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人生で初めて度付きのゴーグルを買った

最近、水泳にハマっていて、週に1〜3回くらいのペースで近所の市民プールに通っている。誰の目も気にせず、自分のペースで、ゆったりと泳ぎたいように泳ぐと、頭がとてもスッキリする。つらい筋トレをしなくても筋肉が自然とつくし、お金もたいしてかからない。この頃は、通勤カバンの中に用具一式とマイクロファイバーのコンパクトタオルをするりと忍び込ませ、仕事の疲れはもっぱらプールで癒している。

30歳にして、初めて度付きのゴーグルを買った。私の視力は両目とも0.1以下なので、普通のゴーグルではかなりぼやけて見える。しかし、輪郭がぼやけるだけで何となく見えていたので、特に不自由なく過ごしてきた。実家から持ってきたゴーグルが壊れたのをキッカケに、自分で初めてゴーグルを買うことになり、せっかくだから度付きのものを買ってみることにした。私は左右で視力が違うので、セルフカスタム式のゴーグルにした。女性の水着姿をよりはっきる見るためではもちろんなく、より安全に水泳を楽しみたいという真面目な理由からである。

今日、いつもの市民プールで、新しく買った度付きをゴーグルつけて、ハッとした。ぼやけていて当たり前だったプールの世界が、急に鮮明な映像となって目の前に現れて、これまで以上の情報が波となって押し寄せてきた。中年のおばさんの太もものたるみが振動する様子から、水泳部らしい筋肉質のお兄さんの脇毛の揺れまで、これまで届かなかった情報が届くようになった。これは、私にとってちょっとした革命的体験だった。

人生の中で「解像度が上がる」ことは、誰にとっても嬉しく楽しいことだと思う。単なる資格や聴覚といった次元の話ではない。例えば、カメラを手に持って被写体を探している時、これまで見過ごしていた日常の風景の美しさが見えるようになる。時には燃えるような恋愛や失恋をして、世の中の様々なものに込められている製作者のメッセージの意味がより分かるようになる。

私の友人で、中国の専門家を目指して中国留学をしている友人がいる。彼女の留学中の目標は、全ての省に旅行することだそうだ。その心は、今後中国についてさまざまな話を見聞きする際に、現地に行ったことがあればより鮮明なイメージを持って話を聞くことができるので、より多くのことを学べるからだそうだ。

30歳から何を目標にすればいいか分からなくなりがちだったけれど、人生の解像度を上げていくことは、終わりがなく楽しい。世の中に感動できると、生きてて良かったと心から実感できる。将来の不安だって、解像度を上げて見てみればなんてことのない取り越し苦労だったりする。見えないお化けは怖いけど、見えるお化けは怖くない。お化けじゃなくてゾンビだったらやっぱり怖いけど。