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色校正のため松本へ

もう遠い昔に感じられますが、連休中はどこにも行かずに、ただ近所をぶらぶらしていました。夕方の気候が最高すぎて、歩いてるだけで多幸感で満たされるという。良い季節ですなー。

そして連休明け、松本にある藤原印刷の工場へ向かいました。いよいよ写真集の色校正です。

校正にはいろいろと種類があり、今回は本機校正をお願いしました。本機校正とは本番と同じ印刷機、紙を使用して行う校正で、松竹梅でいう松コース。192ページ、148枚の全ての写真を一枚一枚チェックしていきます。

とはいえ色校正は初めての経験。当日は経験豊富なPD(プリンティングディレクター)にサポートしていただいての進行となりました。なので、感覚としてはPDさんとの打ち合わせ、認識のすり合わせ作業という感じ。

色校正に夢中で、じぶんではほとんど現場で写真を撮れませんでした。今回ドキュメント撮影をお願いしているカメラマン井上さんの写真待ちです。いや、こうなることは想像できたけど、本当にカメラマンお願いしてよかった。

前回の記事にもあるとおり、事前に東京の自宅にも校正が送られてきていたので、気になる点や疑問など、遠慮なくぶつけていきます。写真の色味はもちろんですが、今回は大きな前提として黒の締まりがテーマとなりました。

CMYKそれぞれ100%、合計400%までいくと、ただベタッとした黒になってしまうということで、ギリギリのディティールを残しつつ、陰影の色気を最大限に感じられる値。​​それが380%なのか、390%なのか・・・。そこは結局はPDさんにお任せということになりますが、じぶんの意図、考えはお伝えできたと思います。とんでもなく濃厚な時間でした。

PD花岡さんのデスク。データ補正の作業を少し見せてくださった。

制作の初期段階から一貫していえることですが、ここまでじぶんの写真に向き合うというのは得難い経験です。

ディスプレイ上で向き合う写真と違って、色見本(ターゲットとなるプリント)や、校正を前にすると「群」としての写真の実在に向き合うかたちになります。

それらの写真が、まるでじぶんの手を離れていくような、別の人が撮った写真をみんなで眺めているような、不思議な感覚。ごくごく個人的な営みが、社会とつながっていく、流動的なその過程を観察しているような感覚。

いずれは写真集として完成し、世界中のいろんな場所に届けられ、どこかの誰かの本棚に収まるわけなので、あながちその感覚は間違ってるわけじゃないのかもしれませんね。

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