本当の自分
※このnoteは精神病治療について、自分の患者としての経験をもとに書きます。
精神病治療、特にその治療の最初の方によく起こることです。
自分の判断で薬を飲むことを止めてしまう。
もしくは、薬、飲みたくないなぁって思う。
病気はたくさんあるけど、この「薬飲むのを止める」を高確率でやるのは、精神病なんですね。
インフルエンザだと起こらないんです。
検査をして「インフルエンザ〇型陽性」って結果が出た後に、「インフルエンザの薬は飲まないです。自力で治します」って言う人、ひとり暮らしの引きこもり以外、迷惑じゃないですか。
(それとは別として「病院に行かない人」はいます。それはまた別の話)
ではなぜ、精神病の場合に「薬、飲まない」が起こるのか。
理由は2つです。
薬の副作用がキツいから
元の自分ではなくなったような気がするから
です。
1 の副作用キツい問題については医者と話し合って別の薬を試すなどするか、妥協するしかない。副作用は体質ガチャです。
問題は 2 の
「元の自分ではなくなったような気がするから」です。
精神病は「心」ではなく「脳という臓器」にバグが起こる病気です。
人は脳で考えたり感じたりするので、
その脳に作用する薬を飲むと
気分や感じ方が変わります。
薬によって強制的に、気分や感じ方、ものの考え方を変えられてるような気持ちになります。
そして「アレ?元の自分と薬を飲んだ自分は違うような気がする…元の自分に戻りたい!本当の自分に!」
と思って「薬を止めたら元の、本当の自分に戻れるのではないか」と、薬の服用を勝手に止めてしまうのです。
これが精神病治療の、最初の方でよく起こります。
俺もやりました。
なんか自分が気持ち悪くて。
前の自分、元の自分、本当の自分と違うような気がして。
精神病であるとか、健康であるとか関係なく、
「本当の自分」って何ですか?
どのような状態を「本当の自分」と捉えるのですか?
…という問いに、サッと答えられる人は少ないと思います。
人の心の状態は常に変わっているし、1日の中でもコロコロ変わるし、
曜日や季節や出来事や人との出会いや触れるコンテンツや年齢によっても変わります。
ハッキリした「本当の自分」なんて無いのですよ。
答えが無いから、「自分さがし」なんてものがビジネスになるのです。
ツイッターのアカウントを「〇〇アカウント」と定めて、「〇〇のことしか呟かない」って決めるやつ、あるじゃないですか。
あれは「自分には他の面(顔)がある」とその人が気付いてるからです。
その「他の面」があと何個あるのか?…と考えていくと、
無限にあると思うのですよ。
立方体で考えると球体に近い多面体になるんじゃないですかね。
精神病治療の話に戻ると、
元の自分、本当の自分に戻りたいからと薬を止めても、
元の、本当の自分には戻れないのですよね。
なぜなら元の、本当の自分があやふやなので。
厳しいことを言うと、精神病の薬を飲むハメになってる時点で、
「自分」の定義が以前よりかなり怪しくなってるんです。
精神病治療は薬を飲むしかありません。
それが一時的なのか、半永久的なのかは分かりませんが。
脳のバグを修正してくれる薬を飲むと、イメージとしては新しい脳になります。
感じ方や考え方も新しい自分になります。
その新しい自分が、ちょっと不本意かもしれない。
でもそれが「病気を受け容れる」「自分の病気と付き合って生きていく」ということです。
ただ、精神病に関係なく、
特に持病のない健康な人も
「今の自分にめっちゃ満足している人」っていないと思います。
どこかで、
「自分なんてまぁ、こんなもんだろう」と折り合いを付けるくらいが
ちょうどいいんじゃないですかね。
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