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君の手がくれた「おと」は...最終話

結婚式を無事に終え、2人は夫婦生活を満喫していた

遥(幸せだな〜)

○(俺もだよ?)

遥(もうすぐこの子も産まれてくるから家族3人で幸せにならなきゃだからね?)

○(俺はちょっと心配かな?耳が聞こえないし...)

遥(それはさ?2人で支え合えば大丈夫だよ)

俺の不安は少しづつ増えていく



ある日の夜...

遥「うっ...痛い...」

突然遥香を襲う痛み

○(遥香!)

すぐに駆け寄り遥香を抱きしめる

顔は痛みからか汗が吹き出している

手話も出来ない状況にあたふたする

○(どうしよう...)

遥「痛い痛い痛い...」

俺の腕を掴む遥香の力はいつ以上...

ブーブー

携帯が振動するとすかさず手に取り誰か確認すると...

さL「かっきー大丈夫?陣痛きたら痛みが襲ってくるから...」

陣痛...?ということは子供が産まれる!

テンパる俺はLINEに「助けて」とだけ送ると...

さL「急救車呼んだから私もすぐに行くね!」

姉貴が来るまで俺は遥香の頭を撫でたり汗を拭き取る事しか出来なかった

姉貴が来たのと同時に急救隊員が来て病院へ

分娩室前でオロオロするしか出来ない俺に姉貴は...

さ(大丈夫だから...ね?)

いつもの優しい姉貴の顔...

「さくら!」

さ「パパ、ママ!」

母「遥香ちゃんの両親には連絡したからすぐにくる」

父(○○、大丈夫だからな?)

○(うん...)

耳が聴こえてたら遥香に声をかけれたのに...

その後すぐに遥香のご両親が来て待つ事30分…

『おぎゃーおぎゃー』

俺以外が分娩室を見る

さ(○○産まれたよ。)

○(遥香は...遥香は無事なの?)

さ(先生出てきたら聞くから待ってて?)

しばらくして先生と両家両親が対面後、抱きつき喜んでいる

俺はまた...

さ(○○。もうすぐかっきー出てくるって)

○(うん...)

さ(そんな顔しないの。○○は夫であり、父親になったんだよ?
2人を守るのは○○なの。
耳が聴こえないとか関係ないんだからね?)

○(……)

さ(あっ出てきた)

遥香が分娩室から出てくる

○(遥香...)

遥(大丈夫。ちょっと休んだら会えるから後でね?)

疲れた顔をしていても優しい笑顔で振る舞う

そして両親は遥香の所へ、俺は姉貴と子供を見に行く

たくさんいる赤ちゃんから自分の子供を探す

さ(いた!○○あそこ...)

○(遥香と俺の子供...)

すやすやと眠る我が子

さ(○○に似てるかもね?)

○(そうかな?遥香に似てるでしょ?)

さ(2人の子供だから両方に似てるんだもんね?
それじゃあかっきーのところ行こっか?)

遥香のいる病室へ

中へ入ると寝ている遥香

さ(○○は隣にいてあげて?私はみんなを赤ちゃんの所に連れていくから)

椅子に座り遥香の手を握る

起きたら優しくあたまを撫でようと決めていたがそのまま寝てしまった



起きると外から光が射し込む

遥(おはよう○○)

○(遥香!)

遥(赤ちゃん見た?)

○(見たよ...遥香に似てた...)

遥(じゃあ美人になるね?あとは...名前考えなきゃ…)

○(名前は考えてあるよ?)

遥(早くない?)

○(楽しみだったから...)

遥(○○らしいね?)

この優しい笑顔は絶対守らないと...

コンコン

遥「はい?」

看「失礼します。赤ちゃんお連れしましたよ?」

遥(○○赤ちゃん来たよ?)

遥「夫は耳が聴こえないので...」

看「大丈夫ですよ。」

遥香俺の間に子供を置くと

看(短い時間ですけど家族の時間楽しんでくださいね?)

手話...

看護師さんに頭を下げて家族3人の時間...

小さい手に指を軽く乗せるとギュッと握ってくる

父親になった実感が一気に込み上げる

束の間の時間を過ごしてから看護師さんに子供の抱き方とか色々教わる

耳が聴こえない人は赤ちゃんの声が聴けないからその分他の事で協力する方法とか教わった

子供の名前は『彩』と名付けた

退院して1ヶ月するとある事に気付く

耳は聴こえるのか?と...

傍にあったおもちゃをふるとこちらを見る

聞こえてる...?

もう一度振るとまたこちらを見る

聞こえてる!よかった...

自然と涙が出てくる

彩...聞こえるんだね?

彩「あ〜ぅ〜」

遥(○○?)

隣に来た遥香に俺は...

○(彩の耳聴こえてる!俺と同じになってない。よかった...)

遥(うん。でも大変だからね〜これから...耳が聞こえない事を理解するまで時間掛かるし...)

○(大丈夫。俺は父親だもん)

遥(変な自信...でも3人で幸せになろうね?)





それから彩が5歳になる

彩「パパ!ぱぁーぱ!」

遥「彩?パパはお耳聴こえないからトントンって優しく叩いて教えてあげて?」

彩「お耳聴こえないの?彩の声聴こえない...」

遥「じゃあ秘密の魔法を教えてあげる」

彩「魔法...?」

それから遥香は彩に手話を教えていく

いつか彩が覚えて会話出来るまで仕事と育児をしながら...

早く君の手がくれる「おと」を楽しみに...

fin




あとがき

おと=幸せをテーマに書きました。

耳が聴こえない人の多くは補聴器をつける方もいますが、それを嫌う人もまたいます。

見た目には分からない事が多いです

でも、それでも幸せになれる方法はたくさんあるので、いつか好きになった人がそうであったら「おと」をたくさん届けたいですね?

漫画君の手がささやいているをオマージュしました

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