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教育に対するスタンス:PBLにたどり着くまで

今の私をかたちづくるもの2つめは教育だ(かたちづくるもの3つについてはこちらのエントリーを参考にしてください)。

今の私が「教育」で語るとすればProject Based Learning(PBL)と呼ばれる実践型の教育モデルだろうか。

学園祭の模擬店を擬似会社で運営し,会社の設立から運営,解散までの一連のプロセスを経験する創業体験プログラムと,学生自身が自らが感じる社会課題をビジネスで解決できるアイデアと実践を組み合わせたプロジェクト(社会課題を解決するプロジェクト)の2つ。

創業体験プログラムが教員としての私を形作った

創業体験プログラムについては,NTVPの村口和孝さんとの出会いがなければ始まらなかった。今から10年くらい前,まだ教員になったばかりで前々任校か前任校に勤めていた頃,京都大学が主催した女性の学び直しをテーマに行ったプログラムで講師をしたことで出会った。話を聞いてすぐにやりたいと思った。時が経って,現在の大学に着任すると同時に始めてみようと思ったのが今の創業体験プログラムである。

最初の頃は自分も不安で,ずっと学生に介入し続けていた記憶しかない。怒鳴り散らし,問い詰めてしまうだけ。今思えば学生には申し訳ない。

栄えある第1回創業体験プログラムのふりかえりの様子。このときはただ怒ってるだけ。ここでの反省が2年目,3年目のふりかえり,ゼミでの日常的なふりかえりに生かされるようになる。

いろいろと失敗と成功を繰り返しながら,今の教育スタイル=基本的に何も言わない,ポイントだけアラートするにたどり着いた。それでも学生からすればまだまだうるさい教員だろう。もう少し黙らないといけない。ああだこうだ言うのは自分が不安だから。自分で何もできない不安を学生にぶつけているだけなのかもしれない。

それでも,このプログラムを通じて学生が成長していることは手に取るようにわかる。理念と会計上の予算目標を設定し,それをいかにして実現するか。常に自問自答,他者とのコミュニケーションが行われていく中で,自分だけではどうにもできない事象が出てくる。課題を解決することを通じて成長していく。自分が何のためにやっているのか,そこから何を学ぶことができたのかをふりかえることを通じて成長していく。

社会課題を解決するプロジェクトは偶然始まった

もう1つの「社会課題を解決するプロジェクト」は偶然始まった。1-2期は企業とのコラボレーションで,企業の課題解決を図ることをテーマとして行ってみたものの,私のファシリテーション能力の欠如もあってうまくいかなった。

そこで3期には企業とのコラボレーションではなくて,自分たちがやりたいことをやっていいよと提案した。実は2期の中に「企業とのコラボレーションでやりたいことはない」という学生がいたので,自分でプロジェクトを立ち上げたいといって良いプロジェクトを立ち上げた学生がいたことがキッカケになっている。

そのプロジェクトは,福津市津屋崎で社会人の話を聞きながら藍染めをして自分の人生を自分色に染めていくことをテーマにしたイベント開催をするものだった。これに私も参加したのだが,実に良いものになった。これが決定打だった。それまで企業と何かすること,目立つことをすることを良しとしていたところを学生が打ち破ってくれたのだ。

2015年2月,ゼミ2期生が津屋崎の藍の家で行ったイベントSMILE STATIONやってることは今とほとんど変わっていない。

それから4年が経過。できたもの,できなかったものはあれども,1年間という時間をかけて取り組んできたことから学べることは実に多いようだ。形にすることばかり=成功することばかりを求めていた私も,できなった原因をちゃんとふりかえって報告してくれればOKだよと言えるようになった。大事なことはできることではなく,できたにしてもできないにしてもその要因をしっかりと分析し,次に活かすことができるようになること。

失敗を許容できるようになった。これが大きかった。

学生のプロジェクトも研究と同じ。何かプロジェクトをするにも,研究するにもトライ・アンド・エラーが重要だということだ。

自分自身のアップデートが必要

ここまで述べてきたように,実はPBLをゼミに取り入れたことで学生が成長したのはもちろんなのだが,自分自身を作り変えることができたというのも大きなことだった。年々,先輩たちを超えていこうと現役ゼミ生が努力する。成果を出す。いや,先輩たちもベンチマークだけれども,自分たちはいかにするかを彼らが考えているのだろう。誰でもない自分たちの期はこうなんだというのが強く現れている。

そうやって成長していく学生を見て,私も危機感を持っている。行為=ゼミの活動内容は変わらなくても,学生に向けて言うこと,使用する教材やアプローチは少しずつ変えている。どこからなにか特別な教育手法を学ぶのではないが,目の前にいる学生に合うような指導方法を考えていきながら,彼・彼女たちのパフォーマンスがより良くなる方法を考えている。まさに,彼らを教育するという立場にいながら,私がアップデートしなければならない環境にある。

今回はここまで。仔細書くと論文ほどになってしまう。今思えば,3-4年前までは常々学び,教育の仕組みをどう作るかばかりを考えていた。それに比べれば今は落ち着きすぎて,当時考えていたことを忘れてしまいそうになる。これは危険だ。

学生のおかげで自分も成長できている実感がある。本当にありがたい。
人生,常にアップデートが必要である。

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