純ドメ日本人フォトグラファーが英語インタビュー動画に出るようになるまで。
どうもこんにちは、Tuck @_tuck4 です。まずは、初めにこの動画をご覧ください。
こちらは、Adorama社が提供する「Through The Lens」という動画シリーズで、誰かと思えばなんとわたくしTuckが出演しております。Instagramとの出会いからプロのフォトグラファーになって、数々の企業と契約するまでの経緯を英語で語っています。
ニューヨークに拠点にかまえるAdoramaは、カメラと周辺機器を扱う量販店であると同時に、世界中のフォトグラファーに向けて動画コンテンツを発信しています。How toやロケ、企画ものと幅広いコンテンツの中でも、この「Through The Lens」はInstagramのコミュニティにフォーカスした内容で、日本のInstagramユーザーの間でも知る人ぞ知るシリーズでした。
そのAdoramaの動画制作チームから連絡がきたのが6月の終わりのこと。撮影の舞台を香港、日本に定めて数人のInstagrammerの動画を作りたいということで、その内の一人としての出演オファーでした。
こういう時に「よし行くぞ!」というじぶんと、逃げ道を探すじぶんが登場します。実は同時期にインドネシアへ旅して写真を撮るオファーもきていて、それを理由に出演を断ることも考えました。なにしろ全世界に顔出しで、しかも後に残る動画に出演することは、じぶんにとって大きなハードルだったからです。
結果的にはAdoramaの動画出演オファーを受けることになります。前提として、今まで独学ではあるものの、気合いとノリで英語は話していました。Instagramを通じて知り合った海外フォトグラファーとのハングアウトや、それこそ海外の制作会社と日本で仕事することもありました。それはそれ、いわゆるブロークンイングリッシュです。全世界に発信される動画の中で英語を話すレベルではありません。
ニューヨークから制作チームが来日して、実際の撮影を行う日が8月下旬。残された2ヶ月弱の期間で、じぶんのストーリーを英語で、魅力的に伝えるにはどうしたらいいか考えました。なによりじぶんはプロのフォトグラファーなので、未来のクライアントにも訴求する内容でなくてはいけません。ピンチをチャンスに、腹をくくりました。
というわけで、前置きが長くなりましたが、じぶんと同じように英語にコンプレックスを持っている方、それでも仕事や、人生を豊かにするために英語を使いたい方に向けて、この2ヶ月弱でやったこと、気づいたことをシェアしていこうと思います。
モチベーションをキープする
さて記事タイトルを見ておわかりかと思いますが、今回の内容は、LINE株式会社の田端信太郎さんの有料noteへのリスペクトが込められています。
純ドメ留学経験ナシの日本人が、入場料1000$の海外カンファレンスで英語でプレゼン出来るようになるまで。
実際に購入し、内容を読んで参考にさせていただきました。この後ふれますが、マンツーマン英会話も、このnote内で紹介された同じところに通うことになります。なにより、失礼な話ではありますが、流ちょうな英語とはとても言えない冒頭の動画にどれだけ励まされたことか。
気持ちが落ちそうになった時に、田端さんの動画を見て奮い立たせる2ヶ月間でした。
マンツーマン英会話でやったこと
さてそのマンツーマン英会話です。都内の某英会話スクールの無料体験レッスンを受けて即決。ちょうど夏休み期間の短期集中プランがあったので、20数万円を振り込んでさっそくレッスンをスタートさせました。2ヶ月とはいっても、合間に仕事もあるので時間はあまり残されていません。
いちおうスクール独自のカリキュラムがあるのですが、マンツーマン英会話の良さはカスタマイズできること。「2ヶ月後にインタビューを受ける」と状況を話して、相談しながらレッスンをすすめます。
1レッスンあたり40分で、じぶんの選んだ短期集中プランは30レッスンあります。一週間6レッスンというペースでプランをすすめました。数十人の在籍講師の中から選んでレッスンを行うのですが、まず最初の一週間でお気に入りの講師を見つけます。基準としては話していて心地良く、かつ的確な指摘をしてくれる講師。基本的に全ての講師がそのレベルなのですが、フィーリングもありますので。
お気に入りの講師が3人ほど固まった時点で、本格的にカスタマイズしたレッスンを進めていきます。
「Through The Lens」を見ていただけたらわかるとおり、インタビューとはいっても、聞き手がいてのキャッチボールではなく、事前にもらった質問リストを踏まえてじぶんのストーリーを組み立てる形式。動画は5分にまとまっていますが、実際には20分ほどカメラの前で話すことになります。
