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【聴講記録】2017.12.28小浜のこれからの食を考えるフォーラム

 福井県小浜市で年末に開催された『食がまちを変える! 小浜のこれからの食を考えるフォーラム』を聴講してきました。まずは、食と旅をテーマにした雑誌『自遊人』編集長の岩佐十良(いわさとおる)さんの基調講演、島根県邑南町職員の寺本英仁(てらもとえいじ)さんや、アメリカを拠点に飲食店のプロデュースを手がける中東篤志(なかひがしあつし)さん、地元事業者がそれぞれ自己紹介した後にパネルディスカッションが開かれた。年末にも関わらず、地元中学生も参加し、全部で200名近い参加者が集まっていた。基調講演とパネルディスカッションのごくごく一部を今後のためにも記録として残しておきたいと思う。

基調講演

 柔らかな口調で語り出した岩佐さんは、2004年に新潟の南魚沼にオフィスを移転し、自身も移住した上で米作りから始め、2014年に南魚沼市大沢山温泉で引き継いだ旅館をリノベーションした「里山十条」をオープンした経験を踏まえて、小浜市が食を通じていかに魅力的なまちになるか、時代の流れを捉えた大胆な提案を発表してくれた。

 まず、今の時代、テレビや新聞、インターネットや雑誌ではなく、リアルな場が一番のメディアであるということ。今までは「ヨソが3万円ならウチは2万5千円」の勝負をしていたが、これからは「ヨソは関係ない。ウチが成立するためにはいくら」で勝負する時代になっている。これを成立させるためにはどうすればよいかというと、特定の人にしっかりとコミットすること。

 マーケットイン、プロダクトアウトという考えがあるが、ヨソの真似をするときには参考になるが、そんなことをしなくても自分たちやリアルな場自体をメディア化すればちゃんと売れる。里山十条では、冬は発酵食尽くし、春は山菜尽くし、夏は茄子尽くしといったように、食の面でも特別感を演出している。実は、新潟は日本一のナス作付面積を誇るが、 その割に出荷量が少ない。それは農家や地元での消費量が多いためであり、種類の豊富さやその貴重さは自他ともにあまり知られていなかったそう。そこに外からの目で光を当てて、美味しい料理を提供することで東京からわざわざ喜んで食べに来てくれる人がいるということらしい。

 ここで大切なのはそれをどう広げていくのかということだが、人に広がるため、あるいは伝わるためには、「共感を連鎖させる」ことがカギになるということらしい。岩佐氏は「共感メディア」、「共感マーケティング」と捉えている。里山十条では、同じインテリアの部屋はなく、全室別コンセプトで設えられており、雑誌的に言うと、各部屋で異なる「特集」が組まれている。特集がリアルな場で表現されているということのようだ。ここでも特別感を演出し、希少価値を伝えている。里山十条ではなかったものを生み出しているのではなく、もともとあったものを活かして、自分たちの資源を磨いてPRをしているだけだとおっしゃっていたのも印象的です。良いものは自然に広がる。

 広げるカギとしては、これまでも言われてきているが、やはりスマホの効果を最大限に活かすことを考えることが大切だ。テレビや新聞、雑誌のように一方通行の情報発信では人々の印象や記憶には残れない。先ほどの、共感の連鎖の流れに乗らないと、人々には届かないということを肝に銘じておかなければならない。

 これまでは、より多くの人が来るために頑張っていたが、これからは来てもらった人をどれだけ大切にできるか、来た人のためにどれだけ頑張れるかが勝負になることを忘れてはいけない。里山十条は「地元住民」と「地方の潜在的観光資源」を「都市に住む人」とつなぐメディアであり続けているからこそ成立しているということを忘れてはならない。周りにどうしてほしいとかではなく、まずは自分たちをどれだけメディア化できるかを考える。その中で周りとうまくやっていける道を探っていくことが大切になる。

 観光を強めようとするときに、とあるリサーチでは旅行の最も多い動機は「おいしいものを食べる」ためで、外国人の来日動機も同様だということで、「ホントの味食べたよ!」というのが求められている時代だということだともおっしゃっていた。やるか、やらないか。やったもん勝ちだよ。

 小浜市は、なんといっても、へしこなれずし(古代ずし)!これをいかに資源化していくか!と最後に岩佐さんから鼓舞されて、とても内容の濃い基調講演は終わった。

パネルディスカッション

 島根県邑南町の寺本氏は、熱く語り始めました。「スター料理人を地方で育てる!」おいしい食材や食べ方は地方にこそあるという確信(ビレッジプライドとおっしゃっていました)のもと、地方から都市に供給している食材や人材を地方で使うための仕組みを生み出している彼が関わる取り組みの一つに「耕すシェフ」がある。A級グルメのまちとしての町おこしを進める中で、5年間で食と農の起業家を43人輩出、240名の定住に繋がり、3年連続社会増となっているのは、小浜市も大いに参考にしてまちづくりを進めていけると良いと感じた。

 また、ディスカッションの中で、「地域にはネガティブな人もいる中でどうやってうまく進めているの?」という質問に対して、超重要な極意を授けて頂いた。重要なのは「S・N・S」ですと。何かというと、「S=スピード、すぐやる」・「N=ネーミング、やりたいことをわかりやすく」・「S=ストーリー、共感を生む」。ローカルの動きをスピード感を持って分かりやすく、共感を連鎖させる。そのために、もう一つ重要なのが、事業を成立させること。成立させるために大切なのは「カネ・チエ・ヒト」。気を付けなきゃいけないのは、まちの魅力を高めるために、一人で独り勝ちさせないこと(それはもったいない)。スピードもってやる中で共感を得つつ、周りを巻き込むこと、それも重要だということで、熱い漢からの応援はひとまず終わった。

小浜の食を考える

 小浜については、妻が出身ということで、まだまだ自分自身知らないことだらけである。食についてもまだまだ知らないことだらけだ。それでもへしこやなれずしを食べたときには衝撃を受けた。今回の話はまんべんなく、押し並べて進める以上に尖がってやることの重要性が説かれていた。僕に何ができるかはまだわからない。でも、少し探りながらでも、できることをやってみる!つながりをつくっていく。そんなことも思いながら、まずは小浜の食を愉しんでいこうと思う。

 

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