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田所、無料オンラインライブやるってよ

田所あずさアルバム「Waver」語り第2弾
そもそも、このアルバムを語る為にnoteを始めたのだ。

「Waver」和訳して”ゆらぎ”
 制作側も頻繁に発しているこの単語に、どこで聞いたことがある気がするなぁと感じていた。まったく頼りにならない自分の記憶を辿ってみる、大学のときの物理学みたいな講義だ、たぶん。午後のまどろみと難解さだけが記憶の片隅にポツンと残っていた、きっと単位は落としていたのだろう。
全然覚えていないので、少し調べてみる。

ある量の平均値は巨視的には一定であっても、微視的には平均値と小さなずれがあること。また、そのずれ。気体分子の熱運動、光の散乱、ブラウン運動などにみられる。

 ものすーごく簡単に言うと、物質の微細な世界にズームインしてずれを観測し、認識することでより物事の本質に迫ろうという感じだろう。まあ専門じゃないし詳しくないのでこの辺にしておいて。

 似たような視点で詩をひとつ思い浮かべる。ウィリアム・ブレイク「無垢の予兆」の冒頭から引っ張ってこよう。

一粒の砂にも世界を
一輪の野の花にも天国を見、
君の掌のうちに無限を
一時(ひととき)のうちに永遠を握る。

 一枚のアルバムに彼女のこれまでとこれからを。


 また彼女自身が今現在の迷いや葛藤といった、内的な事と向き合い表現した結果、浮かび上がるように外側世界の解像度も上げてくれたようにも感じた。

 ネットを覗いてみたり、周りの反応からもいつも以上に熱量をひしひしと感じる場面が多い。多様なリスナーひとりひとりの心のずれ、即ちゆらぎにそっと併走してくれているような作品になっていると思った。聴く人によっては勿論だが、聴くタイミングでも全然違う表情を見せてくれるアルバムだ。例えばふとした日常で、ときに励ますように、ときに慰めるように、ときに少し厳しい顔をして”調子はどうだい?”と気遣ってくれる相棒。勝手にそんな事を考えながら聴いている。
 

 少し曲に突っ込んだ話もしてみよう。このアルバムのキモは楽曲の完成度とリスナー側に委ねるイメージ解釈の広さの両立だと思っている。楽曲の完成度については正直音楽的素養が筆者にさっぱりないので、聴いて感じてくれ!としかいえない、残念。イメージのほうだが、例えば「ちっちゃな怪獣」だと深淵に落ちていくイメージなんだけど、その先に微かな希望が感じられたり、「クリシェ」だと違和感と幸福感という2つの全くかけ離れていそうな感情が同時に溢れていたり、「ソールに花びら」だとユーモアというテーマの中にアイロニカルな要素が、まるで花びらの周りを飛び交うミツバチのように飛び交っていたり。ひとつの楽曲テーマに色んな視点からのアプローチを感じる楽曲であり、歌詞であり、歌唱だ。

 そんな楽曲が続く中、後半に急にど真ん中ストレートを投げてくるのが忘れらんねえよ柴田さん楽曲提供の「ころあるこ。」なのだ。

 僕はこの曲を初めて聴いたときボロボロ泣いた。色んな思い出が走馬灯のように駆け巡る、想いが溢れる。この曲への感情は余りにも個人的すぎる、だからこそ長々とは書かないが、胸に抱えたまま大切にしたい。

 そして最後は前記事にも書いたWaver。限りなく透明に近いブルーなのだ(この表現が我ながら結構気に入った)

 長々と書いてきたが、これ!アルバムを引っ提げて無料で、オンラインでライブをやるんですって!多くの人に見てほしい!

 記事を〆ようと思ったんだけど、追記的になんとなく今の気持ちでも書こうかな。出会ったときデビューしたてで挙動不審だった彼女に(笑)とても惹かれ、あれよあれよでかなりの年月が経った。自分の個人的な環境の変化も大きくあったし、少し離れた期間もあった。何より誰かのファンでいることって内心とっても複雑な感情が渦巻くことも正直多い。でもこのアルバムを聴いたとき個人的になんか救われたのと同時に、これまで以上に強く、純粋に多くの人の耳に届いてほしいなぁと思った。心の奥底に「すとーん」って音が鳴った気がした。オンラインライブ楽しみだな。楽しみがあることはいいことだ。



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