その質問リストを共有しながら、講師とのマンツーマンレッスン。何を話すか、どう話すかを考え、講師に自然な表現に直してもらって、レッスンを続けました。
ローコンテクストとハイコンテクスト
非常に興味深かったのが、ネイティブの講師が相手なので、文化レベルで気づきがあったことです。よく言われているように、日本はローコンテクストの文化(空気を読む)なのだと改めて気づきました。コミュニケーションの考え方が根本的に違うんですね。
ある講師から聞いたエピソードなのですが、ある生徒が夏祭りが雨で中止になったということをレッスン内で伝えました。
その生徒は「雨がふったので中止になりました」と講師に英語で伝えたそうです。日本人なら前後の文脈から「夏祭り自体が中止になったのだな」となんとなくわかります。ですが英語圏の人にとっては、不完全なんですね。
「夏祭りは行われたけど、雨だったので本人が行くのをやめた(中止)したのか」
「夏祭りに行ったのだけど、雨だったので浴衣を着るのを中止したのか」
「雨で夏祭りが中止になったのか」
実はネイティブの聞き手は、このいくつかの選択肢の中で迷ってしまうそうです。より一歩踏み込んだ説明が求められるというか、他に解釈の余地がない表現を使うべきなんですね。単一民族の日本と違って、多文化、他人種の国であることも背景としてあるのでしょう。
じぶんのレッスンでもそうでした。Instagramで日本の素晴らしさを発信していこうと思ったことについても、「なぜそう思ったのか?」「具体的にそう思ったエピソードは?」など、次々講師から突っ込まれます。
動画内で「One day, one of my favorite photographers…」とあるのも、そのあたりを踏まえて内容に加えました。改めてハイコンテクストの視点で動画を見返してもらえると面白いかもしれません。
レッスン以外の時間
レッスン以外の時間は、今回話す内容を書き起こして、ひたすらそのテキストを読み上げます。もちろん音読で、何度も何度も同じフレーズを感情をこめて話します。イメージとしてはタランティーノの映画「レザボア・ドッグス」内で、おとり捜査のためにギャングに取り入る練習をするティム・ロスです。あんなカッコいいもんじゃないすけど。
話す内容はiPhoneアプリでも録音します。じぶんの発音を確認し、修正、再生、修正、再生の繰り返し。出張の新幹線の中なども、その録音を聞きながら過ごしました。
あとはひたすらリスニング。「Through The Lens」のこれまでの動画をループ再生。じぶん自身が話す内容の参考にもなりました。それにしても、Instagramというプラットフォームから、これだけ個性的なフォトグラファーが生まれている現状は興味深いです。ぜひ全エピソードを見てもらいたいな。もういちどリンクを。
いざ撮影へ
いよいよその日がやってきた、という感じの8月某日。じぶんの動画撮影は2日間で、1日目は東京で撮影しました。普段からモデルをお願いしている着物家の伊藤仁美さん(Instagram)とのシューティングの様子が記録されています。
2日目は舞台が京都の太秦映画村に移り、「江戸酒場」と題するイベントにて撮影を行いました。この江戸酒場は、職人、役者、アーティスト、料理人、僧侶、経営者、起業家、クリエイター、プロデューサーなど領域を超えた総勢250人以上の、いまをときめく才能が、限定800人のゲストをおもてなしするという、一言でいうとクレイジーなイベントです。
ゲリラのチャンバラや盆踊りなどなど、Adoramaの制作チームも大興奮してましたよ。ちゃっかり浴衣も着たりして笑。インタビュー収録は準備したなりの結果かなと思います。
ただ、じぶんではアタリデータをもらって見てから、本編は一度も最後まで再生してません。あれだけ何度も何度も練習したのに、じぶんでは許せないミスがあったりで、とても見れたもんじゃない・・・泣。
最後に
いかがでしょうか。動画の公開から1日たった現時点ですでに再生回数も1万ビューをこえ、コメントも好意的なもので安心しています。直接のメールもたくさんいただきましたが、「あそこ間違ってるよ」なんて言って来る人は一人もいません。
もし今回インドネシアに行っていたら、金額的にはプラスです。逆をいうとこの動画に出ることで、英会話レッスンに払った分を含めると数十万円の赤字になったということです。あとは時間も費やしましたよね。
でもその結果この動画が出来上がって、後に残っていく。長い目で見るとプラスに転じていくんだろうと信じてます。こういう選択の連続が、充実したフォトグラファー人生につながっていけばいいなと思う次第です。
というわけで英語にかぎらず、何か一歩踏み出そうとしている方の励みになれば幸いです。まぁでも、もうちょっと喋れるようになりたいかな。勉強続けないと。
写真集「PERSONAL WORK」を出版しました。 http://usetsu.com