#14. 「偽姉妹」を読んで
偽姉妹 ・・・・ ?
意表をついた言葉であるが、山崎ナオコーラさんの著書である。
たまたま手に取って読んでみたら、とても心に響いたのでメモとして記しておきたい。
〈メモ1〉
「叶姉妹や阿佐ヶ谷姉妹みたいになりたいの」
本文中に出てくる主人公のセリフ。普段は冷静で穏やかで、冷酷な決断を平然と下す主人公が、この場面では表面上では平静を装いつつ、興奮や不安、期待で心臓音が体中に響き渡っているのを外に出ないように必死に抑えようとしている姿が浮かんできた。
具体的な心理描写はないので上記は自分の想像だけど、この本の中で一番主人公が興奮しているシーンじゃないかなと思って、心に残っている。
〈メモ2〉
屋根だけの家
主人公たちの住む家の名称で、この本で書かれていることの多くはここで起こっている。
豊島美術館を思い出して、のっぺりとした白い床と、外と中がまじりあった不思議な空間をイメージしていた。中にいる人をおおらかに包み込む繭のような安心感と一体感。こういう家があったら行ってみたい。
〈メモ3〉
タイトル 「偽姉妹」
「偽」の文字を見ると、偽りのものは間違いで本物こそが正しい、と感じてしまい、変なタイトルだなと思った。しかし、本を読み終えた今あらためてこのタイトルを考えると、「本物とはいったい何か」、「本物がつねに正しいのか」「偽であるのは間違いなのか」という問いを逆に投げかけられているように感じる。
拡張家族というコンセプトで新しい家族像を試行するCiftや、重力ピエロの「俺たちは最強の家族だ。」が頭によぎったり、まだうまく消化できていないが、無理にわかった気にならなくてもよいと思っている。
以上読書メモでした。
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以下ネタバレを含むメモです。
〈メモ4〉
「お店のコンセプトです。偽物の姉妹で、喫茶店を開くんです。血の繋がりも戸籍も気にしないで、姉妹として社会に関わっていこう、っていうインスタレーションなんですよ。お客さんも姉妹として迎え入れるんです。人間同士なら、みんな、姉妹になれるんですよ。そういう理念を持って活動しているんです」
百夜は急にペラペラと適当なことを喋り出した。
ここもなんかイメージがわいた。物語的には言っている内容が重要だけど、流れ的にはここから始まる小田切、百夜のやり取りが読んでいて ”にっこり” するような展開でなんかよかったね、と思った。
〈メモ5〉
衿子と園子
どういう風にこの二人の人物設定したのかなと思った。さきに百夜とあぐりを決めてから考えたのか、先にこの二人を決めたのか。物語上、この二人はヒール的に見えがちだけど、上の百夜の ”お客さんも姉妹として迎え入れるんです。” のセリフと、お店の最初の客が衿子と園子だった(プラス園子が出ていくきっかけとなったのが百夜だった)、というのが物語の締めとしてうまく収まった感がある。(最後の章はエピローグ的な位置づけで、ここで物語は終わるイメージ)
〈メモ6〉
「たださ、数年で終わったお店のことを、『失敗した』って他人はみなすけれど、本人がどうとらえているかはわからないよね。『三年もやれて、嬉しかった』『一生に一度はお店というものをやってみたかったから、とても満足』『やりきった』って思っているかもしれないよ。数年で終わることが暗い話とは限らないかも」
成功の基準はなに?という話。成功かどうかを決めるのは他人じゃなくて、自分だよね、という話で、空手小公子 小日向海流にでていくる
「終わりを決めるのは他人じゃないだろ」 by 緒方
に近しいものを感じてしまった。
以上です。
楽しんで読んでもらえたらうれしいです