「コンビニ人間」/ 書籍とAudibleでの比較
※小説「コンビニ人間」のネタバレを含みます。
Audible(オーディブル)の3ヶ月無料体験を先日から始めた。
「ツイッターを始めてから小説が読めなくなった」という悩みから始めたのだが、その理由は今回は省く。
最初に宮部みゆきの「火車」を聴いた。三浦友和が朗読してるやつ。
素晴らしかった。
全部聴くのに15時間半かかる、というのを見て「長過ぎる」と思ったけど、聴いてみればそうでもなく、
1週間程度で聴き終えた。
去年、妻夫木聡主演で映画化された小説「ある男」を読み終えるのに半年以上かかったので、それに比べたらとても短期間で本を読めた、とも言える。
オーディブルは「本を聴く」というコンセプトだが、
俺は「小説のラジオドラマ化」のように感じた。
朗読者が1人で読んでるので1人ラジオドラマ。
次に「コンビニ人間」をオーディブルで聴いてみた。3時間42分。
朗読は大久保佳代子。
3日くらいで聴き終えた。
予備知識ゼロで聴いた。
聴き終えた後、「読書メーター」というアプリに読了の記録を付けてるのだが、
読書メーターは読んだ人の感想も読める。
映画のフィルマークスなんかと同じ。
単行本、文庫本、オーディブル版の順で並んでいる。
試しに単行本の感想とオーディブル版の感想を読み比べてみた。
※ここから「コンビニ人間」のネタバレを含みます。
単行本の感想とオーディブル版の感想に違いがあると思った。
多くの感想があるので一概には言えないが、傾向として
単行本(書籍版)の方は
・おもしろかった。一気読みした。
・考えさせられる。
・主人公はASDや精神疾患ではなく、「こういう生き方をしている」人だと思う。
という感想が目に止まった。
オーディブル版の方は
・途中から出てくる男性が酷すぎる
・主人公は深刻なASDだと思う。今後が心配だ。
という感想が目に止まった。
俺もオーディブル版を聴きながら
「主人公、特性が強すぎる。これはちょっと…どうやって生きていくんだ…」
「途中から出てくるシラハという男、こんな酷い言葉が次々と出てくる奴、いる?…主人公に『言いやすい』から人を選んで言ってるんだろうなぁ…」
と、感情的なことを思っていた。
気になったので、「コンビニ人間」の電子書籍版を読んだ。
買ったことを忘れていた。
なんと、1時間半もかからずに読了してしまった。
「ある男」を半年かけて読んだ俺と比べると驚異的な速さだ。
さっき聴いて、ストーリー(文章は全く同じ)が頭に入ってたのもあるけども。
文字の小説の方で読み直して気付いた。
この「コンビニ人間」という小説は、とても無機質な文章だ。
その「無機質さ」がオーディブルになると消える。
朗読者の読み方がどう、という問題ではなく、
人間っぽくなる。
オーディブル→文字の本
という順で読んでみて、
当たり前だけど、印象が違いますね。
例として、小説から抜き出すと
・二つ下の妹は、私と違って、「普通」の子どもだった。
・「どうすれば『治る』のかしらね」
(「コンビニ人間」より)
上の文章の、「普通」の「」の部分や、『治る』の『』は、オーディブルだと、見えない。
また、「なおる」も「治る」なのか「直る」なのか、オーディブルだと見えない。
この小説のテーマは「普通とは何か?」みたい。
やはり「声」は感情を伴う演技になるのだな、と思った。
聴いてると、書籍版を読むより自分が感情的になってるのが分かった。
それは悪いことでは、ない。
オーディブルだけでもよかったのだけど、電子書籍も持ってたので読み比べてみた。
書籍版も読んでから思ったけど、
朗読者を大久保佳代子にしたのは正解だと思う。
女優より、良い人選だと思う。しっくり来た。
書籍版を読んだ時に、重要な登場人物(酷い男)の名前が「白羽」で、
え…読み方は「しろばね」?「しらはね」?…何?
とか思った。
さっきまで音声で「シラハ」と聴いてたのに。
こういうのも、本を読むのが遅くなる原因なんだよなぁ…。
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