遊びの終わりは遊びのはじまり
2023年11月 こども芸術大学にて、3歳児から5歳児の子どもたち16名を対象に、アートワークショップを実施しました。
── マルコと大きなピザをつくろう!
私たちは、グループのメンバーから挙げられた「ピザで遊ぶ」というワードから、ピザを制作することに基点を置いたアートワークショップを企画しました。
本ワークショップにおけるねがいは次の通りです。
・仲間と作品を完成させて達成感を味わってほしい
・自由に描くことを楽しんでほしい
・描いた絵を通して会話を楽しんでほしい
このねがいを踏まえたうえで、本ワークショップは導入、制作、完成作品のフィードバックの3部構成で行いました。そして制作の中には、個人制作と共同制作の2種類を取り入れました。
まず導入では、ピザ職人のマルコ・マルゲリータに扮した、グループのメンバー1人が子どもたちに物語の概要についての説明を行いました。内容は、マルコが母国へ帰る前の思い出にピザをつくりたいというものです。
制作では、子どもたちにピザの具材を想像して描いてもらいました。
私たちが設定したテーマは、「好きな食べ物」でしたが、いつの間にか人の顔や新幹線などの絵も描かれ、「自分の好きなもの」というテーマに変わっていました。そのようにして、出来上がった具材をピザに集め、大きな1枚のピザとして完成させました。ここで、先述した個人制作と共同制作を実施したことになります。
私たちは、ピザのビジュアルに変化をつけるため、事前にチーズに見立てた薄用紙を仕込んでおきました。その反響は想定を遥かに上回り、悲鳴じみた声が飛び交うほどでした。
本来は、子どもたちからフィードバックを受ける予定でしたが、ピースを高く持ち上げる様子や、ガブガブと食べるフリをするなど、チーズの演出を起点に自発的に遊びが生まれていきました。
私たちはチーズの仕掛けをサプライズ要素として施しましたが、それは子どもたちにとって単に形状の変化による喜びではなく、作品制作への満足感につながったと考えます。
最後のフィードバックでは、代表して3人からどのような点が印象に残っているかを聞きました。個人制作に主眼を置いた感想や、共同制作に対する感想など、それぞれの見解から「楽しい」を聞くことができ、本ワークショップにおけるねらいが達成されたと感じる時間となりました。
── 遊びの通過点
総括して、仕掛けの反響が想像以上であったこと、ねがいが達成されたことが今回良かった点として挙げることができます。一方、必ずしも「作品の完成=ワークショップのゴール」ではなく、すべての活動の中から遊びは生まれるものであると考えさせられました。つまり私たちが考えるゴールは、子どもたちにとって遊びの通過点であるということです。これからは、捉え方次第で全く異なる遊びが生まれることを念頭に置き、ワークショップをデザインしていきたいです。
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益子 莉緒
東北芸術工科大学 総合美術コース
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