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雨の音

 私の部屋の窓から、暗くて月も星も見えない空が見える。
 風音を聞きながら、雨を待つ。
 着信のない夜は、雨の音を聞きながら眠りたい。

 出会いは夕立の時。
 同じ茶房から、動けない人たちの中に私たちもいた。
 混んできた店の席を、人に譲って私と同席した。
 気になっていたからと、最初に目が合った時から。

 約束をして庭園の紅葉を、一緒に見た時も雨が降り、水鏡に映る影は寄り添って見えた。
 実際の私たちは、まだ一歩後を歩く距離。

 何度か顔を合わせていく中で、季節が移る冷雨に、ようやく身を寄せる。 
 寒さを言い訳に一歩近づく私を、受け止めてくれ、嬉しくなった。

 一緒に過ごす穏やかな日々。
 ベッドの中から、幻想的な小夜時雨を何度も眺めた。 
 そしてふたり、息づかいを感じて眠る。

 いつの間にか、目が合わなくなった私たち。
 春雨の様に、いつまでも降り続いて晴れ間が見られない。
 忙しいのはわかっていた。
 けれど、それとは違う気がした。

 手の中にあるそれが、着信を知らせる事があるはずもなく、思い出の中で雨の音を探しながら目をとじた。




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