ボイルの法則と錬金術 ~ロバート・ボイル~

「同じ温度条件下で同じ物質量の理想気体の体積は、圧力に反比例する」―。この「ボイルの法則」は、中学校理科の教科書にも出てくるぐらい有名な法則です。

ボイルはもちろん発見者、ロバート・ボイル(1627-1691)のこと。「近代科学の祖」とも言われ、さぞかし偉大な科学者のようなイメージがあるかもしれませんが、実は彼の職業は厳密には科学者ではありませんでした。

彼の職業は「錬金術師」でした。今の私たちから見れば笑うしかない話ですが、当時は、他の金属を金に変えることができると考えられていました。彼自身も、その可能性を疑わず(ボイル自身は、本当はかなり懐疑的だったという説もありますが)、真面目にそのための実験を繰り返していました。

結果は、金に変えることなどもちろん出来なかったわけですが、一方で、そのために何度も繰り返した実験によって実験の精度が上がり、さらには実験器具の改良も進んでいきました。これにより、新たに明らかになった現象も数多くあり、その一つが「ボイルの法則」だったわけです。錬金術も、科学の進歩に全く貢献しなかったわけではないのです。

ちなみに、この気体の実験をするにあたっては、気体の圧力を変えなければいけません。真空ポンプを使って気体を容器から吸い出すのですが、このボイルの生きた時代は、ちょうど、「真空」に関する研究が進んでいた時代で、そのために真空ポンプの開発に取り組んでいる研究者も多かったのです。

ボイルは、助手であったロバート・フック(1635-1703)と共に、このポンプの開発にあたりました。フックと言えば、あれっと思う人もいるでしょう。そう、バネの伸び縮みと力の関係を示した「フックの法則」、そのフックこそ、彼のことだったのです。

参考文献:廣田襄「現代化学史」京都大学学術出版会


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