは、この世に存在する幸せ具現化オブジェクトのうちの一つだと思います.眺めているだけでも心が躍りますが,やはりケーキは食べてこそです.
わくわくしながらその完成された円にナイフを入れ,切り分けた1ピースをお皿に乗せます.はやる気持ちを抑えながら一口サイズにまで小さくした幸せのかたまりをフォークでそーっと口元へ.
うん.とてもおいしい.
まるっと全部,1時間足らずで食べ終えてしまいました.
実のところなぜそんなに胃に入るのかと言われてもよくわかりませんし,それは本題ではありません.

 私はタルトを少しずつ口へ運びながら,考えていました.
ホールのフルーツタルトを一人で食べる幸せを,「幸せ」として味わうことができるのは何歳までなんだろうか.来年はまだきっと,ぱくぱくっと食べ切って「美味しい,幸せ」と言えると思います.
それなら再来年は?
20代後半になったら?
30歳になったら?
私はホールのフルーツタルトを一人で食べて,それを幸せだと思えるでしょうか.

 未来のことはわかりません.
神様が教えてくれる訳でもありません.
でもきっといつか,ホールケーキを一人で食べることが「幸せ」でなく「苦行」になってしまう時が来る.それが仮に25歳だったとして,今私がここで「ホールケーキを一人で食べてみよう」と思い付くことがないまま25歳を迎えてしまっていたら,この幸せを知らないままの人生になっていたはずです.
ケーキに限らず,
「ラーメン,揚げ物,脂身の多いお肉などを,胃もたれを気にせず沢山食べる幸せ」とか
「24時間ぶっ通しでゲームする幸せ」とか,
「思いつきと衝動だけで,友人と共に体力任せの旅に出る幸せ」とか.
これらを「幸せ」として味わえる「賞味期限」がきっとあるでしょう.
23歳は,
「日付は誰も教えてはくれないけど確かにやってくる幸せの賞味期限」
を可能な限り見つけて,先延ばしせずにちゃんと幸せを味わうことを目標にしたいなと考えています.
この1年間で,私はいくつ幸せを見つけられるでしょうか.

 実は既に実行を決めているものもあります.

 よく,「連絡先を交換したらその日のうちに,遅くとも翌日には必ず連絡を入れろ」みたいなことを言われると思います.これは,知り合った相手との関係を構築・維持するためのタイムリミットである訳です.
こう見ると人間関係にも賞味期限がありそうですが,自分の努力次第で期限を延長できそうですね.賞味期限が切れる前にコンタクトを取って,
「あなたは私にとってどうでもいい人間ではありませんよ」
「あなたと関係を継続したいと思っていますよ」というシグナルを出して,
関係の期限を延長する,というのを繰り返せば良さそうです.
 しかし今私は,いくつかの人間関係を延長するためにコンタクトを取れる期限が切れてしまいそうだなと感じています.
 高校の頃に仲の良かった友人は卒業後も誕生日には毎年欠かさず連絡をくれています.今度会おうね~なんて言い合っているのですが,なかなか関東方面に帰る予定が立たずに先延ばしになってしまっています.ライブやコンサートは日付が決まっているので,先延ばしになんかできずに即夜行バスや新幹線を予約するのに,明確な日付が決まっていないと,いくらでも未来に向かって予定を押しやることができてしまいますね.
 でもこのまま,「また今度,時間ができたら」「新卒の間は忙しくて余裕が無いから」などと言っていたらいつの間にか責任が増えたりしてもっと忙しくなって,そのうち,そもそもお互いに貴重な時間を割いてまで会おうと試みなくなるような気がします.もし今このタイミングで会っておけば,再度縁を繋ぎ直しておけば,どんなに忙しかろうが他の予定を調整してでも会おうとするような関係性になれるかもしれないのに.ここにもきっと,友人との縁を繋ぎ直せる期限が,存在するかもしれない未来の幸せの賞味期限があります.
 忙しいと感じることもありますが,自分の性格上,今後は現在と比べて忙しさレベルが減少することは無い気がします.つまり,人生を俯瞰して見たとき,きっと今が一番時間があって一番暇.だから,私は今年その友人に会いに行こうと思っています.

これは宣言です.ここに書くか悩みましたが,記しておきました.
私が先延ばしにしないためにも.
読んでくれたあなたがもし誰かに会いに行こうと思い立ってくれた時,その背中を押すためにも.

 24歳の誕生日には,いくつ幸せの賞味期限を見つけたかをご報告できたらいいな.この1年間でこんなに沢山の幸せと出会いました,という旨の素敵な報告書になるんじゃないかと思うと今からとっても楽しみです.

ではまた.