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からっぽの中身を満たす、誠心誠意のピンハネ(転売ヤー編)

人類の歴史が始まって以来、ある種の人々が忌み嫌われていたことは、多くの残忍な歴史が物語っている。もちろん、現代日本においてもその例外ではない。その中で、政治的な正しさや、弱者への配慮等々、そういったものを全て吹き飛ばす、忌み物のカテゴリーが存在する。

すなわち、撮り鉄、転売ヤー、ラーメン評論家。悪趣とはまさに彼らをさすための言葉であり、彼らが無間地獄に落とされるところに投げ銭を払ってでも見たいという人々は、つきることが無い。

本記事では、その中で最も「経済性」が高い、転売ヤーについて論じたい。

転売ヤー、それは現代日本に生きる悪の化身であり、人間の皮を被った収奪者であり、そして有無を言わせず消滅させられねばならないと、数多くの人々がTwitterで怒りのポエムを書き連ねている。

注目したいのは、その存在自体が人を苛立たせる、撮り鉄やラーメン評論家とは違い、転売ヤーは純粋に、その利益の為に、嫌われ者となったことだ。

「買った値段より高く売る、これは卑怯で人の道に反する」

確かに、そうかもしれない。しかしながらこの人物はどうだろう。彼は人より安い値段で買った物を、高い値段で売ることで、世界的富豪となったのだ。

問屋と小売りの関係のように、ロットを小さくするなどというビジネスでも無い、純粋に買った株を、高く売ったのだ。しかしながら、この人物を「転売ヤー」として忌み嫌うことは無いだろう。

「貴重なチケットを、買い占めることで値段をつり上げている、だから悪だ」

NHKより、需要供給曲線について
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005310357_00000

これは、一理ある指摘である、転売ヤーが供給を意図的に絞る(チケットを買い占める)ことで、本来そのコンサートなどを見れたはずの人が押し出され、そして別の人が押し込まれたのだという。

ちょっと待って欲しい

需要と供給の関係は、上の図の通り、拮抗点が存在する。転売ヤーが介在したことによって、価格が不当に引き上げられるのであれば、供給が需要を上回るはずだ。要するに買えないコンサートに、空席があふれる現象となって現れる。

こうなった場合には、転売ヤーはチケットを予定通り売りさばくことができず、結局のところ損失を被る可能性が高い。

しかし、そうはならないのだ、結果として、単純に価格が引き上げられる

ここからが、転売ヤーというものの悪魔性を示している。あるコンサートのチケットが7,000円だとして、10,000円で流通したとしても、やはり満員となるのだ。

そう、経済学的な「需要と供給の拮抗点」がそもそも7,000円ではなく、10,000円以上であるとすると、不当な利益10,000−7,000=3,000円が見込めるというわけだ。

これが、転売価格が12,000円であったとしよう。同じく5,000円の利益が見込めるのだろうか?転売価格が20,000円であれば?いや、30,000円であるならばどうだろうか。

どこかには、需要と供給の拮抗点が存在する。しかしながら、流通価格をその拮抗点よりも、大幅に下げなければならないという、ある種の道徳律=ファンサービスが存在する以上、「行列」が発生し、それを逆手にとる転売ヤーが不可避に生じることになる。

かつて存在した、余りにも有名な行列。それは異国の地ソビエトに存在した。彼らは品不足と貧困故、どこまでも長い行列に並び、自分の番が回ってきたときに品物を受け取れることを心待ちにしていたのだという。極めつけは、彼らが「何か」に人が並んでいるのを見ただけで、並び始めたという話である。

確かに、ソ連人の生活水準は高いものではなかったし、彼らは貧乏だった。しかしながら、彼らは、並んで自分の番が回ってきたときに「財布の金が足りない」心配が無かったのだ。だからよく分からない物でも並んだし、順番が回ってさえくれば、何かを手にすることができたのだ。それは、全ての物の価格が、需要と供給の拮抗点より大幅に低く設定されていたからに他ならない。

そこには、全ての人民の生活を保障し、引き上げる、という社会主義国の(結果として実現不可能であったが)高尚な、タテマエが存在していた。

現代日本において、賞味期限も存在せず、そして店先に並べば、棚がたちまちのうちに空になる商品が存在する。ガンプラである。やはりこのプラモデルも、ファンサービスとして需要と供給の拮抗点を大幅に下回る価格で提供されているのだ。

海外に持ち出せば高値で売れ、国内の闇市場に流しても高値で売れる。まさに社会主義国の名産品というほか無い。

何故、バンダイはガンプラの価格を自由化できないのか?それを縛る日本人民の道徳律について、次回の記事で分析したい。

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