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アンノウン・サイリウム

 2023年8月26日 デビューライブ当日

 音楽は誰かが感じ取って何かが生まれるものだから明確な『成功』『失敗』はわからないけれど、私は『成功』という言葉では語りきれないほどの何かが生まれたと思っています。

 本番一週間前、リハーサル開始日。
配布された本番図に合わせて全機材をステージに設置して、音響と照明の確認をしたあの日、何というか現実とは思えないような感覚になりました。
焦がれて見ていた光の下に自分がいる感覚が信じられなかった。
 3バンドのトップバッターとして披露する私達の役割は『盛り上げ役』卒業ライブを迎えるバンドのステージに向けての準備運動。
重要な役で誰かが受けなければいけないのだとわかっていてもどこか寂しくて、どれだけ頑張ったとしても「みんなが見にきているのは私達のことじゃない」設定が悔しかったです。

 会場設営や本番のセットリスト調整のための確認事項。
・推定来場人数
・アンコールの有無

 先輩方の経験則から推定来場人数は100人、アンコールは確実に無し。
持ち時間は20分、配布サイリウムの数は50本。その数字にどこか現実を突きつけられた気がした。ただ真ん中に立つ以上、数字から感じざるをえなかった諦めを表に出すことは許されないような気がしました。

 流れるように過ぎた準備期間を経て、本番直前リハーサル。
暗幕の外に待つ観客と足音に駆り立てられる緊張を、数日前に感じた諦めで鎮める。そうしていることさえも悔しかったです。
「多くて100人」
それが普段通りの集客、卒業ライブを超えることはできなくて肩を並べることさえも難しい。
「全曲センターなんだよね、頑張ってね」
ステージ裏で掛けられた言葉に背を押されたのか、何かを抑えられたのかはっきりしたことはわからなかったけれど決心がついたのは確かなことだったと思います。

 幕が上がって目を開けると扉の外に溢れるほどの人『例年を超えた』ことを確信しました。
ステージ上での記憶は驚くほどなくて、勢いと音と光を浴びて包む爽快感に駆られました。
最前でサイリウムを振る人、足りなくなったサイリウムを補うようにスマートフォンのライトをかざす人、タオルを回す人。
全てが初めてで、初めて『ステージ』を感じました。

 ラストの曲終わり、聞こえたのは奇妙なほどに規則的な手拍子をコール。
会場に『アンコール』が響きました。
メンバーと相談後、自分達の役割を全うすると次バンドに繋ぐという選択肢を取りました。
開幕前に感じていた諦めを拭いきれた、後悔なくステージを降りることができました。

 ライブ後、集客数が300人だったことを知らされました。

 想定されていた何かを超えた最高のステージが恐れの先には待っていました。
『300人』私の今のフォロワー様と並ぶ数、『綴音』としての実感も同時に湧きました。
もっと大きなステージに立ちたい、たくさんの人に出逢いたい、恐怖も諦めも忘れたくない、ただただわからない何かを必死に形にして追っていたい。
まだまだ生きていたいと強く思いました。

 長くなってしまいましたが受け取ってくださりありがとうございます。
今日からまた綴音夜月としての活動を本格的に再始動していきます。
改めて、いつもありがとうございます
そして、これからもよろしくお願いします。

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