ラサラスに願を込めて

 エピローグ


 昔から星が好きだった。

 手に届かない儚さと同時に雄大で美しい星々は、幼い僕の心をすぐさま奪った。社会人になった今でも、ふと夜空を見上げ、あの頃を思い出すことがよくある。彼女と、優香と旅をした15歳の夏の記憶、その記憶が今も頭をグルグルしている。
 彼女は今どこで、何をしているかな。もしかしたら誰かと結婚までして子供がいるかも。そうだとしたら少し嫉妬してしまう。

 8月19日

 蒸し暑さで、汗が頬を伝って腕に落ちる。

 ゴミ溜めみたいな日々を送ってきた僕を救い出し、どうしようのないダメ人間だった僕の価値を見出してくれた彼女に、僕は心酔しているのかもしれない。

 なぁ、どこに行っちまったんだよ。

 なぁ、 なぁ。  

 優香、僕はもう、大人になったよ。

 でも、やっぱり君がいないと死にそうなんだよ。

 お願いします、優香に会わせてください。

 そう星に願を籠めてみる。

 歩道橋の上。2、3秒祈って、叶うわけもないかと自分自身を嘲笑し、家へ帰ろうとした。


    「ねぇ、そこの君。今暇?」

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