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「いぬやしき」と明けの明星

「今まで経験したことは、すべて無駄じゃなかった!」
映画「いぬやしき」(2018年、 佐藤信介監督)を観た。主人公の犬屋敷壱郎(木梨憲武)は、上司からも仕事の失敗で呼び出される毎日。定年間近で、すぐにでもリストラされそうな状況のさえないサラリーマン。おまけに医者から余命3か月の末期がんを宣告されたが、家族からも見下されて誰も電話に出てくれない。家で話しを切り出そうとしても細かい文句ばかり言われて、壱郎は全くガン宣告の話ができなかった。


ある夜、犬屋敷壱郎は迷い犬のハナコと別れようと散歩中に、公園のベンチにいた娘の同級生の獅子神皓(佐藤健)と共に、未確認飛行物体(宇宙人)と衝突する事故に巻き込まれてしまう(そう言えば、「ウルトラマン」のハヤタ隊員もそうだった)。そして、ふと気が付くと壱郎は、改造人間・仮面ライダーのような不死身の肉体になっていた。空を自由に飛び回り、ターミネーターのような身体能力を発揮出来るようになった。
壱郎(木梨憲武)は、身体全身がマシーンとなってしまい、食事も普通に食べられなくなってしまい、本当の自分は死んだと自覚し落胆していた。そんなとき、死んだ命を救える能力があることを知り、ホームレスを助けて感謝されることに存在意義を見出して、その不思議な力を人助けのために使うようになった。それに対し、同じ体験をした高校生の獅子神(佐藤健)は、家族愛やイジメ社会が許せない気持ちになり、無差別に人を殺すルシファーのような存在となっていた。やがて殺人事件の指名手配となった獅子神は、母親を失い、同じように不死身の身体になった壱郎と最期の対決に挑む。暴走する獅子神は娘の命を狙おうとする中で、瀕死の状態で戦い続ける壱郎は、果たして家族を守る事が出来るのだろうか?


そんなSF映画ですが、日本の歴史上には不思議な力を持つ超能力者は実在しています。平安時代に万能の天才と呼ばれた真言宗の開祖・弘法大師空海もその一人です。
「阿波の大滝岳に登りよじ、土佐の室戸岬に勤念す。谷響きを惜しまず、明星来影す」(三教指帰、空海著)
空海は、山岳修行を経て沙門に虚空蔵求聞持法を授けられて、真言を100万回唱えて瞑想していると明けの明星が口中に入り、大自然と一体となった体験をしています。高野山を開き、密教で多くの民衆の病苦を救い、嵯峨天皇にも崇敬されました。現代では、サラリーマンのような仕事も大切な人生修行の一つです。

人知らずしてうらみず また君子ならずや」(論語)にあるように、一生懸命に仕事したからといって、必ずしも正当に評価されるとは限りません。そんなときにこそ、この名言が心に響きます。壱郎のように、平凡ながらも一途に仕事や家庭を頑張っていれば、思わぬ出来事が起こって、人生の新しいステージが始まるかもしれません。人生は何が起こるのかわからないからこそ楽しい!(敬称略)


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