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短編小説✳︎名前の由来①

雨音

アマオトと書いて
『あまね』と読む。

僕の名前だ。






母が産気づいた時は
さわやかな夏空の晴れ日だった。
支度をしているうちに
みるみる雨雲が現れ
ポツポツと雨が降り出した。

おしるしがあったからと
仕事中の父に電話を入れて
母はタクシーを呼んで産院に
向かった。

タクシーのワイパーは
忙しなく、右に左に雨粒を吹き飛ばす。
雨の日は、普段車に乗らない人も
利用するからか、道は混み
いつもなら10分で着くはずが
30分経っても半分も進んでいない。

少し母は不安になって、運転手に尋ねた。
「近道とか、無いですかね?
急ぎたいんですけど。」
「この辺は脇道も無くて
この道路しか向かう事出来ないんですよ」
「そうなんですか……」

余裕を持って
準備していたつもりの母だったが
初めてのお産でもあるし
一人では
だんだんと不安が募り出す。



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