雪の国

⎯ここは「スノーランド」。僕達はこの国で初めて出会った。本当に幸せだった。君はどうだったかな。最後まで一緒にいてあげられないのが本当に悔しい。本当に本当にありがとう。─

60年前、僕、24歳。
ある田舎で育った僕はふと目に入った森への入口につい入ってしまった。進んでいくと、寒くなって行くことに気づいた。さらに進むと雪が降ってきた。その時、1人の女性が目に入る。
「すみません。ここは何処ですか。」
「ここはスノーランドの入口よ。案内してあげる」
僕達は共にスノーランドを巡った。それはそれは楽しい時間を送った。彼女はソフィアというらしい。ソフィアは僕に今まで経験したことがない喜びをたくさんくれた。一目惚れだった。
「ここに住んでもいいかな。」
「もちろんよ!ここの住人は人間が大好きなの!」
その言葉に少しの違和感を感じたがそんなことは直ぐに忘れていた。
僕達はすぐに打ち解け、恋仲になった。彼女も僕を空いてくれているようだった。
1年がたったある日、彼女は言った。
「私、この幸せを失うのが怖いわ。いつかなくなってしまうのなら、これ以上思い出を増やしたくない。」
「大丈夫だよ。僕らはいつまでも一緒さ。僕は君を置いてかないよ。」
「うん、、、」
彼女はどことなく曇った表情をしていた。

それから20年、僕、45歳。
僕は年相応の見た目になってきた。しかし、彼女は出会った頃と変わらず、ずっと綺麗なままだ。
「君は素晴らしいね。いつまでも綺麗だ。」
「そうね、ありがとう。」
彼女は最近元気がない。いつも寂しげな表情をしていた。
「私もそうなりたいわ。出来ることなら、、、」
小さな声でつぶやいていたが、私は聞き取ることが出来なかった。
それからも僕達は愛し合い、何気ない日々を送った。

さらに40年後、僕、85歳。
僕はもうベッドで寝たきりになっていた。
それでも君は美しいままだった。そんな君の姿を見て、小さい頃に見た絵本を思い出した。それは雪山に住む妖精のお話だった。
「もしかして、君は妖精なのかい?」
冗談半分で言葉にした。
「ごめんね、ごめんね、」
彼女は何度も謝っていた。
「私、言えなかった。あなたと一緒に暮らしたかったの。人間じゃないなんて知れたら嫌われると思ったの。」
彼女は本当に妖精だった。
「大丈夫さ、それでも君が大好きだ」
僕の命が終わる。もうそんなことは分かっていた。ああ。君を残していくのが本当に嫌だ。心が痛い。自分なんてどうだっていい。今日ほど自分を無力に感じた日はない。
「大丈夫よ。絶対にあなたを忘れない。一生好きよ。少し遅くなるけどそっちで待っててね。本当にありがとう。」
彼女のそんな言葉に僕は救われた。
ああ、神様、お願いします。どうか彼女が幸せになれますように。
僕は覚めることのない眠りについた。


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