ロシアのおともだちと、地球の裏側の美人スパイについて

ウクライナ国境に、ロシアが大軍を集結させている。アメリカの情報機関によると、本格的な侵略が始まれば、どうやら首都キエフは二日で落ちる可能性が高いという。

報じられるところによると、ロシアはアメリカに対し、ウクライナの永続的なNATO非加盟を確約するように迫っている。もちろん民主主義の守護者を自認するアメリカが、そのような頭ごなしな要求を受け入れることができないことは、プーチン氏ご自身がよくご存じだろう。

こういった分析は、Twitterを散々盛り上がらせている”コスメ女子”こと「ユーリィ・イズムィコ」先生を始め、その道に生きる専門家たちの分析を参考にされたい。

この、強大な大国が大軍を率い、無慈悲に小国を恫喝、侵略するという19世紀的ムーブが、良識ある人々の怒りをかわないわけがない。「力による現状変更」というタームを引っ張りだし、善良なる市民の胸に高らかに掲げ始めた。政治家たちがこのような動きをくみ取らないわけが無く、国会決議を通じて我が国も意思を表明することとなった。

しかしながら、これらは地球の裏側の話である。ドイツ人がソーセージを食べるのをやめようが、フランス人がフォアグラを守り抜くための熾烈な戦いを繰り広げようが、イギリスの首相がステイホームを唱えながら盛大に飲み会を開いていようが、ごく一部の国際関係に関心のある自称有識者たち以外には、遠すぎて響きにくいテーマであるに過ぎない。

だが、我々はグローバルな現代に生きる市民だ。今ここで、まっとうな人間として何かをすることが求められている。とはいえ、強大なるロシアの軍隊を前に、キエフに飛んで、義勇軍に入隊するような物好きはそういないだろう。

そこで、瞬く間に日本語空間のネットミームと化した、「ウクライナのお姉さん」である。この絵をみて、「いいね」をクリックしないという判断が、まともなる市民に可能であったか?一部の情報通だけが、このアカウントの過去や背景を紹介していたが、少なくとも現代を生きる、善良なるグローバル市民である我々は、「ウクライナをサポートください♥」というタームに反対する余地はない。

消されてしまったTwitterの投稿より、この写真の投稿だけではnoteもメルマガも売っていない

あまりの「いいね」の数に、香港で、現在収監中の女性活動家を頭に描いた方も多くいたことだろう。さすがに中国・香港は我々の隣国であって、関心のある人や、仕事、あるいは親族として関わる人は多いはずだ。

その連想からか、「ウクライナ政府による情報工作ではないか」という、まことしやかな噂が飛び交うことになった。ただの美人の写真一枚に対してだが、ロシア=皇帝がスパイのスパイランド=それと戦う国=やっぱりスパイランド、という我々日本人のあやふやな国際理解が、その陰謀論を急速に膨らませることとなった。

だが、本物のスパイは、ネットで「いいね」をぽちぽちしてもらうようなことだけに、わざわざ労力を払うだろうか。少なくとも、私がプーチン氏の立場であれば、「美人の写真を載せて、五万個日本からイイネを集めました」というエージェントの報告に、手元の赤い大きなボタンを押して、パカッと開く床でこたえたい。

いかなる国も、外国に自身の理解を深めて貰う、あわよくば協力的なスタンスを取って貰うべく、派遣された外交官は(広い意味でのスパイ=工作員を含め)しのぎを削って仕事に励んでいる。

そこでのKPIは、決して「いいね」の数では無く、主要な政治家へのコンタクト、読者数の多く、影響力の高いマスメディアへのアプローチなどに設定されるであろう。なんと言っても現職の政治家が政策を決め、その政治家は民主制の国においては、世論を参考にしながら進めるほかないのだ。

ここに、「親ロシア」として、”良識ある”国際関係の学者、関係者たちから忌み嫌われている方々の記事のサンプルを掲げた。こういった記事は、以下の通り、ロシアの思うつぼであり、我々日本人へ意図的に流される情報戦の残骸であるという。

今を生きる善良な市民に、求められる判断のハードルは、日に日に上昇している。ロシアの動きが、大変よろしくないのは事実としても、我々は、ヤクザにボコられた「友達の友達の友達」にまで同情することまではできない。理屈上は「そのようなことを許していれば、我々もいつかヤクザにぼこぼこにされる」ということは理解はできるものの、佐藤優氏のような真顔の視線を向けられて、そのあやふやな理解の結論を保ち続けることができようか。

ここで、事実関係の認識について、「明らかに過誤」である指摘は、確かに容易である。上記記事でもそれはある程度なされている。しかしながら「全てが過誤である」と結論づけるには物足りない。

事実として、ウクライナの一部の地域ではロシア併合を望む市民(と、難民となってキエフその他都市に流れ込んだ人々)が存在するのは事実であり、最西部の文化と最東部の文化には大きな違いが存在するのだろう。多くの国が、自国の一体性をナショナリズムの神話に依存しているように。

「力による現状変更」なるタームが、何故悪役の物となったのかー

イズムィコ先生の仰るところによると、今後日本が直接的に影響を受けるケースを踏まえて行動するべきであるという。だが、そこで想定している、「日本が苦境に陥ったときに、支援してくれる外国」とはヨーロッパ諸国では無いだろうか。

しかしながら、ヨーロッパ諸国が一枚岩、あるいは一つの勢力に統一されたことなど一度たりとも無いことは、皆様ご存じだろう。

脱原発・脱炭素を叫び、散々日本の高効率石炭発電所の輸出を邪魔した彼らは、せっせと原発を建てている。

何をポジショントークで言い出すか、何をやらかすか、信用ならない友よりも、動きが予想できる敵の方が信用出来る、という説も、あながち否定できる物では無いだろう。

ロシアは確かに、何一つ約束に信を置くことができない国ではある、しかしながら、ヨーロッパ諸国もまた、極めて信用ができないという側面を忘れてはならない。美人(の中の人)は、メルマガを売りたいだけかもしれないが、誰もが否定できない高尚な目的を訴える。

「ウクライナを、サポートください♥」

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