発明されてしまった

1970年生まれの俺が子どもの頃、初めてハマった漫画は「ドラえもん」だと思う。
「小学〇年生」や「コロコロコミック」などで読んで。

今は映画作品などでスケールが大きくなってしまっていると思うが、「ドラえもん」はそもそも、経済的にはとても標準的な家庭の子どもの生活に様々な「発明品」が入ってくる話である。

「ドラえもん」に出てくる発明品で何が一番欲しい?
みたいな話を誰もがした、または1人で考えたことがあると思う。


小学3〜4年生になる頃から、俺は

「もしこんなモノが発明されたらイヤだなあ。毎日がイヤになるだろうなあ」
と、人知れず考えていた。

どんな発明品かというと、
「人が頭の中で考えてる言葉(本音)が透けて見えてしまう透視メガネ」
である。

俺はメンタルが図太くない。
人が自分のことを本当はどう思っているのか、過剰に気にする人間だった。


そして時が経ち、90年代の後半、
人間はその「人の頭の中が透けて見えてしまう透視メガネ」を発明してしまい、そしてその発明品は一般庶民の手に渡ってしまった。

インターネットである。


小説家や作詞家、漫画家、脚本家、評論家、言葉を生業とするプロの人たちの頭の中の言葉は読むことができた。昔から。
でもそれらの言葉がその人の本音かどうかは別だし、

人の心は一定ではない。
心の状態はその時によって変わる。


人間は美しい言葉よりも汚い言葉に引っ張られてしまうところがある。


俺は自分の中の汚さを知ってるが故に、
人の頭の中を覗けてしまう、このインターネットからは距離を置いていた。

具体的には「2ちゃんねる」などの掲示板はほとんど見たことがない。

インターネットは頭の中の言葉を誰でも書けてしまうことに加え、
匿名である。
自分の言葉に責任を持たなくていいのだ。

どんな罵詈雑言が書かれているのだ?絶対に見たくないぞ?
…とインターネットの掲示板は見たことがなかった。


2000年代の中頃だったか、テレビの討論番組で
伊集院光が「インターネットの匿名を廃止してほしい」
という意見を述べていたのを覚えている。
それを見て、インターネットって怖い場所なんだろうな…と思った。

インターネットはネットショッピングやユーチューブで懐かし動画を見るくらいしかやってなかった。

結局は2016年頃からツイッターを始めて、今しているようにインターネットに言葉を書くようになってしまいましたが…


俺のような「インターネットが途中から登場してきた世代」とは違い、
物心ついたら既にインターネットがある世代はインターネットに対しての感覚も違うとは思うが、

生き辛い時代だと思う。


インターネットが当たり前の現代が「生き辛い時代だろうな」と思う理由は2つあって、


1つ目は「人間の頭の中が無限に見れてしまう」ということ。
当然、「ネットに書いてること=ウソもあり」というのは知った上で。

でもやはり、キツい言葉はキツいし、
汚い、悪意のような言葉は読むのがツラい。
一般人の、素人の、剥き出しの言葉だし。 
ネットで「人の悪意」に触れて
「汚いことを考えてる人間は自分だけじゃなかったんだ〜」と安心する人はいない。
いるかもしれないけど。
俺みたいな人間は「ネットの悪意の言葉」に引っ張られて、自分の中のドス黒い感情が触発されて情緒を乱してしまう。
そんな人間を「弱い」と一蹴する人もいるけど、それもネットの悪意の1つ。


2つ目は、「井の中の蛙にもなれない」こと。世界が見え過ぎている。

いやだって…10代の多感な頃から、同世代の、または年下の凄い人を無限に見てしまうことになるでしょ。
しかも一般人の凄い人たちを。

俺は高校1年生の頃に、知らない先輩が教室に突然やってきて
「ディープパープルのスモークオンザウォーターのギターソロを弾けるっちゅうのは、お前か!凄いな!一緒にバンドやらんか?」
みたいなことを体験してる。
「ギターが弾ける」ってだけで凄いとか言われたり、場合によってはモテたり…
今はユーチューブのショート動画見てたら子どもがピロピロとギター弾いてる動画とか見れてしまうし、
「ギターが弾ける」こと自体は何も凄いことではないことが、バレてる。

いろんなことがバレる。
自分が凄い人間ではないこともバレる。

「自己肯定感」なんて言葉、無かったし。
「自分に自信がある / ない」みたいな表現はあったけど。

例として「ギターが弾ける」を挙げたけど、

実際あるでしょ。
自分の容姿に関することとか。

今って「このクラスで一番カワイイ」とかあんのかな?って思う。
インスタを少し見ただけで、何をしてる人なのかも分からない世界中の綺麗な人が無限に見れてしまうだろうし。

井の中の蛙に馬鹿にする人が多いけど、狭いコミュニティの中で、相対評価で「自分って、すごいかも」と思うことは、そんなに悪いことではないと思う。
インターネットが無い時代はみんなそうだったんだし。


メンタル強ツヨ自信たっぷり人間には関係ないかもしれないけど、
そういう人ってインターネットやらない印象もあるし。


大変な時代だねぇ、ってふと、
暇があればスマホ見てるくせに思う。



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