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[信頼] 息の合った演奏

前書き

「息の合った演奏ですね」などという言葉が交わされることがありますね。
奏者がふたり、あるいはそれ以上いてお互いがよく噛みあい合致していて心地の良い結果を産み出したときに用いられる言葉です。
いつ誰と演奏したときでもそういわれるほどになりたいものですが、自己評価ではそうなかなかうまくいくものではありません。
この「息が合う」ことについて、考えてみたいと思います。

息を「合わせる」


ここではシンプルに、管楽器奏者(ボーカリストでもいい)とピアニストのデュエットを考えてみましょう。
おおかたの場合ピアノは大きな楽器なので舞台の後ろ側、管楽器奏者はおおむねソリストなのでピアノの前に立ちます。
このとき、ピアニストからソリストの背中が伺えるような位置に配置しますね。

わたしたちがよくやるジャズの演奏などでは演奏を始める前に「1,2,,」とどちらかがテンポを示します。
でもクラシックの演奏の場合はしませんね。ジャズでもしないことがあります。

ピアノによるイントロがない曲の場合、カウントをしていないのにどうして最初の1音目から同時に音が出せるのでしょう。
何度も何度も繰り返し二人で練習しているからでしょうか。
もちろんそういう方もいるかもしれませんが、多くの場合はピアニストがソリストの1音目の発音のタイミングを「観て」います。

管楽器を吹く前、声を出す前には必ず息を吸います。
息を吸うと背中が膨らみます。
それを観て一緒に息を吸い、どこで息を吐く(声を出す、音を出す)のかを見極めているのです。

いろんな出方


音にはいろんな出方があります。
速い曲、遅い曲にとどまらず、強い音、弱い音、おおきな音、ちいさな音(強い音と大きな音は違うものですが、その話はまた別の時に)。
それらはどうやって知るのでしょう?
楽譜に書いてあるからわかる?それともその曲はそうやって吹くものだと決まってる?

ジャズはもとより、クラシックだって、同じ曲であってもひとそれぞれの表現がありますよね。
まぁ、よっぽど突飛なことだったら事前に打ち合わせで言うかもしれません。
でもほんの少しの感情の機微で、打ち合わせとは違った始め方を体が欲する場合だってあるでしょう。
すでに壇上に上がって楽器を構えた時に、湧き上がる欲望に従って予定外の始め方で吹くことを決めた場合、どうやってそれをピアニストに知らせますか?

息の吸い方を「見せる」


息は、ふつうは吸ったときと同じ感じで出ていきます。
シュツと吹きたい人はシュツと吸うのです。
ふぅぅぅ~と吹きたい人はすぅぅぅ~と吸うのです。
それが自然なのです。

そしてそれをピアニストによく見せることです。
このとき顔を向けて吸い方を見せるよりかは、しっかりと背中を見せることです。
優れたピアニストはソリストの背中を視界の端に入れています。
気配で感じているとも言われたことがあります。
信頼して、迷わず吹くことです。

迷ったまま吹き始めるのがいちばんいけないことですね。


京都在住のサックス/フルートプレイヤーです。 思ったことを自分勝手に書いていきます。 基本、内容はえらそうです。